平成19年度 第1期


 今日、科学技術は大きく進歩し、私たちはその恩恵に浴しています。科学の進歩は日進月歩であり、かつて学んだ知識は古く役立たないものがあります。また、身の回りには多くの情報が氾濫して、どれをどう自分の生活に生かしていくべきか、戸惑うことが多々あります。
 本オープンカレッジでは、本学の基礎・臨床分野が蓄積している最新の研究情報を、市民の皆様にわかりやすく解説いたします。皆様には、自己研鑽と再学習の場としてとらえ、日々の生活を実りあるものに、また、将来の生活設計のために役立てていただければ幸いです。

第1期開講科目  No.1 光を用いた最先端医療に挑む 6/1〜7/20
  No.2 メタボリック症候群と周辺疾患  6/6〜7/25
時間は18:30〜20:00の90分授業で週1回、全8回で構成。
受講者は原則として8回を通して受講をお願いします。

募集定員:各科目とも80人 (科目単位で募集し、複数科目受講も可)
受講料:各科目とも8,000円 開講初日にお支払いいただきます。
応募対象:教育・保育・福祉関係者、医療関係者、行政自治体関係者、企業
関係者等幅広い社会人及び一般市民(学生・大学院生の聴講可)
応募受付期間:  平成19年4月1日〜5月15日
応募方式往復はがき または,E-メール
受講申込み記入事項:(往信の表・裏)




上記はがきと同様に応募申込み事項−項目−をご記入ください
 
選考方法応募人数が定員を大幅に超えた場合は、応募動機も参考にしながら抽選することがあります。
選考結果: 平成19年5月25日までにお知らせします。
問い合わせ先名古屋市立大学医学部事務室 オープンカレッジ担当
〒467-8601 名古屋市瑞穂区瑞穂町川澄1 TEL:(052)853-8077


2007年 第1期講座概要

  科目 No.1 光を用いた最先端医療に挑む          
     コーディネーター 森田明理 ・ 新谷洋一  

 光には、目に見える可視光線、見えない紫外線・赤外線などがあります。それぞれの光・波長で、体や細胞への働きは違って、光を自在に扱える今日、次第に驚くべき有用性が明らかになりつつあります。紫外線では悪いところばかりが注目されますが、特定の波長を利用することで治りにくい皮膚疾患に応用することも、薬剤と組み合わせることで、眼疾患・消化器疾患の治療も可能となってきました。また、内視鏡などの診断への応用も進歩がめざましいです。本コースでは、光の基本的な技術から臨床への応用まで幅広い内容として講義を進めるとともに、今後の医療への応用を皆様と考えていきたいと思います。

6月1日(金) 消化器内視鏡診断の進歩
共同研究教育センター(病院内視鏡部) 准教授 中沢貴宏   
 近年の消化器内視鏡の診断における進歩はめざましい。内視鏡本体自体の進歩としては患者への負担を軽減するために開発された経鼻内視鏡とカプセル内視鏡、今までは到達できなかった小腸の観察を可能にしたダブルバルーン内視鏡の登場である。また光学系の技術の発達においては病変を拡大して観察することにより微細な粘膜の変化をみることを可能にした拡大内視鏡や、特殊光を用いたNBI,AFIの登場である。さらに超音波を先端に装着して病変をより近くで観察し、さらに組織を採取できるようになった超音波内視鏡についても述べたい。

6月8日(金) 消化器内視鏡治療の進歩
消化器・代謝内科学 講師 片岡洋望   
 最近の消化器病学,医療機器の進歩により,消化器領域の内視鏡治療も日々進化している。以前であれば外科的開腹手術が必要な症例も,低侵襲の内視鏡的治療で治癒する場合も少なくない。1.内視鏡的止血術(局所注射,粘膜焼灼,クリップ留置など),2.管腔拡張術(内視鏡的ステント留置術,バルーン拡張術など),3.腫瘍の切除術(ポリペクトミー,EMR,ESD),4.腫瘍焼灼術(アルゴンプラズマ凝固法,レーザー光凝固術(PDT)など),5.胆道系の内視鏡治療,6.胃瘻造設術につき,ビデオ画像も用いながら解説する。

6月15日(金) 糖質を生理機能素子とする光線力学療法用糖鎖連結光増感剤の開発
奈良女子大学大学院教授 矢野重信   
 近年QOLの観点からクリーンながん治療法として、光線力学療法(Photo−dynamic Therapy:PDT)が注目を浴びている。現在、細胞選択性、生体適合性(副作用が無い)、水溶性および組織透過性に富む新規光増感剤の開発が強く望まれている。本講義では、PDTの原理および当研究室で開発したPDT用の光増感剤として糖質を生理機能素子とする糖鎖ポルフィリン誘導体、クロリン誘導体、フラーレン(C60)誘導体について、合成法の実際ならびにそれらの光化学的性質について紹介する。また、これら新規光増感剤のがん細胞の一種であるHeLa細胞に対するPDT効果について分かり易くお話しする。

6月22日(金) 光で測る−最先端エネルギー開発に活躍する光計測技術
名城大学大学院特任教授  一本松 正道   
 "火の利用"は、言語や道具とともに我々人類文明の黎明を告げる大発明でした。現在でも、我々の利用するエネルギーの大半は、化石燃料の燃焼によって得られています。このように重要な火ですが、実はその反応の実態は十分解明されたとはいえません。本講座では、最新のレーザー分光とナノ秒分光を組み合わせて火の実態に迫った光計測の話題を始めとして、光計測を最先端のエネルギー開発に生かした実例を紹介します。

6月29日(金) 光干渉断層計(Optical coherence tomography: OCT)を用いた眼科における黄斑疾患の診断
視覚科学 講師 安川 力   
 眼球はカメラに似た特殊な構造をしていて、フィルムにあたる網膜で光をとらえるために眼球の表面から内部にかけて透明です。このような特殊構造をしているため、眼底検査によって網膜の状態を医師の眼で直接観察可能ですし、レーザーなど光を用いた治療や診断が可能です。レンズや顕微鏡の開発、進化により眼底検査の質も向上してきています。そして、最近では、光の干渉を用いて網膜の断層写真が得られるようになり、極めて繊細な網膜の構造を生体で観察でき、この光干渉断層計は今や網膜の中心部である黄斑の疾患の診断や治療効果の判定に不可欠となっています。

7月6日(金) 光で難治な皮膚病を治す
加齢・環境皮膚科学 教授 森田明理   
 太陽の紫外線には、良いところと悪いところがあります。オゾン層の減少やライフスタイルの変化から、悪いところばかりが目立つようになりましたが、紫外線にも良いところ(有用な波長)があって、難治性皮膚疾患に応用されるようになりました。良い波長だけを切り出すようにして、新たな光源を用いて、乾癬、アトピー性皮膚炎、白斑など、外用薬だけは治療が難しい病気を治すことが出来るようになってきました。新たな光、新たなユーザフレンドリーな機器の開発、光が皮膚の健康に役立つでしょう。

7月13日(金) 光線力学療法による加齢黄斑変性の治療
視覚科学 講師 安川 力   
 欧米における成人失明の主要原因である加齢黄斑変性は、近年、日本においても生活習慣の欧米化なども関連して増加傾向にある重大な疾患です。網膜の中心部である黄斑の下に異常血管が発生し、発症すると見ようとする視野の中心が見えなくなったり歪んだりといった症状が出現し、多くの場合、6ヶ月?1年で視力は著しく障害されます。現在、日本における治療法の代表が光線力学療法です。光感受性物質の点滴と弱い赤色光の照射を組み合わせて異常血管を閉塞させます。患者の負担の少ない治療で、これまで不治の病であった加齢黄斑変性において視力改善が得られる場合も少なくありません。

7月20日(金) 皮膚疾患でのレーザーの最近の進歩
加齢・環境皮膚科学 助教 新谷洋一   
 皮膚疾患治療に対するレーザー機器の出現により、それまでには治療といっても傷跡がはっきりと残ってしまう、これまで治すことができなかった病気の治療ができるようになりました。レーザーというと、夢のような機械で何でも一回で治ってしまうというイメージをもたれる方がある一方、なんか怖い治療だからやりたくないというイメージをもたれる方もあります。今回は、レーザー治療がなぜ効くのかを簡単に説明し、どのような病気・状態に効果があり、どのように治っていくのかなどを解説します。


  科目 No.2 メタボリック症候群と周辺疾患          
     コーディネーター 木村玄次郎 ・ 吉田篤博  

 昨年の流行語大賞にもなったメタボリック症候群(シンドローム)を御存知ですか? 本邦の中年男性の半分が予備軍であることが報告され、紙面、テレビを賑わせました。この病気は過食、運動不足などの生活習慣の乱れから生じる、脂質代謝異常(高脂血症)、糖代謝異常(糖尿病)、高血圧、内臓肥満の集合体のようなものです。その特徴は原因が共通なため重複しやすいこと、各々の程度が軽くても重複することで重大な障害につながることが挙げられます。しかし、この病気は予防・治療が可能で、その中心は運動療法、食事療法といった自己管理なのです。各臓器との関わり、治療についての講演を介して、自己管理の重要性を理解していただきたいと思います。

6月6日(水) メタボリック症候群と高血圧
心臓・腎高血圧内科学 教授 木村玄次郎   
 メタボリック症候群とは、肥満に伴って大型化した内臓脂肪細胞から様々な悪玉のホルモンが分泌されることが主原因でインスリン抵抗性を来たした病態と理解することができる。その結果、高血圧や糖尿病、高脂血症を複合的に発症させ、最終的には冠動脈疾患や脳卒中などの心血管疾患を合併することになる。我が国のメタボリック症候群では、高血圧、糖尿病、高脂血症の中では、高血圧が初期から発症し、最も頻度が高く、したがって心血管疾患に対するリスクとしても最大の役割を果たしていると考えられている。そこで、このセミナーでは、メタボリック症候群に伴う高血圧の特徴を病態に基づいて理解し、その対策について考えてみたい。

6月13日(水) メタボリック症候群と糖尿病
消化器・代謝内科学 講師 今枝憲郎   
 糖尿病はインスリン抵抗性というメタボリック症候群の根幹をなす病態そのものです。さらに高血圧症や高脂血症を合併しやすいことから、メタボリック症候群に最もなりやすい生活習慣病と言えます。ところで、メタボリック症候群の診断基準をもう一度よく見て下さい。糖尿病ではなく耐糖能異常(空腹時血糖値110mg/dL以上)となっています。なぜなら空腹時血糖値は正常でも食後高血糖があると、心筋梗塞や脳梗塞などの血管性病変が起こりやすいからです。今回の講演ではなぜ食後高血糖が血管に悪いのか、食後高血糖を改善する為にどのような治療が必要かといった内容をお話しします。

6月20日(水) メタボリック症候群と痛風・高尿酸血症
共同研究教育センター(病院輸血部) 准教授 坂野章吾   
 痛風の原因となる高尿酸血症は成人男性の約20%を占めており、動物性蛋白、脂肪の多量摂取、飲酒の増大により尿酸値は増加します。痛風は高尿酸血症の継続による尿酸結晶の誘発により、足指などに激痛を伴う急性単関節炎で、尿路結石、痛風腎をきたします。最も重要なことは高尿酸血症が心血管系疾患など動脈硬化性疾患を併発しやすく、インスリン抵抗性をきたし、肥満、高脂血症、高血圧、糖尿病などメタボリック症候群としての危険因子を同時に認めることが多く、生活習慣病として位置づけられることです。尿酸値が内臓脂肪量を反映するよいマーカーであると考えられています。痛風・高尿酸血症の日常生活指導として、尿をアルカリ化し、尿路管理をするとともに、肥満の解消など生活習慣の是正が重要であることを概説します。

6月27日(水) メタボリック症候群と高脂血症
心臓・腎高血圧内科学 准教授 佐久間 長彦   
 内臓脂肪(腹腔内脂肪)蓄積に加え、高トリグリセライド血症かつ/または低HDLコレステロール血症、高血圧症、空腹時高血糖のうち2項目以上を合併したときにメタボリック症候群と診断される事からも知られるように高トリグリセライド血症に伴う低HDLコレステロール血症は冠動脈疾患の大きな危険因子である。

7月4日(水) メタボリック症候群と肝
消化器・代謝内科学 講師 中尾春壽   
 健康診断で脂肪肝と診断された方も多いかと思います。一昔前まで脂肪肝は肝硬変や肝癌に進展しないので大きな心配はないと言われていました。しかし,近年,肝炎ウイルスや飲酒歴がないにもかかわらず,脂肪肝から肝硬変や肝癌に進展する人が一部に存在することが明らかとなりました。このような脂肪肝は栄養過多による単純性脂肪肝と区別して非アルコール性脂肪性肝炎:NASH(ナッシュ)と呼ばれています。NASHはメタボリック症候群と密接に関係し,メタボリック症候群の肝臓での表現形とも言われています。本講演ではNASHを中心に肝とメタボリック症候群の関係をお話させていただきます。

7月11日(水) メタボリック症候群と脳卒中
神経内科学 准教授 山脇健盛   
 脳卒中は長い間日本人の死因の第一位でしたが徐々に減少し,現在はガン,心臓病に次いで第三位となっています。しかし,脳卒中,なかでもその7?8割を占める脳梗塞(その他は,脳出血,クモ膜下出血)の発症率はむしろ増加しており,脳卒中は,寝たきりとなる最も多い原因として社会問題にもなっています。脳梗塞はある程度予防可能な病気です。高血圧,糖尿病,高脂血症は,それぞれ脳梗塞の危険因子(なりやすい状態)ですが,これらが境界領域程度であっても,肥満がもとにある(メタボリック症候群)と,脳梗塞となる確率がぐんと増えます。脳卒中とメタボリック症候群の関連についてわかりやすく解説します。

7月18日(水) メタボリック症候群と心臓病
心臓・腎高血圧内科学 准教授 大手信之   
 高血圧や高コレステロール血症が、虚血性心臓病や脳卒中の危険因子であることは良く知られています。しかし、降圧薬によって血圧を下げると直線的に脳卒中の発症率が減少するのに比べ、虚血性心臓病の発症率低下には下げ止まりが見られます。また、急性心筋梗塞で入院してきた患者さんの血清コレステール値が高くないこともしばしば経験するところです。では、何が虚血性心臓病発症リスクを押し上げるのでしょうか?現代人における過栄養状態と運動不足が引き起こすメタボリック症候群が、今その原因として注目されています。本講座では、虚血性心臓病とメタボリック症候群の密接な関係を明らかにしたいと思います。

7月25日(水) メタボリック症候群と腎  
共同研究教育センター(病院人工透析部) 准教授 吉田篤博   
 メタボリック症候群で腎が悪くなるかは不明だが、高血圧、糖尿病、高脂血症などはすべて腎に悪影響を及ぼす。また、種々の危険因子が影響し合って、まるでドミノ倒しのようにいろいろな病気が一気に起こるということから、メタボリックドミノとも言われている。この最下流に位置するのが腎である。まずはどの様にして腎が悪くなっていくかを、次にそれを防ぐドミノストッパーとしては何があるのかを学んでいただこうと思う。メタボリック症候群は"癌"と同じように生命を危険に陥れるが、自分で予防できることが重要なポイントである。




 お車でのご来場はご遠慮下さい。
 名古屋市瑞穂区瑞穂町字川澄1 
   

 医学研究科研究棟11階 講義室A 
北出入口(病院側から来られるとき)または正面玄関から入って
1階ロビーよりエレベータで11階へおあがりください。          



お茶の水女子大学 公開講座−化学・生物総合管理の再教育講座−