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2011年7月例会
・教育講演
「モダンゲノミクスの成果と展望−如何に使いこなすか?-」

・緊急特別講演
「東日本大震災の経験-震災後の対応と被災状況」

・トピックス
「動物実験を取り巻く最近の情勢」

・企業・製品紹介

・一般講演
1. スンクスの脳におけるGnRH2ニューロンの局在

2. マウス副腎重量とX層の形態

3. ICRマウスの特徴を有するヘアレスマウスに関する基礎的研究

4. 動物実験における動物の安楽死について −生命尊厳のための最後の動物福祉−

5. 化学発癌モデルで解ること解らないこと・遺伝子改変発癌モデルで解ること解らないこと

6. セラミド細胞内選別輸送タンパク質 (Ceramide transfer protein; CERT)はマウス個体発生に必須である

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1. スンクスの脳におけるGnRH2ニューロンの局在
 

○猪飼耕太郎、大森保成、本道栄一、井上直子
(名古屋大学大学院生命農学研究科動物形態情報学研究分野 )

【目的】
 性腺刺激ホルモン放出ホルモン(GnRH)は、10個のアミノ酸からなる神経ペプチドである。脊椎動物におけるGnRHは、アミノ酸配列や脳内におけるニューロンの分布、生理機能の違いから、GnRH1、GnRH2、GnRH3の3つのタイプに分けられており、哺乳類では、GnRH1およびGnRH2が確認されている。ほとんどの哺乳動物が有しているGnRH1は、下垂体からの性腺刺激ホルモンの分泌を調節して生殖制御の中枢として働くことが明らかにされているが、GnRH2はヒトを含む一部の哺乳動物においてのみ存在が確認されているだけで、詳細な生理機能は未だ明らかにされていない。スンクスはGnRH1およびGnRH2の両方を有する数少ない実験動物である。本研究は、哺乳類におけるGnRH2の生理機能を明らかにすることを目的とし、その第一段階としてスンクスの脳におけるGnRH2ニューロンの分布を、免疫組織化学的手法により解析した。
【材料および方法】
 KAT系統のintact雄(n=2)および雌スンクス(n=1)を灌流固定した後、脳を採取し、厚さ25 μmの冠状断面で凍結切片を作製した。抗GnRH2抗体を用いてABC法により免疫組織化学を行った。
【結果および考察】
 免疫組織化学の結果、GnRH2免疫反応陽性細胞体および陽性神経線維の分布は,雌雄の脳において差は認められなかった。GnRH2免疫反応陽性細胞体は、中脳水道周囲灰白質の腹側部でのみ認められた。GnRH2免疫反応陽性線維の分布は広域にわたり、大脳の一部、間脳、中脳、橋、延髄において散在的に観察された。手綱核、正中隆起、前庭神経内側核および蝸牛神経核においては、GnRH2免疫反応陽性線維が特に豊富であった。
 これまでにスンクスの脳の一部の領域においてGnRH2の局在を調査した報告があるが、本研究の結果新たに、正中隆起、漏斗柄、前庭神経内側核、蝸牛神経核におけるGnRH2免疫反応陽性線維の局在が確認された。これらの結果より、正中隆起や漏斗柄に投射しているGnRH2ニューロンは、GnRH2を下垂体門脈へ分泌している、もしくはGnRH2ニューロンが直接下垂体神経葉に投射している可能性が考えられた。また、前庭神経内側核、蝸牛神経核は平衡感覚や聴覚に関与する領域であることから、スンクスにおいてGnRH2がこれらの機能制御を行っている可能性が考えられた。

 

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