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2011年7月例会
・教育講演
「モダンゲノミクスの成果と展望−如何に使いこなすか?-」

・緊急特別講演
「東日本大震災の経験-震災後の対応と被災状況」

・トピックス
「動物実験を取り巻く最近の情勢」

・企業・製品紹介

・一般講演
1. スンクスの脳におけるGnRH2ニューロンの局在

2. マウス副腎重量とX層の形態

3. ICRマウスの特徴を有するヘアレスマウスに関する基礎的研究

4. 動物実験における動物の安楽死について −生命尊厳のための最後の動物福祉−

5. 化学発癌モデルで解ること解らないこと・遺伝子改変発癌モデルで解ること解らないこと

6. セラミド細胞内選別輸送タンパク質 (Ceramide transfer protein; CERT)はマウス個体発生に必須である

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5. 化学発癌モデルで解ること解らないこと・遺伝子改変発癌モデルで解ること解らないこと
 

○齋藤 浩充、鈴木 昇 (三重大学 生命科学研究支援センター 動物機能ゲノミクス)

(背景)がんは、特定の遺伝子の異常によっておこり、ヒト肺癌においても35%で癌遺伝子K-ras遺伝子に恒常的活性化型変異が検出される。肺がんのモデル動物としては、ウレタンなどの発癌剤投与による化学発癌モデルは、腺癌を発症するモデルがあり、ヒト同様に高頻度にK-ras遺伝子の活性化型変異が見出されることが報告されている。我々は、発癌物質投与から、変異の導入までの過程をスキップするため、Cre/loxPシステムを用いて任意の時期、細胞で癌型のK-rasを発現誘導できるマウス(flox-Kras-KIマウス)を作成した。肺の気管支上皮特異的に癌型K-ras遺伝子を発現させると、肺胞上皮2型の腺癌を発症し、発癌物質無しに癌型K-ras変異から腫瘍が出現するまでの肺癌発症過程を再現する遺伝子改変肺がんモデルを確立した。
(目的)化学発癌物質の投与では、A/Jマウスは、C57BL/6J (B6)マウスの20倍以上の感度で発癌する感受性をもつ。この2系統間の発癌特性を、我々の作成した遺伝子改変肺がんモデルで検討する。
(方法)A/J系統、およびB6系統のflox-Kras-KIマウスを樹立した。化学発癌系と遺伝子組み換え系の肺発癌実験を行い、発症した腫瘍の数を比較し、2系統間の感受性を比較検討した。
(結果)A/J:flox-Kras-KIマウス、B6:flox-Kras-KIマウスへのウレタン投与を行い、化学発癌感受性を確認した。これまでの報告と一致して、A/J系統(26.6個±3.5個)がB6系統(0.75個±0.5個)より有意に高い感受性を示した(P<0.01)。癌型K-ras発現では、B6系統(142個±59.5個)がA/J系統(11.4個±14.8個)より高感受性であった。癌型K-ras発現誘導にアデノウイルスベクターを用いていることから、感染量の差が疑われたため、感染後の肺からDNAを精製しPCR法により感染量を検討したが、差は検出されなかった。今後、遺伝子改変モデルにおける発癌感受性関連遺伝子を同定することで、化学発癌で得られた結果を補完する重要な知見を得られると考えている。

 

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