名古屋市立大学大学院医学研究科
生体情報・機能制御医学専攻・病態医科学講座  

Research


免疫は、感染症、ワクチン、自己免疫疾患、アレルギー、癌、移植、動脈硬化やメタボリックシンドロームなどの慢性炎症など、ほとんど全ての臨床と関与する学問である。新しい免疫制御法の開発にて、これらの多くの分野の疾患の制御が可能となる。現在では、免疫学が全く関連しない臨床分野はない、といっても過言ではない。本教室では、免疫を制御する制御性T細胞と樹状細胞を利用して、免疫系を自在に制御し、治療に貢献し、患者様の為になる事を目指している。

<研究テーマ>

@制御性T細胞の研究

 制御性T細胞は末梢のCD4+リンパ球の5-10%を占める自己免疫反応を抑制する亜集団として発見された。制御性T細胞が広い意味の自己である癌に対する免疫も抑制している事を私たちは見出した。現在、制御性T細胞による免疫寛容維持の解除による腫瘍免疫誘導が、癌治療に応用され、さらに脚光を浴びている。さらに制御性T細胞は、自己免疫と癌免疫に加え、移植免疫、感染症に対する免疫、アレルギー、動脈硬化などの慢性炎症とほとんど全ての免疫応答を抑制する事が明らかになっている。

     

 樹状細胞は自然免疫と獲得免疫をリンクする大変重要な抗原提示細胞である。私たちは、樹状細胞による抗原提示で抗原特異的な制御性T細胞の増殖誘導が可能である事を見出した。今後、これまでの私たちの基礎実験データに基づき、樹状細胞を利用し、様々な免疫反応を抑制する制御性T細胞を自在に免疫反応をコントロールし、将来治療に貢献する事を目指している。
 1. 樹状細胞によるヒト抗原特異的制御性T細胞の誘導
 2. 紫外線による制御性T細胞の誘導メカニズムと樹状細胞の役割

  


A補体系による異物識別機構の分子論的アプローチとその制御

 自然免疫から獲得免疫に至るまでの反応において補体系は液性因子の主役として機能しており、外界からの異常を瞬時に察知して活性化される生体防御常備軍である。癌や自己免疫疾患は生体内の免疫系のホメオスタシスの崩壊が寄与している一方、感染症は、ウイルス、細菌、寄生虫が体内に侵入し、免疫系からの逃避により発症する。そこで、癌、感染症や自己免疫疾患に対する特異的治療法の確立のため、抗体と補体を駆使した分子標的治療薬の開発を進めている。

二重特異抗体による抗腫瘍効果の増強

  
 分子標的抗体(anti-MUC1mAb)のみではがん細胞に結合できるが補体制御因子により活性が抑えられる(a)。一方、補体制御因子を阻害する抗体のみ(anti-CRP mAb)では、補体制御因子が正常組織にも発現するため、がん細胞に到達するまでに抗体がトラップされ、がん組織において有効濃度を供給しようとすると、正常細胞を破壊し、副作用を引き起こす(b)。そこで、二重特異抗体(bispecific mAb)にすることにより、がん細胞認識機能及び補体制御因子阻害活性を持つため、より強力にがん細胞を殺すことができる(c)。