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2005年3月例会
講演1
「記憶・学習におけるαカルシウム/カルモジュリン依存性プロテインキナーゼIIの役割」

講演2
「異種心移植の展望」

講演3
「糖鎖は生体内でどのように働くか? −初期発生から疾患まで−」


・講演3
「糖鎖は生体内でどのように働くか? −初期発生から疾患まで−」
 

山下 匡 博士(東京大学医科学研究所細胞プロセシング部門 助教授)

糖鎖の何がおもしろいのか、なぜいま糖鎖がクローズアップされるのか。タンパク、核酸を生物を形作る根幹と考えるなら、糖鎖は生物にさらなる多様性と柔軟性を付与する分子と考えられないだろうか。
疎水性成分としてセラミド、親水性成分としてグルコース、ガラクトース、いくつかの結合様式の異なるシアル酸をその分子内に持つスフィンゴ糖脂質(以下、ガングリオシド)は、全ての脊椎動物の細胞に存在し、細胞の分化や増殖あるいは接着の調節・制御に関わっていると考えられている。また、微生物やそれらが生産する毒素の受容体でもある。脊椎動物の糖脂質の主要な構成単糖は7種に過ぎないが、糖鎖構造の違いによって400種を越す分子種が知られている。糖鎖を合成する糖転移酵素や糖鎖修飾酵素の遺伝子は、糖鎖遺伝子群とよばれ(約300種類あると見積もられており、これまで160種類以上が同定されている)、直接あるいは間接的にさまざまな生理機能と密接に関わっていることが明らかになってきている。
糖鎖とヒト疾患に関して、糖鎖合成異常による遺伝疾患も多数明らかとなっている。リソソームに局在する糖鎖分解酵素の欠損症では、未消化の糖鎖がリソソーム内に蓄積してさまざまな先天性代謝異常症を引き起こすことが知られており(通称、貯まり病とも言う)、テイサックス病やゴーシェ病、GM2ガングリオシドーシスとして知られている。一方、糖鎖合成酵素の欠損症の報告はごく最近までなかった。しかしながら、 昨年11月、NatureGenetics誌において、糖脂質合成酵素の一つであるGM3合成酵素を欠損するアーミッシュ家系が報告され、発育遅延、視力障害を伴うてんかん症候群を示した。
今回のセミナーでは、同じGM3合成酵素を欠損するマウスの結果をはじめ、発生、脳、シグナル等に糖鎖がいかに関わっているかを網羅的に解説する予定である。

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