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2009年9月例会
一般講演

1. DXA法による実験動物の大腿骨測定

2. ラット胸腺過形成、胸腺腫、腎欠損および腎水腫の診断における画像解析の有用性

3. 動物実験施設への動物搬入に伴う検疫時におきたStaphylococcus xylosusによる病変

4. Survival of Common Marmoset (Callithrix jacchus jacchus)

5. 老化促進モデルマウスSAMP1系統における被毛と皮膚の加齢変化

6. 遺伝子改変技術を用いて作成した新たな癌悪液質モデルマウスの解析

7. セラミド細胞内選別輸送タンパク質 (Ceramide transfer protein; CERT)欠損マウスの作製


3. 動物実験施設への動物搬入に伴う検疫時におきたStaphylococcus xylosusによる病変
 

藤森美香子、大山貴之、平田暁大、二上英樹(岐阜大学生命科学総合研究支援センター動物実験分野)

他施設から当施設に搬入されたマウスの検疫期間中に、マウスの下腹部に激しい糜爛を確認した。治療を行いながら原因究明を行ったのでその経緯を報告する。

(経緯)他施設より♂2匹,♀5匹のC57BL/6系の遺伝子改変動物を搬入。事前の確認では搬出元の定期検疫証では注目する汚染等はなし。異変に気づいたのは搬入後13日目。後肢の変形と跛行を確認した。持ち上げてみると下腹部が大きく糜爛。症状の程度の違いはあるが同時に搬入したマウスも次々と発症した。原因病原体の確認のため検査機関に送るマウスは治療しなかったが2日後に死亡した。治療したマウスはすべて回復した。これらの症状からなんらかの感染症を疑ったが症状等が完全に一致する疾患が見当たらず、病名ならびに原因微生物の診断を決めかねた。

(対応)ただちに検疫室の入退室の制限、隔離を行った。該当動物を検査機関へ発送し検査を依頼。検査機関からの報告では一般的なSPF動物のための検査項目についてはすべて陰性であった。しかしながら外陰部周囲の拭い培養検査でStaphylococcus xylosusが分離された。また同時に依頼した病理組織検査では一部に化膿性筋炎を伴った外陰部周囲のフレグモーネがおきていた。

(治療)ヨードチンキ(10%希釈)を3〜4日おきに患部に塗布した。3回目ぐらいから快方にむかい3週間後にはほぼ完治した。この事から糜爛は細菌感染が疑われた。しかし雄は外陰部が変形し生殖機能を失った。最終的に系統維持、クリーンナップの観点から無菌的に精子を採取、体外受精を実施した。

(考察)Staphylococcus xylosusはブドウ球菌のメンバーである。このブドウ球菌属には有名なStaphylococcus aureusStaphylococcus epidermidisなど病原性のあるものが含まれているがStaphylococcus xylosusは「常在菌」であり通常病原性はないとされている。人間と動物の皮膚に存在し、ヒトでは日和見感染的に尿路系の感染症をおこすことが報告されている。しかしながら今回無視できない程の症状を示した。原因は不明だが輸送時などのストレスにより日和見感染がおこり発症したのではないかと考えられる。常在菌といえども時に今回のような問題をおこすことがあるので注意が必要であると考えられる。

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