平成19年度 第2期


 今日、科学技術は大きく進歩し、私たちはその恩恵に浴しています。科学の進歩は日進月歩であり、かつて学んだ知識は古く役立たないものがあります。また、身の回りには多くの情報が氾濫して、どれをどう自分の生活に生かしていくべきか、戸惑うことが多々あります。
 本オープンカレッジでは、本学の基礎・臨床分野が蓄積している最新の研究情報を、市民の皆様にわかりやすく解説いたします。皆様には、自己研鑽と再学習の場としてとらえ、日々の生活を実りあるものに、また、将来の生活設計のために役立てていただければ幸いです。

開講科目と期間  No.3 薬と健康 9/05〜10/24
  No.4 ライフサイクルとメンタルヘルス 9/14〜11/09
時間は18:30〜20:00の90分授業で週1回、全8回で構成。
受講者は原則として8回を通して受講をお願いします。

募集定員:各科目とも80人 (科目単位で募集し、複数科目受講も可)
受講料:各科目とも8,000円 開講初日にお支払いいただきます。
応募対象:教育・保育・福祉関係者、医療関係者、行政自治体関係者、企業
関係者等幅広い社会人及び一般市民(学生・大学院生の聴講可)
応募受付期間:  平成19年8月1日〜8月27日
応募方式往復はがき または,E-メール
受講申込み記入事項:(往信の表・裏)




上記はがきと同様に応募申込み事項−項目−をご記入ください
 
選考方法応募人数が定員を大幅に超えた場合は、応募動機も参考にしながら抽選することがあります。
選考結果: 平成19年8月31日までにお知らせします。
問い合わせ先名古屋市立大学医学部事務室 オープンカレッジ担当
〒467-8601 名古屋市瑞穂区瑞穂町川澄1 TEL:(052)853-8077


2007年 第2期講座概要

  科目No.3 薬 と 健康          
     コーディネーター 伊藤猛雄  

 日本人社会の高齢化の進行とともに健康に対する関心が益々高まってきており、健康の維持や疾患予防を目的として数多くの薬剤を摂取する人が増加している。本テーマは、薬と健康についての最近の諸問題のうち、いくつかのトピックスに的を絞り、受講者に、このテーマに関する基礎から臨床にわたる最先端の知見をわかりやすく紹介し、薬剤を有効かつ安全に使用していただくための知識を提供するとともに、その理解を深めていただくことを目的として企画したものである。

9月5日(水) 薬の併用について知っておきたいこと―薬物相互作用と薬物代謝酵素
医学研究科 薬理学 講師 渡邊義将   
 近年,高齢患者の増加に伴って,多くの患者が複数の疾患を併せ持つようになり,一人の患者に対し多種類の薬剤が処方されるケースが増加している。内服した薬剤の多くは,「腸管で吸収され→肝臓で代謝され→ターゲット部位で作用する」とともに,「腎臓から尿中に排泄される」という過程をたどる。二種類以上の薬物を併用すると,場合によっては上記の複雑な過程で薬物同士が互いに影響しあい,副作用が生ずることがある。また,ある種の食物がこの過程に影響を与えることもある。本講義では,薬物併用の注意点についてわかりやすく説明する。

9月12日(水) 糖尿病の効果的予防法
医学研究科 消化器・代謝内科学 講師 今枝憲郎   
 糖尿病は代謝病であるといわれる。何故、代謝疾患病と呼ばれるのか?肥満は何を引き起こすために健康に悪いのか?など、をわかりやすく説明し、糖尿病を予防するためにどのような注意が必要か?また、予防する有効な薬物療法はあるのかについて、専門医の立場から講義する。

9月19日(水) ビタミン補給と循環器疾患
東市民病院副院長 佐藤孝一   
 高齢化社会にともなって、高血圧や心疾患を有する患者が増加している。現在、それぞれの疾患に対しての有効な治療薬は存在する。しかし、これらの疾患の予防や治療のために多くの人々が種々のビタミン剤やサプリメントを摂取している。はたして、これらの摂取は有効なのであろうか?この疑問に答えるべく、本講義では、水溶性ビタミンや抗酸化剤であるコエンザイムQの摂取の有効性について、循環器専門医の立場からわかりやすく説明する。

9月26日(水) 妊娠と栄養管理
市大病院分べん成育先端医療センター 准教授 鈴木佳克   
 成育医療の現場において妊娠初期の栄養管理がその後の分娩に至る母体や胎児の健康維持に重要であると考えられている。栄養過多である肥満女性は、妊娠高血圧症症候群、妊娠糖尿病や血栓症などの合併症、産道の通過障害による分娩異常や巨大児など胎児発育異常が多い。"やせ崇拝"により偏ったダイエットを行っている栄養不良女性では、低出生体重児や早産児が増加する。生活習慣病は、胎児期の栄養状態によって形成されるとの仮説(生活習慣病胎児期発症説)も注目されている。妊娠初期から分娩までの栄養管理について専門家の立場からわかりやすく説明する。

10月3日(水) 自己治癒力を高める薬
医学研究科 展開医科学 教授 岡嶋研二   
 多くの薬が、いろいろな病気の治療に使われるが、それらの薬の中には、本来の期待されていた薬理効果以外の効能が認められることがある(多様性効果)。例えば、降圧剤の中には、高血圧の改善のみならず、認知機能低下を抑制したり、糖尿病の発症を抑制したり、さらに、育毛効果が認められるものまである。本来の薬理効果以外の多様性効果が、発現する機序には、不明な点が多いが、薬剤開発の過程で、多くの薬剤の候補となる物質の動物実験でのスクリーニングの際に、多様性効果で、動物の病態を改善する為に、このような薬剤が臨床に登場するのであろう。おそらく、この多様性効果とは、多くの病態を改善するのに共通した効果、すなわち、人間の本来の自己治癒力を高める効果であろうと思われる。本講演では、自己治癒力とは何か、そして、自己治癒力を高める薬を紹介する。

10月10日(水) 薬でインフルエンザに対抗する(薬の作用機序と限界)
医学研究科 ウイルス学 准教授 信澤枝里   
 インフルエンザの有効な治療薬としてリン酸オセルタミビル(タミフル)や塩酸アマンタジン(シンメトリル)などがある。しかし、最近、"タミフル"と異常行動との関係が注目され、はたして抗インフルエンザ薬を摂取することが患者にとってメリットがあるのか否かが議論されている。そこで、本講義では、インフルエンザウイルスの増殖のしくみをわかりやすく説明したうえで、抗インフルエンザウイルス薬の作用機序、その必要性について基礎医学研究者の立場から講義する。

10月17日(水) 現代の医療に漢方薬は必要か?
医学研究科 非常勤講師 種村光代   
 多種多様な症状を訴える患者さんへの統合医療の一つとして漢方薬の有効性が注目 されている。一般に、漢方薬は副作用がない安全な薬物と考えられてきたが、極めて多くの化学成分からなる生薬がブレンドされたものであり、重篤な副作用があることも明らかにされている。本講義では、既存の薬剤で治療できないものが漢方薬で治療できる可能性があるのか?健康食品やサプリメントとの違いは?漢方薬にある副作用はどのようなものか?いつどうやって服用すればよいのか?などについて、産婦人科医の立場からわかりやすく解説する。

10月24日(水) 将来のがんの薬物治療
市大病院 化学療法部 講師 小松弘和   
 癌は一個の細胞の異常な増殖により固体に死をもたらす疾患である。このため、癌治療薬の多くは細胞増殖を強く抑制する性質を有するものが多く、このため正常な細胞で増殖能を有する骨髄細胞や腸の上皮細胞に障害をもたらす。これらの副作用を減弱し、かつ、がん細胞特異的に作用する治療薬を目指した新しいがん治療薬の開発が望まれている。その中の一つに、モノクロナール抗体を用いた癌細胞特異的治療薬の開発("分子標的治療"と呼ぶ)がある。本講義では、この分子標的治療の現況とその将来についてわかりやすく説明する。


  科目 No.4 ライフサイクルとメンタルヘルス          
     コーディネーター 古川壽亮  

 家庭、学校、会社などで、毎日いろいろなストレスにさらされている現代人のあいだでは、こころの病が増えているようです。人間の一生のなかでは、そのステージ、ステージに応じて出会うストレスが変遷してゆきます。それらをライフステージごとの発達課題ととらえることが出来るでしょう。本講座では、ステージごとにテーマをわけて、対処しなくてはならない課題の特徴とその賢い対処方法を勉強してゆきましょう。

9月14日(金) 広汎性発達障害の子ども達を理解する
医学研究科 精神・認知・行動医学 助教 山田敦郎   
 保育園や幼稚園、学校の先生方からこんな質問をよく受けます。(例)4歳の男子ですが、他の子どもが使っている玩具を勝手に取ったり、自分が一番になりたくて順番を抜かしたりします。その都度注意するのですが、本人は全く悪いと思わず同じことを何度も繰り返してしまいます。どう教えたらいいのでしょうか。こういった子ども達の中には、広汎性発達障害という疾患を抱えている場合があります。この広汎性発達障害について学びます。同時に、子ども達の重要な発達段階、子育ての大切なポイントを知ることができます。

9月21日(金) 女性のメンタルヘルス
医学研究科 精神・認知・行動医学 助教 中野有美   
 妊娠,出産,月経周期に伴う精神面での諸問題について解説し,男性より女性の有病率が高い精神疾患について触れ、女性のメンタルヘルスにとって重要なポイントを一緒に見てゆきたいと思います。

9月28日(金) 思春期:大人になることのむずかしさ
医学研究科 精神・認知・行動医学 助教 竹内 浩   
 ライフサイクルにはいくつかの大きな節目があります。その1つが思春期であり、この時期を経験して人は大人になっていくわけです。でも少し振り返ってみてください。私たちはどうやって大人になってきたのでしょうか。そして、大人になるというのはどういうことを言っているのでしょうか。メンタルヘルスから見て、大人になるためにもがき苦しんだり、大人になりきれなかったり、大人になることを拒否しているかにみえる若者たちに遭遇することがあります。このような若者たちを通して、今の世の中で大人になっていくことのむずかしさ、大変さを考えてみたいと思います。

10月5日(金) 職場とうつ病:予防、早期発見、家族として同僚としての対応
医学研究科 精神・認知・行動医学 教授 古川壽亮   
 うつ病は男性で20人に1人、女性では10人に1人が一生に一度はかかる病気です。そこで本講義では、うつ病の予防、早期発見の手だてを述べ、さらに家族として同僚としてうつ病患者さんを支えるために何が出来るか、何をしてはいけないかという具体的なアドバイスを差し上げたいと思います。

10月12日(金) がんとこころ
医学研究科 精神・認知・行動医学 講師 奥山 徹   
 がんを患うことは、多くの人にとってからだだけではなくこころにも様々な負担をもたらします。近年、適切なこころケアを提供することを通して、患者さんとご家族がよりよく生活できるよう援助することを考えるサイコオンコロジー(精神腫瘍学)という分野が発展してきており、私たちもこの分野に積極的に取り組んでいます。当日は、がんを患った際にどのような心の反応が生じるのか、ケアが必要なこころの状態とはどのような状態か、またその際にはどのようなケアを行うかなどについてお話したいと思います。

10月19日(金) 心臓病とこころ
医学研究科 医学・医療教育学 教授 早野順一郎   
 心臓病の発症にストレスや抑うつが関わっていることは経験的にもよく知られています。実 際,ストレスや抑うつは高血圧,高脂血症,喫煙などと共に心疾患の発症率を高める危険因子です。ストレスにも色々ありますが,タイプAと呼ばれる特徴的な行動様式の人のストレスが心筋梗塞や狭心症などの冠動脈疾患と関連すると言われています。ストレスが心臓病の発症に関与するメカニズムには自律神経が重要な働きをします。近年,心電図のコンピュータ解析から自律神経機能の診断が可能となり,日常生活中の自律神経活動から冠動脈疾患や突然死のリスクを予測できることも分かってきました。

10月26日(金) 認知行動療法:ストレスとうまく付き合う対処法を学びましょう
東海学院大学人間関係学部 准教授 陳 峻文   
 ストレスとうまく付き合うためにどうすればよいかについて,心理療法の一つである認知行動療法の基本原理に基づいて,具体的な対策を理解していただき身につけていただきたいと思います.講義では,どのようなときにストレスを感じるか,ストレスを感じたときの自分自身の考え,振る舞い,情緒的・身体的変化に気づくことから,そうした状況や変化に対処するスキル(方法)について説明します.また,実際例に基づいて具体的な解決法を取り上げながら練習を取り入れます.

11月9日(金) 老年期:豊かに老いる
  
医学部 臨床教授 仲秋秀太郎   
 わが国の平均寿命は、2050年には90歳をこえると予測されています。このような高齢社会を迎えて、高齢者が豊かに生きるためにはなにが必要なのでしょうか。老年期には、「からだ」と「こころ」の関係が密接になる時期だといわれています。したがって、豊かな老いとはなにかを考えるとき、からだのみならず、こころをめぐる問題に目をむけることは重要な課題です。老年期におけるこころの問題とそれに対処する方法などの内容を中心に、うつ病や認知症の診断や治療・予防、および認知症を支える介護者の問題などをわかりやすく解説します。




 お車でのご来場はご遠慮下さい。
 名古屋市瑞穂区瑞穂町字川澄1 
   

 医学研究科研究棟11階 講義室A 
北出入口(病院側から来られるとき)または正面玄関から入って
1階ロビーよりエレベータで11階へおあがりください。          
これまでの開催講座
  2005年前期講座(7月〜10月)
  No.1 環境と発がん・がん予防
  No.2 脳とこころを元気に−脳の活性化と環境−
  2005年後期講座(11月〜2006/2月)  
  No.3 生活習慣病の怖さ
  No.4 日常生活とアレルギー:その予防と対策  
  No.5 漢方医学・医療を学ぶ
  2006年第1期講座(6月〜7月)  
  No.1 環境と脳,その障害と機能活性化          
  No.2 感染症は身近に
  2006年第2期講座(9月〜10月)  
  No.3 病気の自然史-医療における男と女の違い
  No.4 最先端の癌治療について学ぶ
  2006年第3期講座(11月〜2007/1月)  
  No.5 遺伝子医療
  No.6 知っておきたい消化器病の基礎と臨床  
  2007年第1期講座(6月〜7月)  
  No.1 光を用いた最先端医療に挑む
  No.2 メタボリック症候群と周辺疾患            



お茶の水女子大学 公開講座−化学・生物総合管理の再教育講座−