Research

教室員が専門とする研究領域

現在の教室員の研究は、大きく以下の領域に分類されます。

化学物質のリスク評価

■化学物質による健康リスクの解明

農薬は、食品中などに基準値以下の一定量が残留しうる前提で使用される環境化学物質であり、薬効・薬害に加え、毒性、環境への影響、農作物への残留性等の試験・審査を経て登録・使用されている。ヒトがふだんの生活を通してどれだけ摂取・曝露し、健康へのリスクがどの程度であるかに関し、尿中の代謝物(分解物)を測定すると個人レベルで定量的なデータが得られるが、そのような試みは少ない。したがって、一般生活環境ならびに殺虫剤散布職域環境を対象に調査研究を行っている。これまでは主に一般成人を対象に研究を行ってきたが、今後は、妊娠期や小児期も対象に研究を実施する。並行して、実験研究により殺虫剤およびその代謝物の神経、生殖器系への影響の解明を行っている。(名古屋大学、愛知医科大学、労働安全衛生総合研究所、東北大学その他大学等との共同研究)

環境省競争的資金制度における研究報告

 

 

子どもの健康と環境に関する全国調査

 エコチル調査 2011年1月より全国十万組の親子を対象に、小児ぜんそくやアレルギー疾患など子どもの病気や健康に環境中の化学物質が与える影響を妊娠段階から調べる「エコチル調査」を全国で開始しています。お母さんのお腹にいる時から13歳に達するまで、定期的に健康状態を確認させていただきます。

 

■シックハウス症候群(シックビル症候群)の解明と予防対策の追求                      「シックハウス対策済み」のビルでもシックハウス症候群患者が発生しうるが、こうした事例のなかに、国のシックハウス対策の対象物質とされていない2-エチル-1-ヘキサノール(2E1H) の濃度がきわめて高く、症状の原因となる場合がある。現在、病態機序の解明を、世界的に限られた施設にしか設置されていない吸入曝露装置を用いて、動物実験により行っている。その他に、ヒト集団における曝露と発症の量反応関係の解明、客観的な診断マーカーの開発、工学的側面から見た2E1H発生源対策の解明、外国(バングラデシュ及び中国)における室内空気汚染問題も検討の対象としている。 (山口大学、名古屋市衛生研究所、愛知医科大学、北海道大学、名古屋大学、その他大学等との共同研究)

■有機溶剤トリクロロエチレンによる重症皮膚障害の解明                            中国をはじめとするアジア諸国の有機溶剤職場で、重症薬疹に似た全身性皮膚・肝障害患者が近年多発している。乳児期の突発疹の原因ウイルスであるヒトヘルペスウイルス6型(HHV-6)が発症者で再活性化すること、また、トリクロロエチレンは感作性物質であるという、有機溶剤中毒に関するこれまでの常識にはなかった2つの概念を明らかにした。職業性中毒と重症薬疹という一見まったく異なる疾病に、共通の病態が存在することを証明した。現在、患者の病態におけるHHV-6の役割、予防法及び早期の診断マーカーの確立に関する研究を行っている。(名古屋大学、中国広東省職業病防治院、藤田保健衛生大学、その他機関との共同研究)

■職業または環境起因性が疑われる疾患の事例検討
職業または環境中の化学物質(特に石綿等の粉じん、有機溶剤等の産業化学物質)が原因ではないかと疑われる疾患事例について、症例検討や疫学調査を行っている(臨床医の方からの相談は歓迎します)。なお、一般の方からの労働衛生や環境衛生に関する相談については、都道府県産業保健推進センター、労災病院、地域の保健所等が受けつけているため、そうした機関を紹介することを原則としている。(愛知教育大学、愛知医科大学、名古屋市衛生研究所、名古屋大学、その他機関との共同研究)

■フタル酸エステル類のリスク評価
プラスチックの可塑剤として汎用されているフタル酸エステル類は、ペルオキシゾーム増殖剤活性化受容体α(PPARα)に配位し生体影響をもたらすと危惧されているが、PPARαの機能には種差があることが報告されている。現在、ヒトのPPARαをもつマウスを用いて、フタル酸エステル類曝露の肝臓の脂質代謝への影響と、発がん影響について研究を行っている。 (名古屋大学、信州大学、米国NIHとの共同研究)