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お子さんは、親御さんにとって唯一無二の存在であり、かけがえのないものです。また社会にとっても、将来の日本や世界を支えていく子どもたちは重要です。従って、何よりも安全を最優先した診療に取り組んでいます。
それぞれのこどもさんは背景因子や病態が異なっていますので、すべてのこどもさんで同じ病気ならば同じ治療方針というわけにはいきません。到達目標は同じでも、そこに到る径路が異なることは多々あります。迅速かつ慎重な判断に基づき、ひとりひとりのこどもさんにとって最も適切な治療を行っていくことを目標としています。
へこみが、みぞおち(鳩尾、心窩)あたりを中心として見られる場合は”漏斗胸”です。時に鎖骨の間までへこみがあることもあります。真ん中のみぞおちではなく、明らかに左右どちらかにのみへこみがある場合は”胸郭変形”といいます。漏斗胸には家族集積性がみられることがあり、親子3代にわたって漏斗胸であるというご家族もあります。この場合、肋骨と肋軟骨の成長のアンバランスが陥凹の原因となっていると考えられます。また、幼小児期に咽頭扁桃やアデノイドに腫大が起きるのはごく普通のことなのですが、ときに喉の大部分を閉塞するように腫大することがあります。寝息が大きい、強いいびきがある、寝ているときに時々息が止まる、といったことが起きると、胸の中で強い陰圧が発生して前胸壁を引き込み、このために漏斗胸になるということもあります。眠りが浅いと成長にも影響がみられる場合があります。その他に、呼吸音は普通なのに息を吸うときにみぞおちが上がってこない、あるいはかえって引き込まれる、といった状況もあります。これは横隔膜からみぞおちの裏側に強い線維が付着していて、息を吸って横隔膜が下がる際にその線維がみぞおちを内部に引っ張り込むことでへこみができるものです。
普通に生活している人にとって、漏斗胸は身体に対して大きな障害とはなりにくいものですが,人と前胸部が違ってへこんでいることを気にする子は大勢います。友達から指摘されると隠すようになり、性格が内向的になりかねないと言われています。なかには、へこみに水をためて皆の人気者になる子もいますが、まれです。気にし始めるのは多くは幼保の時期です。漏斗胸が自然に改善していく例もみられますが、ごく希です。また、小学校の中学年以降に身長が伸び始める頃からへこみが現れる子もあります。気にするならば、なにか手立てを講じなければ改善が望めないことが通常です。
治療の方法としては、非手術と手術があります。非手術治療は、胸のへこみに大きな吸盤をつけて引き出すものです。これは4才頃からはじめられます。手術治療は、多くは6歳以降で行われます。名古屋市立大学病院の小児外科で行っている「肋軟骨ブリッジ法」では、8〜9歳、体重30kgあたりまでで手術を行っています。この年齢を超えると、胸郭が硬くなって矯正効果が出にくくなります。
幼児期の間に改善しているのかいないのかということは、間隔をあけて胸郭の形を写真にしていかないとわかりません。具体低には年1回の胸部CT検査です。あまりに幼少であると、眠らせないと検査ができません。そこまで幼い時期でなくともよいので、聞き分けのできてくる3歳を過ぎた頃からCT検査を行っています。しかし、いびきがはっきりしている場合は早めにいらっしゃることがよいと思います。漏斗胸ではなくのどの治療をしたほうが良い場合もあり、そういった状況では耳鼻咽喉科とコラボレーションして診療を行っています。
漏斗胸の人で心電図検査において「不完全右脚ブロック」という状況があると言われることは、希ならずあります。心臓には、たくさんの心筋が一斉に収縮するために電気刺激を送るための太い電線のような部分があります。心臓の左右それぞれの心室に入っていくものは、左脚と右脚と呼ばれます。左室は血圧に抗して体全体に血液を送り出すため、遅滞なく休み無く強く収縮しなければなりません。(休み無くと言っても次の収縮までの間に拡張するときには、心筋は休んでいます。)従って左脚の働きは重要です。では右脚はというと、もちろん右室を駆動する電気信号を送っているのですから大切なのですが、左室と違って血液を送り出す先の肺動脈の血圧はずいぶんと低いので、左脚ほど厳密に働かなくてもよいと考えられています。漏斗胸でなくても「不完全右脚ブロック」である人はいますが、通常は経過観察です。漏斗胸の場合は、陥凹の圧迫によって心臓の位置が通常より左側にずれていることが普通です。心電図は、体表の決められた場所に電極をおいて測定しますので、漏斗胸の人の場合は通常、右室側の電極が心臓から離れています。距離が離れているために右室側の電気信号が遅れて電極に届き、「不完全右脚ブロック」の所見を示すものと我々は考えています。ですから、心臓の機能異常が明らかにあるということではありません。
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