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かなり重症の重症筋無力症の家族の方へ
 ―いざというときの準備と心構え―

重症筋無力症は気をつけていれば死なない病気です。重症筋無力症は最重症で呼吸困難がある患者さんでも、肺や心臓などの重要臓器が悪いわけではなく、また筋肉の変化も可逆性(抗体がなくなればもとにもどる)なので、重症筋無力症があるということで死ぬことはありません。ただ、息が止まったまま3分もほっておくと大変重症になり、なくなられる方もでることになります。そこで、重症の呼吸困難が時々あるような人は注意して観察し、本当に息が止まっているときはあわてないで、呼吸を補助することにより死に至るような事故を防げます。基本的に、医者がみていればなくなることはないといえます。また、はやめ、はやめの受診をおすすめします。

どんなときがあぶないか

こんなときは注意しなくてはなりません。できればこの段階で急いでかかりつけの医師のところへいってください。このような状態のときは原則として入院するほうが安全です。このような状態の患者さんを一人にしてはいけません。次のようなときは呼吸が止まっています。直ちに人工呼吸をし、救急車を呼んで下さい。

救急車に連絡がついても人工呼吸をやめてはいけません。救急車の人に引き継ぐまで続けて下さい。見ている前でこのようになった場合は、心臓はとまっていないので心臓マッサージの必要はありません。呼吸さえちゃんとさせてやれば心臓は大丈夫です。気がついたら上のような状態で倒れていたという場合は多くは心臓もとまっている状態に近いと思いますが、まず人工呼吸をして下さい。あとは救急隊にまかせましょう。虫の息でも、呼吸をしてさえいれば病院にいくまではもつことが多いです。耳を患者さんのはなに近づけるか、糸くずをはなの穴にかざすと、呼吸していればわかります。人工呼吸をおぼえて下さい。自宅で重症筋無力症の患者さんがなくなるのは、たんなどがのどや気管支につまって、呼吸ができなくなる場合がほとんどです。このようなときに人工呼吸ができれば、救急車が来るまでの間、患者さんを生かしておくことができます。そのために人工呼吸の方法をおぼえてください。

口移し人工呼吸(この方法にかぎります)

うまくいかないとき

吹き込むのに抵抗があって、口のまわりから空気がもれるようだと、うまくいっていません。あごをもう少しもちあげてみてください。えんりょせずもうすこし口を密着させてください。一回でうまく吹き込めるときのほうが少ないと思います。あごの位置や口のあて方を調節して一番空気が楽にはいる体勢を作ります。多少空気がもれても、吹き込んだときに患者さんの胸がもちあがっていれば、空気は一部入っています。そのままがんばってください。ほんのわずかずつでも空気が入っていると生存できます。患者さんの胸がもちあがらず、空気もはきだされてこないときは、空気が十分ふきこまれていません。もう少し強く吹き込んでみてください。のどに、食事の残りとか、つば、たんなどがたまっていると、人工呼吸がうまくいきません。これらをティッシュなどで取り除いて下さい。大量にあるときは掃除機にすきま掃除の管をつけてやるとうまくいくかもしれません。自治体などで人工呼吸法の講習があるようなら受けておくと役立ちます。消防署などでも講習をうけられることがあります。

救急隊が来たら、重症筋無力症であることを告げ、呼吸が止まったので人工呼吸が必要な旨を伝えます。かかりつけの病院に連れていってもらいますが、遠い場合は近くの救急病院でもいいです。 落ち着いてから転院を考えましょう。 基本的には重症筋無力症の経験のある病院でないと治療は困難です。

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