研究内容
乳腺外科学分野では、乳がんの基礎的研究を臨床に生かすことを目指したトランスレーショナルリサーチを行っています。医学の進歩に貢献する可能性に加えて、基礎的研究に触れて疾患の本質を見極める目を養うことにより、臨床においてはより質の高い診療に繋がると考えています。
- 乳癌のエストロゲンレセプター(ER)と内分泌療法に関する研究
- Triple-negative 乳癌の生物学的特徴と治療法に関する研究
Ⅰ. 名古屋市立大学大学院医学研究科 ヒト遺伝子解析研究倫理審査委員会において、当科から申請された以下の研究課題が承認され実施されています。
【課題1】乳癌における治療効果予測因子および予後予測因子の探索に関する研究(受付番号:第166号)
【課題2】乳癌におけるタキサン作用機序の解明に関する研究(受付番号:第172号)
【課題3】乳癌における生物学的特性と宿主の要因に基づいた適切な治療法の開発に関する研究(受付番号:第198号)
【課題4】乳がんにおけるタキサン作用機序の解明に関する研究(管理番号:第70-00-0172号)
- 「乳がんにおけるタキサン作用機序の解明に関する研究」の情報公開文書
- 「遺伝子発現プロファイルおよび遺伝子多型解析による乳癌患者の治療効果予測および予後予測にかんする研究」に同意をいただいて保存されている乳がん組織検体を用いて、「乳がんにおけるタキサン作用機序の解明に関する研究」を検討することについての情報公開文書
- 研究責任者:遠山竜也(名古屋市立大学大学院 医学研究科 乳腺外科学分野 教授)
- 遺伝子解析の結果:原則開示しません。
- 研究計画書及び研究の方法に関する資料は入手又は閲覧できます。また、試料・情報の利用を拒否することができます。
1.乳癌のエストロゲンレセプター (ER) と内分泌療法に関する研究
30年以上前から続けられている主要研究テーマです。最近行っている研究を紹介します。
1) エストロゲンレセプター(ER) 陽性乳癌患者に高頻度に見られる遺伝子多型の解析
ER陽性乳癌の発生に関与する遺伝子多型を解析することにより、ER陽性乳癌の高危険群を選別し内分泌療法による予防が可能になると考えています。
2) 乳癌組織におけるERαの発現調節に関する検討
乳癌組織のERαの発現レベルは内分泌療法の奏功性と予後に関与しています。私達はmicroRNAのひとつmiR-206がERαの発現調節に関与し、ERαを標的とする内分泌療法剤の候補であることを見出しました。
3) 乳癌組織のERαのセリンのリン酸化についての解析
ER陽性乳癌のエストロゲン依存性にはERαと増殖因子群のシグナルのクロストークによるERαのリン酸化が関与しています。私達はERαセリン118、セリン167のリン酸化がそれぞれ内分泌療法の奏功性と予後に関与し、ER陽性乳癌の治療選択の指標となる可能性を見出しました。
2.Triple-negative 乳癌の生物学的特徴と治療法に関する研究
ER・PgR・HER2陰性のいわゆるTriple-negative乳癌は治療手段が限られ、予後不良とされています。私達はEGFR遺伝子コピー数の増加がTriple-negative乳癌で高頻度に認められるものの、EGFR遺伝子変異は観察されないことなどを報告しました。