成果レポート

ニュースレター

Vol.2    2010年2月号

文部科学省 大学教育推進プログラム
    「医療系学部連携チームによる地域参加型学習」キックオフシンポジウム
日時:平成21年12月12日(土) 14時00分 - 17時00分
会場:名古屋市立大学本部棟 4階大ホール
 内容
  1. 記念講演:
    「医療人育成における多職種共働教育の意義~神戸大学におけるIPWの取り組み~」

    神戸大学医学部付属病院薬剤部長  平井みどり先生
  2. プロジェクトとワークショップの説明
    医学研究科 早野順一郎教授
  3. グループ討論
  4. 全体討論
 1.記念講演
医療人育成における多職種共働教育の意義~神戸大学におけるIPWの取り組み~
神戸大学医学部付属病院薬剤部長  平井みどり先生

記念講演では「医療人育成における多職種共働教育の意義~神戸大学におけるIPWの取り組み~」と題して、神戸大学医学部付属病院薬剤部長の平井みどり先生に約1時間にわたってご講演頂いた。

平井先生の略歴は以下の通り。

昭和49年
京都大学薬学部卒
昭和60年
神戸大学医学部卒
平成10年
日本病院薬剤師会・薬学教育特別委員
平成14年
神戸薬科大学・臨床薬学講座教授
平成16年
日本医療薬学会 理事・評議員
平成19年
神戸大学付属病院薬剤部長

講演要旨
  • 神戸大学医学部付属病院について
    神戸大学医学部付属病院は明治2年に設立された神戸病院を前身としており、1967年には国立に移管して神戸大学医学部付属病院となった。
    病院の第三者機関による満足度調査では上位を占めており、病院の安心度総合ランキングでは全国3位、また近隣病院との診療満足度の比較でも、満足度1位となっている。
  • 病院薬剤部について
    病院内の薬局(薬剤部)は街の薬局と法的に別のものである。院内において薬剤師は病院のあらゆるところで様々な仕事をしているが、数が医師・看護師に比べて少ないこともあり、「姿が見えない」と言われることが多い。
    あまり知られていない院内での薬剤師の職務の紹介を兼ねて、神戸大学医学部付属病院薬剤部の業務について紹介する。調剤室で薬剤の調合を行うが、抗がん剤による治療が増えており、外来化学療法室での調合では安全キャビネット内で調製を行なう。ここでは副作用などを患者に十分に理解してもらうための服薬指導が重要となっている。正しく効果的な使用のために投与薬剤の血中濃度測定も行なう。病棟活動・治験も重要な業務である。麻薬の調剤も厳重な薬剤管理の下に行っている。
    院内のチーム医療の一員としての業務がある。緩和ケアチームは終末期医療を行い、栄養サポートチームでは患者の薬物治療を把握しながら、栄養・輸液管理を行なっている。また院内感染制御チームでは抗生物質の適正使用や薬物血中濃度のモニタリングを通じて、院内感染の予防・制御を行なっている。
  • チーム医療について
    チーム医療とはどのようなものなのか、原点に戻って定義から考えてみると、チームとは単なる集合を意味するグループではない。患者、家族をはじめとしてマスコミ・政府など社会資源も含めてチームの一員として医療に参加し、関わる全ての職種がそれぞれの専門性を発揮することで患者の満足度をより高めることを目指す。各職種は平等な関係にあり、相互尊重が求められる。
    しかし現実には医師・看護師・薬剤師が独立していてコミュニケーションをとる機会はあまりない。この現状を打開するには教育が重要である。
  • IPEを基盤としたIPWカリキュラム開発プロジェクトについて
    チームでの保健医療福祉業務の取り組みであるIPW(Interprofessional work 多職種医療人共働)を遂行するには、IPE(Interprofessional education、多職種医療人教育)を基盤とすることが重要である。神戸大学では保健学科と医学科の学生を対象とする新たなIPWカリキュラム開発のためのプロジェクトとして、KIPEC(Kobe University InterProfessional Education for Collaborative Working Center)を発足させた。KIPECではワークショップやセミナーなどを精力的に行なっており、国際的な連携も行なっている。国際機関に従事する医療従事者や海外のIPW実践研究者を招聘する「IPWデイ」は、学生が中心となって企画立案している。
  • 医療系学部の連携による合同実習・教育カリキュラム
    チームビルディングの基盤モデルとして「タックマンモデル」がある。全てのチームは形成期、混乱期、統一期、を経て成果を上げることのできる機能期になるが、組織作りの鍵は迅速に混乱期を通過して統一することであるが、これには相互のコミュニケーション能力と観察力が重要である。
    神戸大学と神戸薬科大学は合同で実習・研修を行なっている。医療系の異なる学部・学科の学生が1つのチームとして実習するほか、チーム討論によりプロダクトを作成するファシリテータ研修を行なっている。本年度は症例からケアプランを作るというPBLトライアルを行なった。多職種の視点からCCUでの治療方針を決めたり、予防と患者教育について議論させる。医療従事者間の連携、専門分野の役割、職種による考え方の相違、自分の意見を言うことの難しさを学んだ、などの感想があった。医学科・保健学科の4年次生と、薬学科の5年次生310名が39チームに分かれて行なうPBLカリキュラムとなる予定である。
  • 病院・大学院医学研究科での取り組み
    一方、病院では妊娠・育児中の医療現場への復帰を支援する「D&Nブラッシュアッププログラム」、医学研究科では開発・実施する「クリニカル・リサーチ・エキスパート特修プログラム (Clinical Research Expert Special Program)」があり、また欧米やアジアの大学での研修プログラムとして「医学科学生海外派遣事業」を実施している。また近畿の国公立・私立の医学・看護学・薬学の大学院研究科が共同して質の高い医師、コメディカルのオンコロジーチームを養成する「6大学連携オンコロジーチーム養成プラン」もスタートした。
    病院の新しいチーム医療活動の取り組みとしては、「職種横断的症例検討会」、多職種でがん患者対応シナリオを作成し演じる「模擬患者参加型セミナー」などが行なわれている。最新知識を貯め込むことが学習の目的ではない。
    薬剤部では、外部評価を日常的に取り入れるようにし、院内の他部門との院外各種組織・団体とのかかわりを持つようにしている。
  • エンターテインメントとしての医療
    医療はエンターテインメントであるという視点も重要で、患者をエンターテインし、患者からエンターテインされるべきである。そうした「エンターテインメントな環境づくり」をしていきたいと考えている。
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 2.プロジェクトとワークショップの説明

講演に引き続き、本学医学研究科・早野順一郎教授より、プロジェクトの概要、およびワークショップについての説明があった。

プロジェクトの概要

プロジェクトは、実際に地域活動に参加する経験を通じて、人間性にあふれたまなざしと社会に通用する実践力を身に付けることを目的としている。従来から医療系学部では様々な地域基盤型学習が行なわれているが、今回の「地域参加型学習」ではさらに踏み込んで、地域ニーズを発見し、学生なればこそできる課題の解決を行ってもらうもので、学生の関わりのレベルが深い。こうした活動を通して社会に通用するコミュニケーション能力を身に付け、チーム医療のための信頼関係の構築を行なってもらいたいと考えている。

学習の方法

学部混成24チーム(1学年10名)が24地域の活動に参加する。プログラムは通年で行なわれ、毎年継続する。活動の中心は1年生であるが、進級しても所属チームをサポートする。授業後、休日、休業中の活動を想定している。遠隔地は大学でマイクロバスの借り上げを行なう他、カメラ、ビデオ、レコーダ、パソコン、血圧計等の活動資材を大学で準備する。

名古屋市内、小地域社会、市外の病院とその地域に分かれて活動し、それぞれ地域の健康・福祉活動、地域の生活と医療およびESD (Education for sustainable development)、病院と地域の関わりを学習テーマとする。学生が活動を通して新たにニーズを見出せば、それも学習テーマとなる。

運営組織と活動の評価

本プロジェクトはAMEC (Allied Medical Education Committee:医療系学部連携教育委員会)と名づけられた教員8名の委員会により運営される。地域参加型学習支援センターを設置してコーディネータ1名および事務員3名をおき、AMEC事務局とする。また学生チームに対し医・薬・看護学部教員が適宜指導にあたる。活動状況はプロジェクトのホームページで公表される。有識者・地域の行政担当者・教育担当理事・カリキュラム委員長・学生代表委員会委員長によって構成される外部評価委員会が設置され、評価が行われる。

プロジェクトのゴール

地域と大学の連携による新しい教育文化の創出を行い、「地域への参加による実践学習」「地域が参加する医療人育成」を目指したい。

本日のワークショップについて

12月から3月の間の学生チームの地域活動プランの作成と実施方法の検討を1時間で行い、その後全体討議にはいる。

3チームが1グループになりグループ討議を行なう。自己紹介の後、学生から司会進行係、記録係(発表資料作成)、全体発表係の三役を選ぶ。

地域の方からは地域でやっていること、できそうな活動案を提案して頂く。この活動プランを検討し、地域ごとの活動プランをA4用紙 1枚にまとめた発表資料を作成する。全体討論ではこの資料をビデオで投影し、1グループ5 分で発表を行なう。

各グループに教員のタスクフォースがついているが、グループ討論のサポート役であり、司会ではない。

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 3.グループ討論、4.全体討論

グループ討論、全体討論
討論会の様子

説明後、活発なグループ討論が行なわれ、その後の全体討論ではグループごとの発表が予定通り行なわれた。

討議内容のまとめは[別紙PDFで開きます]の通り。


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