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2011年7月例会
・教育講演
「モダンゲノミクスの成果と展望−如何に使いこなすか?-」

・緊急特別講演
「東日本大震災の経験-震災後の対応と被災状況」

・トピックス
「動物実験を取り巻く最近の情勢」

・企業・製品紹介

・一般講演
1. スンクスの脳におけるGnRH2ニューロンの局在

2. マウス副腎重量とX層の形態

3. ICRマウスの特徴を有するヘアレスマウスに関する基礎的研究

4. 動物実験における動物の安楽死について −生命尊厳のための最後の動物福祉−

5. 化学発癌モデルで解ること解らないこと・遺伝子改変発癌モデルで解ること解らないこと

6. セラミド細胞内選別輸送タンパク質 (Ceramide transfer protein; CERT)はマウス個体発生に必須である

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4. 動物実験における動物の安楽死について −生命尊厳のための最後の動物福祉−
 

羽根田 千江美(藤田保健衛生大学 疾患モデル教育研究センター)

 近年、研究に使用される実験動物の福祉に対する社会的関心が高まってきている。「動物の愛護及び管理に関する法律」においては、第2条で、『動物が命あるものであることにかんがみ、何人も、動物をみだりに殺し、傷つけ、又は苦しめることのないようにするのみでなく、人と動物の共生に配慮しつつ、その習性を考慮して適正に取り扱うようにしなければならない』と定めている。すなわち、動物実験において動物の利用が人間社会への正当な行為と認められるとしても、動物の命についてもその尊厳を守ることが基本であるとしている。
 すべての動物実験は、実験に供される動物の「死」を持って終了とすることが避けられない。ゆえに処分の実施には、動物の生理、生態、習性等を理解し、生命の尊厳性を尊重し、かつ動物の苦痛とその軽減について十分な知識、技術、経験をもつ者があたらなければならない。
 近代科学および医学の進歩は、動物実験から生まれたと言っても過言ではない。また、人類および動物の健康と福祉の増進のためには動物実験は不可欠である。そのためにも、実験動物が命あるものということをかんがみ、1)動物を用いないですむ方法がないか検討すること(Replacement)、2)実験に使用する動物の数をできるだけ少なくすること(Reduction)、3)実験動物が被る苦痛をできるだけ軽減すること(Refinement)が求められている。この“3つのR”は、実験動物福祉の基本的な考え方として、動物実験においてこれを実現するためにさまざまな配慮を行い、方策を立てなければならない。
 我々は、動物実験を的確に、かつ支障なく実施するために、社会が広く動物実験のもつ意義と実施状況を認識、理解し、動物実験に関する社会的合意が形成されることが必要であることを念頭におき、人の受ける利益と実験動物の被る不利益を十分考慮し、犠牲になる動物への最大の敬意を払うことを忘れてはならない。そして、その延長にある「安楽死」を、実験動物のみならず人と関わるすべての動物について考えていかなければいけない命題としなければならない。
 人は動物に対し、動物福祉を実践するとともに、生命尊厳のため最後の動物福祉としての安楽死を選択する必要がある。

 

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