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肺癌の診断と治療について

肺癌とは

肺癌は肺にできる悪性腫瘍で、以前はタバコを吸う男性に多い病気でしたが、現在はタバコを吸わない肺癌の患者さんが増えています。女性の患者さんも増えています。周囲の人が吸ったタバコの煙によって害を与えられる副流煙の影響も考えられています。肺癌は男性の癌の中では死因の第1位、女性の癌の中では死因の第2位の病気です。

癌は他の臓器やリンパ節に転移する病気です。肺癌は脳、肺、全身の骨、肝臓、副腎などの臓器や気管支近傍のリンパ節に転移することがあります。

肺癌は顕微鏡で見た癌の形から、小細胞肺癌と非小細胞肺癌の2つに大きく分類されます。サイズの小さい癌が小細胞肺癌ということではありません。小細胞肺癌は非小細胞肺癌に比べて早い段階からリンパ節転移や他の臓器への転移をきたす悪性度の高い肺癌です。小細胞肺癌は発見されてから1~2ヶ月で死に至ることもあります。手術治療の対象となるほとんどの患者さんは非小細胞肺癌です。

肺癌はどのように発見されるか

肺癌はレントゲンやCTなどの検査で見つかります。検査を受けるきっかけは検診や人間ドック、あるいは咳嗽や血痰や痛みなどの自覚症状です。一般的に、自覚症状がきっかけで発見された場合に比べて、検診や人間ドックで発見された肺癌のほうが小さく、初期の段階のことが多いと言われています。また、レントゲンよりもCTのほうがより小さな肺癌を発見することができます。近年、CTで肺を精密に調べることができるようになったため、初期の肺癌を見つけやすくなっています。PET検査は初期の肺癌は見つけられないことがあるので、初期の肺癌を見つけようと思ったら精密なCTのほうが優れています。

肺癌が疑われたら

肺癌を疑う影が見つかった患者さんにはまず肺の精密なCTを撮ります。肺にできた影の大きさや形や場所を調べると同時に、胸の中に腫れているリンパ節がないかなどのチェックをします。CTを撮る際には造影剤を使用することでさらに詳しく調べることができます。以前にCTを撮ったことがある場合にはそのCTと比べることで、影の経時的な変化でサイズが大きくなっていないか等を調べられます。肺癌の疑いと診断されても実際は肺炎や良性の腫瘍であることもあり、その鑑別には精密CTが有用です。

CTで肺癌が疑われた場合、次に行う検査は肺癌の確定診断をつける検査です。CTで肺癌を疑われても、癌という確定診断がついたわけではありません。確定診断をつけるためには影の部分の細胞または組織を採取して(生検といいます。癌を全て切除する検査ではありません)、病理医が顕微鏡で調べて癌と診断したときに初めて肺癌の確定診断がつきます。

肺癌の確定診断をつける検査(細胞や組織を採取するための検査)

喀痰細胞診:痰に出てくる癌細胞を顕微鏡で診断します。気管支の中に癌ができるとこの検査で癌と診断が確定することがあります。肺の末梢にできた癌は痰の中に癌細胞が出てきにくいため、この検査では診断がつきません。

気管支鏡:口または鼻から直径6mmぐらいのファイバースコープを気管支まで挿入して観察し、腫瘍が直接見えればこれを一部採取し、あるいは腫瘍が見えなくてもX線透視下で腫瘍に向かってブラシを挿入し、細胞を一部かきとって顕微鏡で診断します。のどの麻酔を行い、さらに検査中は眠くなる薬を投与し苦痛を軽減して行います。肺の末梢にできた癌は通常の気管支鏡が届きにくいため、特殊な気管支鏡を呼吸器内科に依頼して行うことがあります。癌ができた場所や、大きさによって気管支鏡での診断は困難なことがあります。

CTガイド生検:CTで肺をリアルタイムで見ながら、体の外から肺の影に向かって針を刺し影の一部を採取します。局所麻酔で行われます。気管支鏡検査と同様に、癌ができた場所や、大きさによってCTガイド生検での診断は困難なことがあります。

確定診断をつける検査は全ての患者さんに有用というわけではありません。影の位置や大きさなどによって可能な検査が異なります。また、影が小さい場合には確定診断をつけるための検査がいずれもできないことがあります。最近は影が小さい状態で見つかることも多いため、肺癌で手術を受ける患者さんの半数以上が術前に確定診断がついておらず、診断と治療を兼ねた手術を受けられる方が増えています。

肺癌の広がりを調べる検査

肺癌と確定診断がついたり、肺癌が強く疑われた患者さんには次に癌の転移を調べる検査をします。癌の転移の程度によって治療方針が変わるため転移を調べる検査は重要です。肺癌は脳、肺、全身の骨、肝臓、副腎などの臓器や気管支近傍のリンパ節に転移することがあります。脳以外の臓器や骨への転移、あるいは胸の中のリンパ節転移を調べるには造影CTとともにPETが有用です。脳転移はPETでは調べられないので、脳の造影MRIを撮って調べます。これらの検査の結果、肺癌の進行度が決まります。

肺癌の進行度

進行度は肺癌の大きさ、リンパ節転移の有無、他の臓器への転移の有無などにより規定されます。1期から4期に分別されていて1期から3期はさらに2つに分別されています。1A、1B、2A、2B、3A、3B、4の7段階です。1期が初期で4期が進行した段階です。

治療前に進行度を決める目的は、治療方針を決めることと、治療効果の予測です。例えば、1A期の肺癌の患者さんが手術を受けると5年後の生存率が約80-90%、1B期の場合には70-80%と予測されます。より早い進行度で手術をしたほうが癌は治癒する可能性が高くなり、進行した段階では手術ができなかったり、手術を受けても治癒する可能性は低いと言われています。

肺癌の治療

1A期から2B期の患者さんの標準治療は手術です。1A期の患者さんに手術を行うと1B期の患者さんに手術を行うよりも癌が治癒する可能性が高くなります。すなわち、より早い段階で治療したほうが、癌が治癒する可能性が高いということです。当院での肺癌手術は胸腔鏡手術を行っているため、小さな傷と、少ない痛みで治療できます。詳しくは当科ホームページの胸腔鏡手術について、をご覧ください。早期の肺癌を除き、癌の再発を予防する目的で手術後に抗癌剤治療を行います。

3A期になると標準治療は存在しないため、各病院で治療方針が異なることがあります。手術で切除できる場合には手術が選択され、手術での切除ができないと考えられる場合には放射線や抗癌剤が選択されますが、患者さんによって病態が異なるので治療方針の決定は難しいことがあります。主治医と十分相談することが必要です。

3B期、4期には通常、手術が選択されることはなく、放射線と抗癌剤治療が選択されます。ただし、例えば脳転移が数か所のみある場合や単発の副腎転移がある4期の患者さんなどには肺の手術と放射線と抗癌剤の組み合わせで治療が行われることもあります。

癌が治癒するということ

癌が治るということはどういうことでしょうか?手術で肺癌を切除できた=癌が治癒した、ということではありません。癌は治療後に再発することがある病気です。癌が治癒するとは癌が体の中からなくなって(その手段としては手術をはじめとして、抗癌剤や放射線も含みます)、その状態が一生続くことを言います。

肺癌の術後に再発する患者さんの多くは術後1~2年以内に再発しています。我々外科医は常に術後の再発を念頭に置いて患者さんの術後経過観察を行っています。術後は再発の有無をチェックするための定期的な外来通院と検査が必要です。

肺癌の疑いがある、または肺癌と診断された患者さんへ

大きな不安があるとお察しします。しかし治療しなければ癌は進行してしまいます。より早い段階で適切な治療をすることで治癒の可能性が高くなります。

我々は内科や放射線科と合同で患者さんひとりひとりの最も良い治療方針を考える会議を行い、適切な治療を選択しています。そして、手術が必要な患者さんには十分説明をして、しっかりと理解していただいた上で手術を受けていただいています。

当科の受診を希望される方は当院の外科受付にお電話していただくか、かかりつけ医または主治医に相談し紹介していただくようお願いいたします。当院ではセカンドオピニオン外来も開設していますのでご利用ください。

2015/11月作成 文責 川野

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