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2009年9月例会
一般講演

1. DXA法による実験動物の大腿骨測定

2. ラット胸腺過形成、胸腺腫、腎欠損および腎水腫の診断における画像解析の有用性

3. 動物実験施設への動物搬入に伴う検疫時におきたStaphylococcus xylosusによる病変

4. Survival of Common Marmoset (Callithrix jacchus jacchus)

5. 老化促進モデルマウスSAMP1系統における被毛と皮膚の加齢変化

6. 遺伝子改変技術を用いて作成した新たな癌悪液質モデルマウスの解析

7. セラミド細胞内選別輸送タンパク質 (Ceramide transfer protein; CERT)欠損マウスの作製


6. 遺伝子改変技術を用いて作成した新たな癌悪液質モデルマウスの解析
 

齋藤 浩充、鈴木 昇(三重大学 生命科学研究支援センター 動物機能ゲノミクス)

背景:悪疫質(cachexia、カヘキシー)は、癌や慢性疾患の経過中に起こる主として栄養失調に基づく病的な全身の衰弱状態である。カヘキシーの改善は、患者のQOL向上と延命に重要であり、そのためには、原因因子の解明と、治療薬開発につながるよい動物モデルが必要不可欠である。これまで報告されているカヘキシーモデルマウスは、ヒトおよびマウスから得た自然発症または化学発癌腫瘍の移植モデルであり、腫瘍の原因遺伝子が不明である。本研究では、遺伝子改変により得られたp53遺伝子欠失、癌型K-ras遺伝子発現を原因とする横紋筋肉腫瘍による新たなカヘキシーモデルを作成し、その病態を解析した。

方法と結果:Cre/LoxPシステムを応用して、任意の時期と臓器に癌型K-Ras遺伝子を強制発現できるマウスを作製し、大腿骨格筋に癌型K-ras遺伝子発現を誘導すると、p53+/-とp53-/-の遺伝背景においてのみ、遺伝子型が癌型K-ras遺伝子発現・p53-/-の多形型横紋筋肉腫(RMS)が発生する。RMSに罹患した動物は、約2週間で全例死亡するが、体重減少をともなう悪疫質が主たる原因であると推察された。
そこで、摘出した活性型K-ras遺伝子発現・p53-/-RMS腫瘍塊を材料として、造腫瘍能(+)カヘキシー発症能(+)腫瘍株#3396株、造腫瘍能(+)カヘキシー発症能(-)腫瘍株#6091-3株を樹立し、2つの株を正常動物に移植し腫瘍を造らせ、より詳細な病態解析を行った。経時的な、体重、摂食量、飲水量測定、X線CTによる体脂肪率測定の結果、#3396株移植マウスでは摂食量の低下にともなって体重および体脂肪の減少が生じることが明らかとなり食欲不振症(Anorexia)が主要な病態であることが示された。
また、#3396株移植マウスの全例で悪液質を発症する移植後2週において、#3396株、#6091-3株移植マウスの血清カルシウム濃度はそれぞれ正常の3.0倍、1.3倍であり、ヒト悪性腫瘍患者に高頻度(20-30%)で随伴する高カルシウム血症を発症していた。RTPCRによる解析から#3396株、#6091-3株はともに、破骨細胞活性化因子である副甲状腺ホルモン関連蛋白(PTHrP)を発現しており、骨吸収の亢進が予想された。そこで、X線CTを用いて大腿骨の構造解析を行った結果、腫瘍移植マウスでは骨粗鬆化が生じており、その程度は血清カルシウム濃度と一致して#3396株でより顕著であった。

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