Education

学部教育

医師法の第1条では、「医師は、医療及び保健指導を掌ることによつて公衆衛生の向上及び増進に寄与し、もつて国民の健康な生活を確保するものとする。」と医師の役割が謳われています。すなわち医師には、疾病を治療することに加え、いかに疾病を予防し健康を実現するかという視点をもつことが要求されます。このため、全ての医学生は、患者個人のみならずその方の社会的背景や環境、また疾病に罹患する前の健康な集団を適切に考察できるようになる必要があります。

 この目標を達成するために、今年度は、第4学年を対象に社会医学(予防医学基礎)が、また、第5学年を対象に社会医学(予防医学応用)の講義・実習が行われます。これに加え、対象が医学部生に限定されませんが第1学年の教養教育として「社会と医学」が開講されます。また、医療系学部連携教養教育には社会医学系の教員も参加します。

 なお、正規のカリキュラムに飽き足らない場合、課外活動として環境労働衛生学(衛生学)教室の研究に参加することができます(大歓迎します!)。遠慮なく教室員に声をかけてください。

大学院教育

大学院には2つの課程(修士・博士)があり、環境保健学領域の研究者・専門家としてふさわしい学識・見識を身につけるために必要な教育が行われます。大学院生は、院生全体を対象とする共通科目の履修受講とともに、修了の要件である論文執筆に向けた研究を行います。

大学院生の研究テーマの選択にあたっては、本人の希望及び卒業後の進路、出身学部等を考慮します。研究は一般にチームとして行われ、選択するテーマによってそのチームのリーダーから受ける指導の比重が高くなりますが、基本的にすべての大学院生は教員全員のサポートを受けます。以下は実施可能な研究テーマの例です。

•殺虫剤の健康影響リスク評価(動物実験、フィールド調査)                          •子どもの健康と環境に関する調査(フィールド調査)
•シックビル症候群(シックハウス症候群)の機序解明(主に動物実験)
•疲労性健康障害・ストレス関連疾患・作業効率の客観的評価法及び効果的介入方法の開発


<修士課程>
 医学科以外の4年制学部を卒業した方のための課程です。卒業後、博士課程への進学の道とともに、企業等への就職の道があります。大学としては所属する研究室が未定であっても入学は可能ですが、マンパワーの面から本分野として十分な研究指導体制がとれない場合がありますので、本分野への所属希望がはっきりしている場合は、必ず受験前にご相談下さい。修士課程説明会が実施されますので、参加をお勧めします。

<博士課程>
 医師及び修士課程(医学研究科修士課程に限定しません)を卒業した方を対象とします。入学と同時に所属する研究室が決定しますので、入学を考えている方は入試出願前に必ずご一報下さい(決定前で検討中という方からの連絡も歓迎します)。卒業後の進路は、大学、研究所、企業などの教育・研究職の他、行政、臨床(医師の場合)など、チャンスや適性・能力に応じてさまざまな道があります。

習得・実施が可能な基本的実験手技・研究手法の例
•遺伝子増幅PCR法
•蛋白同定・定量
•実験動物の飼育
•質量分析(クロマトグラフ質量分析計)
•顕微鏡による形態学的評価
•ヒト・動物を対象とした調査研究計画の立案

大学院の教育方針

 学位研究においては医学(生物学)を中心とした研究アプローチを行うため、原則として理系学部出身者を対象に大学院生の募集を行います。人体及びその生体反応に関する理解を、修士課程、博士課程それぞれに応じたレベルで身につけていただきます。工学部出身者のように、学部時代に生物学の教育を十分受けていない場合は、大学院入学後に教科書を用いた勉強で補うとともに、生体とはどういうものか触れて学ぶ機会を得られるよう、動物を用いたin vivo実験やヒトでの調査に何らかの形で参加させるなど配慮します。出身学部によって受けた教育の特色は、それぞれその人の強みともなる部分ですので、自分のバックグラウンドを生かした研究ができるよう支援します。なお、複数の研究テーマに関与した方がよいと思われる場合、そのように指導します。環境労働衛生学の分野には、広範な専門性に対応した研究領域があり、当教室の研究テーマの多様性をご覧いただければそのことがおわかりになると思います。

 夏休み期間を除く毎週金曜日夜には、大学院生・研究生を対象とした大学院セミナーを開催しています。その時点までの研究結果や文献調査結果のまとめや、論文抄読の発表順番が定期的にまわってきます。教員を中心に愛のこもった(?)厳しい質問がとんできますので、十分な準備・勉強をすることが期待されます。
 また、隔月最終金曜日には、主に教室外の方に講師となっていただく衛生学研究会を開催します。社会医学である環境労働衛生学に関連し、今、社会で何が問題になっているか、さまざまな視点に触れる機会となるようにテーマを設定します。大学院生は原則として、上記の大学院セミナー及び衛生学研究会に出席することが求められます。

 学位取得は公的に研究者としてみなされることを意味します。このため、博士課程の学生においては、環境労働衛生学の研究者として独立できる力を身につけるよう、研究計画の立案はもちろん、研究費獲得のための申請書作成等も積極的かつ主体的に行うことが期待されます。