羽根田 千江美1、鈴木 昇一2、井田 義宏3、長尾 静子1、松山 睦司4
(1藤田保健衛生大学・疾患モデル教育研究センター、2藤田保健衛生大学・放射線学科、3藤田保健衛生大学病院・放射線部、4藤田保健衛生大学・医学部・ウイルス寄生虫学)
【緒言】藤田保健衛生大学疾患モデル教育研究センター内で維持されている胸腺腫モデルBUF/Mna系ラットは、1964年に長与博士が大腸癌移植モデルを樹立するため導入されたBuffalo系に由来し、松山が1977年、胸腺腫および筋易疲労性を自然発生させる系統として樹立し、BUF/Mnaと命名し現在に至ったものである。BUF/Mna系ラットは、他系ラットに比し、幼弱時から生理的に胸腺が著しく大きく、胸腺腫の初期発生像を把握することが困難であったため、胸腺腫嫌発のACIラットとのF1交雑ラットを作り、BUF/Mna系ラットの遺伝子量を半減させ、長期飼育したところ、胸腺腫の初期形態を捉えることができた。なお、ACI および胸腺腫感受性遺伝子領域を導入したACI-Tsr1/Tsr1ラットには、片腎欠損ならび腎水腫を発症する個体が出現することで知られている。今回我々はこれらの系統のラットを用い、BUF/Mna系ラットは軟X線装置およびCTにて撮影し、加齢に伴う胸腺の経時的変化を追うことで、軟X線撮影等が胸腺腫の形態把握に有用であることを確認した。 また、ACIおよびACI-Tsr1/Tsr1系ラットでは、生存のまま腎臓欠損や腎水腫を確認することで、軟X線撮影等が新たな疾患モデル作成の方法にならないかを検討した。
【方法】本センターで繁殖されたBUF/Mna系ラット、ACI およびACI-Tsr1/Tsr1系ラットを用い、8週齢前後ならび1年齢の老齢個体を用いて軟X線装置ならびにCT撮影を実施した。若齢のラットの胸部単純撮影においては、通常の方法では十分に胸腺が読み取れなかったため、胸部を中心に拡大撮影を行った。老齢ラットについては拡大撮影ではなく通常単純撮影を行った。CT撮影では胸腔〜腹腔にスポットを当ててスキャンした。数例は撮影後剖検し、画像で得られた情報との対比を行った。
【結果】胸腺はもともと軟組織であるためX線画像での確認は容易ではない上、若齢動物ではほとんどの個体で胸腺が十分な大きさに達していないため、軟X線撮影でははっきりとした形として確認することはできなかった。また、CT撮影も同様に、著明な像としては確認できなかった。しかし一部若齢でも胸腺が著しく大型の個体では不明瞭ながら胸腺の形態が確認できた。老齢個体において十分胸腺が腫大しているものは胸腺サイズを推測することができた。腎臓については、軟X線撮影・CT撮影において欠損、水腫を容易に確認することができた。このことより、軟X線撮影等は、胸腺腫ラットの胸線形態の把握や腎臓の異常を診断する方法として有用であることが示された。また、これによって検定交配や選抜交配の足がかりになることが実証できた。
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