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胸腺摘出術の術前ステロイド投与について

胸腺摘出術のまえに大量(20錠程度)のステロイドを投与してから手術する施設があります。これらの施設の多くでは、手術にはステロイドが必要だと説明されており術前ステロイドを投与しなくても胸腺摘出術が可能であることが患者さんに説明されていません。

ステロイドは免疫を抑制する以外にも多くの作用があり、したがって副作用も多種多様です。特に大量を長期使用した場合は、骨がもろくなる、白内障などもとにもどらない副作用があり可能なら使用しないでおきたい薬のひとつです。20錠も飲みますと、顔がむくむなどの副作用は必ずおき、またほとんどの方には胃潰瘍の薬、骨がもろくなるのを防ぐためにビタミンDなどが投与されていま。 このような大量のステロイドをいったん飲むと、これを止めるまでには普通でも2年ぐらいかかります。その理由は、ステロイドは正常でも副腎皮質でつくられるホルモンでこれを外部から多量に投与すると自分の副腎皮質が休んでしまい急に外からのステロイドを止めると副腎皮質の機能が追いつかず、様々な症状がでるためにゆっくりしか減量できないからです。また減らすことにより、重症筋無力症の症状が悪化してまたもとの投与量にもどることもよくあります。

このような大量のステロイドは、胸腺摘出術前後の管理を楽にするために投与されます。しかし実際は、症状の軽い人は術前後に人工呼吸などの管理を必要とすることはなく重症の人でもかなりの人はステロイドを投与しなくても無事に胸腺摘出術をのりきることができます。したがってほとんどの重症筋無力症患者さんでは胸腺摘出術を無事のりきるためだけにステロイドを飲む必要はありません。我々の施設では胸腺摘出術術前にステロイドはなるべく投与しない方針です。これで多くの患者さんが何事もなく退院していかれます。

少なくともステロイドを服用しなくても胸腺摘出術が可能であるこを知って欲しい思います。

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