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重症筋無力症は完治するのでしょうか
(抗アセチルコリン受容体抗体陽性の重症筋無力症について)

抗アセチルコリン受容体抗体が体から全く消えてしまうのを完治とするなら、この疑問に関してはほとんどの場合は答えは残念ながらNOです。しかし社会生活がおくれるように症状をコントロールすることはほとんどの患者さんの場合可能です。

重症筋無力症の場合は絶対直してやる、と意気込みすぎるのはよくありません。しかし、治らないのだ、と悲観するのはもっとよくないことです。ある程度活動できればそれで満足し、外に向かって出て行って可能なら社会活動をしてください。こもらないで、明るく病気と付き合うことが大事です。

重症筋無力症の患者さんの中にはステロイドをたくさん使ってでも、症状が全くない状態を望む方があります。お気持ちは分かるのですが、これはすこし危険を伴っています。

たとえばプレドニンを10錠飲んで症状が全くないとします。しかしこの状態だと症状をコントロールするのに必要なプレドニンの最低量より多く飲んでいる可能性があります。それは薬を減らしてみて、症状がでるとか、抗アセチルコリン受容体抗体が上昇するかどうかで分かるわけです。症状は変遷するので、いま10錠必要でも、半年後には6錠で十分かもしれません。必要最低限のプレドニンを投与するためには、常に薬を増やしたり減らしたりしなくてはなりません。それが難しい場合は必要以上の薬を飲むことになり、その副作用で苦しむ場合が出てきます。

私のおすすめは、ほんのちょっと症状がある、状態でコントロールすることです。症状が強くなれば薬を増量し、軽くなれば減量します。抗アセチルコリン受容体抗体の値も参考にします。すこしの症状を許容していただければ、薬の量は必要最小限ですみます。長期的にはそれが患者さんのためになると思います。

重症筋無力症ではステロイドや胸腺摘出術などの治療の結果抗アセチルコリン受容体抗体が陰性になる方は
実はたいへんまれで、5%以下です(それらの方も抗アセチルコリン受容体抗体が低い(一桁)の方です)。多くのかたは胸腺摘出術などの治療後10年以上たっても抗アセチルコリン受容体抗体陽性です(値は治療前より低下していることが多いです)。これはわれわれが一生はしかに対する抗体をもっているのと同様のメカニズムでなぜか抗アセチルコリン受容体抗体を体はずっと産生しつづけているのです。その理由はよくわかっていません。

以上のように抗アセチルコリン受容体抗体でみる限り重症筋無力症は完治することは難しく、抗アセチルコリン受容体抗体ゼロは目標にせず最低限の薬で日常生活、社会生活を営めることを目標にして病気をコントロールし、付き合っていきましょう。

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