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活動レポート

平成23年度 妊婦・授乳婦薬物療法認定薬剤師講習会

[文責]:朝岡 みなみ(薬務係)  [公開日]2012年1月24日

この度、私は「平成23年度 妊婦・授乳婦薬物療法認定薬剤師講習会」に参加させていただきました。この講習会では、「妊娠・出産の基礎知識」や「授乳のメリット」そして「新生児の生理的特徴」など周産期医療に携わるにあたり必須となる基本的知識をはじめ、「合併症妊娠と薬物療法」[1]高血圧症 [2]喘息 [3]リウマチ [4]精神疾患 [5]てんかん [6]糖尿病 [7]甲状腺に関して、実例を交えて学ぶことができました。また専門性を身につけた薬剤師が現在どのような活躍をしているか、どのような点に注意してカウンセリングを行っているかといった大変興味深い内容の講義もありました(「妊婦・授乳婦カウンセリングの実際」「専門薬剤師の業務」)。

2日間の講習会はとても充実した内容のもので、大変有益でした。

今回、特に印象に残った情報を以下に記載します。

妊婦・授乳婦専門薬剤師の役割

大阪府立母子保健総合医療センターでは、産科領域において薬剤師が大きな役割を担っており、その一部である《妊娠と薬外来》について紹介がありました。《妊娠と薬外来》は西日本唯一の妊娠と薬の情報センターとして、2007年に開設されました。母性内科医師・薬剤師が服薬の影響が心配な妊娠を希望する女性・妊婦・パートナーの相談に対応し、相談者の不安の強さや理解度に合わせたカウンセリングを毎年50件前後おこなっています。薬剤師は薬剤のリスクの説明を担当しており、調査の結果、その前後で大幅な妊娠継続の意思の上昇がみられる結果が得られています。このように薬に対する不安な気持ちを抱く女性やその家族に対して情報提供を行い、不安を取り除くことで、中絶を防ぎ、また安心して妊娠を望むことができる非常に意義のある取り組みだと思いました。また母乳育児支援システムが構築されており、服薬患者の母乳指示票(詳細は資料参照)を用いた授乳可否の管理が実施されています。スタッフ間の情報伝達を確実に行い、指導内容を統一化できるなどの利点があり、参考にしたいと思いました。

また大阪府立母子医療センターでは妊婦・授乳婦薬物療法認定薬剤師養成研修施設でもあります。上記以外でも病棟活動や両親学級への参加などに、どのようにして薬剤師は介入し活躍しているのか、今後も情報を収集したいと考えています。

カウンセリング方法

国家公務員組合共済組合連合会 虎の門病院の 林 昌洋 薬剤部長によって、カウンセリングのノウハウについて講演がありました。実際の作業は [1]妊婦・授乳婦の使用する薬剤を正しく把握 [2]薬剤の胎児・乳児へのリスクを調査 [3]入手した根拠を精査し評価 [4]医師・薬剤師間で、治療内容と評価、カウンセリング方針を共有 [5]妊婦・授乳婦と面談しカウンセリングの実施 を行います。特に[3]ではデータを理解し正しく活用することが重要となりますが、動物の生殖試験において、非陽性反応率に関しては「サル」が、陽性反応率に関しては「ラット」「マウス」が最も高いことや、臨床投与量の100倍程度の投与量まで増量されることが多いため、母親動物の状態を考慮した上で評価することが重要だと学びました。また妊婦服薬リスクに活用されるFDAやオーストラリア医薬品評価委員会のpregnancy categoryは判断根拠に違いがある点や、同じ分類Cでも考え方が違う点など、数々の留意点を含め、分類評価から正しくデータを読み取り応用する方法を教えていただきました。[5]では「自然の奇形発生率との比較による説明」(ex.あなたの赤ちゃんは大丈夫×、薬のせいで異常が起こることはない○)や「リスクは数値で表現する」「危険度の説明と共に、健常児を得る確率を伝えて妊娠・出産を支援する」などに留意し、過剰評価でも過少評価でもない正しい情報を不要な不安感を与えずに説明する方法を学びました。実例を交えた説明はとてもわかりやすく、それらは授乳婦に対する授乳可否の情報提供にも活用できるため、日々の薬剤管理指導に生かしたいと思います。

今回は様々な分野の専門家から、妊婦・授乳婦に関する幅広い講演を聴くことができました。今後も同様の研修に参加できる機会があれば積極的に参加し、知識を深めてまいりたいと考えます。

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