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重症筋無力症の治療に用いられる薬について

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1.抗コリンエステラーゼ剤

投与量  一日 半錠 から 3錠

神経から筋肉へ刺激を伝えるアセチルコリンは体内でコリンエステラーゼによって大変速く分解されますが、これらの薬はこの酵素を阻害することにより、筋肉でのアセチルコリンの濃度を高め、筋肉が収縮しやすくすると考えられます。言わば、冬の寒い日に、チョークをひいて濃いガソリンを供給し、エンジンが動きやすくするのと似ています。

主な副作用

量が多すぎると、筋肉が次の刺激を受け入れなくなり、筋脱力が強くなることがあります。したがって、かってに量を増やしたら危険なことがあります。一日に3錠以上必要な時は医者に相談すべきです。副作用をおさえるため硫酸アトロピン(副交感神経遮断剤)をいっしょに投与することがあります。この硫酸アトロピンは緑内障の人には使えません。

2.ステロイド剤(副腎皮質ホルモン)

副腎皮質ホルモンは我々が正常でも分泌しているホルモンで様々な作用をもっていますが、筋無力症に使われる場合は、免疫抑制作用、一時的筋力増強作用などを目的につかわれます。

主な副作用

このように、ステロイドには、いろいろな副作用がありますが、特に大量を長期飲まないかぎり、がまんできる範囲のものも多いです。しかし大量(隔日5錠以上)に長期間のめばある程度の副作用は必ず起きるものと思わねばなりません。

一日おきに投与しているのは、副腎皮質機能不全を防止するためです。(休んでいる日に、本来の副腎皮質が働く)特に多量服用している場合は、急に切ると副腎機能不全となりやすく、中止までに数ヶ月から数年かかることがあります。100mgまで増量されると切るのに平均2年ぐらいかかるようです。全ての重症筋無力症患者さんにステロイドの大量投与をするのは副作用の点から賛成できません。本当に大量のステロイドが必要な人(重症筋無力症の10%以下です)に限るべきでしょう。

3.ステロイドパルス療法

これを二回以上くりかえすこともあります。

大量のステロイドの急速な投与により強力な免疫抑制作用と、早期の筋力改善がほぼ全例に得られます。抗アセチルコリン受容体抗体も低下することが多いです。点滴の三日目から四日目にかけて一時的な筋力の低下があり、このため全身症状の強い人に行う場合は、入院が必要です。呼吸困難がある人は、人工呼吸が必要になることもあります。

ステロイドの副作用はほとんど認められませんが投与中は不眠になる方が多いです。またプログラフやネオーラルなどの免疫抑制剤を投与中の患者さんにステロイドパルスを行う場合は感染症に注意をしてバクタを含む抗生剤を併用する方が安全です。まれな副作用とし経口摂取不良で脱水のある患者さんにステロイドパルスを行い高血糖による抗浸透圧性の意識障害が出現したことがあります(タクロリムス投与中の方でした)。

一般にステロイドパルスは全身症状や球症状が強く日常生活に支障のあるひとに行います。

4. 免疫抑制剤

あまり多くの患者さんには使いませんが、上記の薬でコントロールが難しく一年に2回以上のパルス療法が必要な患者さんには試してみる価値があります。しかし、副作用に注意をする必要があります。

主としてT細胞のIL-2産生を抑えることにより免疫を抑制します。腎毒性があり、定期的に血中濃度を測定し、腎機能の検査をする必要があります。免疫を抑制するので感染に弱くなります。その他に多毛(サイクロスポリン)、高血圧、高血糖、肝機能障害、皮膚の発疹、手指の震え、下痢(タクロリムス)などがあります。子供を産む可能性のある女性には投与できません。男性では作用機序からすると、生まれる子供に対する影響は少ないと思われますが、データがありません

昔から使われている免疫抑制剤ですが、サイクロスポリンの投与量をへらすため、同時投与することがあります。白血球減少、肝機能障害、食欲低下などの副作用があります。増殖細胞に影響を与えるため、卵子、精子とも影響が考えられ妊婦には投与せず、男女とも避妊するのがよいと思われます。ブレディニンも同様の作用です。

3剤併用療法

の3つの薬を少量同時に投与しそれぞれの効果を期待し、かつ副作用をなるべく少なくするために行っています。

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