第9号(平成14年5月)

1.挨拶 医学研究科長 西野仁雄

 実験動物研究教育センターの2001年度の活動をまとめ、年報として発刊する運びとなりました。この一年間のセンターに対する皆様のご理解とご支援、また直接業務に携わっておられる教職員の方々のご努力に、心からお礼を申し上げます。
 毎年、本センターで行われた研究の成果、学会・研究会活動、講習会等、種々の活動をまとめ点検・評価することは、関係の皆様方に本センターについての理解を深めていただく上にも、また過ぎた一年を反省し、来るべき年のあり方を考える上においても大変重要なことです。
 デカルトの「方法序説」、さらにはベルナールの「実験医学序説」の大きな影響をうけ、実証・実験科学として着実に進歩してきた医学は、21世紀の今日、ヒトゲノムの全構造が解明され、生命現象が遺伝子のレベルで説明できるまでに発展しました。この間、医学がもたらした成果には計り知れないものがあります。今後はポストゲノム、プロテオミクスの時代として、より高度で安全な医療の提供が見込まれています。
 しかし今日ほど、確固たる生命倫理と生命哲学の確立が求められる時代は今までにありません。現在さかんに用いられている遺伝子改変技術やクローン技術は、有用であるか否かという観点とともに、善か悪かという観点からも厳しく点検されなければなりません。それは、生命に傷害を加えるという倫理的側面は勿論のことですが、ひとたび適応を誤れば、自然界に取り返しのつかない結果をもたらすこと、神の世界に踏み込むことになるからです。
 医学の研究は動物実験を避けて通れません。本センターを大いに活用し、更なる成果を上げていただくことを祈願いたしますとともに、動物実験は如何にあるべきか、実験動物研究教育センターは如何にあるべきか、という原点に常に立ち帰り、我々の行動を律して行かなければならないと考えます。


2.年報の発刊にあたって センター長 白井智之

本年も実験動物研究教育センター年報を発刊する運びとなりました。本年度から本学 は大学院重点化され実験動物研究教育センターの名称も名古屋市立大学大学院医学研 究科、実験動物研究教育センターとなりました。これに伴い、管理運営規定並びに運 営協議会規定及び運営委員会規定の改正を行ったところであります。改正された規定 は実験動物研究教育センターホームページ上に掲載されておりますのでそちらを御覧 下さい。今回の大学院重点化において大切な点は、大学院重点化により単に当センタ ーの名称が変わったということだけでなく、本学における実験動物研究教育センター の役割がますます重要になったということであろうかと思います。実験動物研究教育 センターは学内共同利用研究施設であり、大学の本務が大学院の教育と研究にシフト したということは、とりもなおさず本学における実験動物研究教育センターの責務が 増大したということであります。実験動物研究教育センターを利用して研究される方 々には更に立派な御研究を行っていただきたいし、実験動物研究教育センターとしま しても全力を挙げてそれを支援する所存であります。更には昨今の国内外における実 験医学研究の方向性を考えますと、遺伝子組換え動物の作製、受精卵の凍結保存な ど、より高度な研究支援体制を築くこともまた実験動物研究教育センターの責務かと 思われます。今後とも皆様の御理解と御支援をお願い申し上げます。


3. 利用状況

(1)各講座月別登録者数
(2)年間月別搬入動物数(SPF、コンベ)
(3)各講座月別搬入動物数
●マウス
●ラット
●ウサギ
スナネズミ、モルモット、ネコ、ブタ
(4)各講座月別延日数飼育動物数
●マウス
●ラット
●ウサギ
モルモット、イヌ、ネコ、スナネズミ、サル


4.沿革

昭和25年4月 名古屋市立大学設置
昭和45年3月 医学部実験動物共同飼育施設本館完成[昭和45年5月開館]
昭和54年3月 医学部実験動物共同飼育施設分室完成[昭和54年7月開館]
昭和55年3月 医学部実験動物共同飼育施設別棟完成[昭和54年7月開館]
昭和55年4月 第一病理学講座 伊東信行教授が初代施設長に就任
平成元年4月 医学部動物実験施設に名称を変更
平成3年4月 小児科学講座 和田義郎教授が第二代施設長に就任
平成3年5月 新動物実験施設改築工事起工
平成4年11月 新動物実験施設完成
平成4年12月 安居院高志助教授が施設主任に就任
平成5年3月 新動物実験施設開所式
平成5年4月 第二生理学講座 西野仁雄教授が第三代施設長に就任
平成5年5月 新動物実験施設開所
平成9年4月 第一病理学講座 白井智之教授が第四代施設長に就任
平成9年5月  医学部実験動物研究教育センターに名称を変更
平成14年4月 医学研究科実験動物研究教育センターに名称を変更


5.構成

センター長        白井智之(併任、第一病理学講座教授)

センター主任(助教授)  安居院高志

衛生技師         宮本智美

業務士          西尾政幸

大学院生         丁 銘、趙 ari

研究員          成 際明

飼育委託     株式会社ラボス

ビル管理委託   日本空調システム株式会社


6.平成13年 行事

2月 6日 平成12年度 第8回講習会

2月19日 センター主催講演会

京都大学大学院医学研究科附属動物実験施設 助手 北田一博 先生

「てんかんモデルラット(SERとNER)における原因遺伝子の同定」

3月 9日 平成12年度 第2回運営委員会

3月14日 平成12年度 第9回講習会

3月16日 平成12年度 第2回運営協議会

4月16日 平成13年度 第1回講習会

4月23日 平成13年度 第1回運営委員会

4月26日 平成13年度 第1回運営協議会

5月 2日 平成13年度 第1回動物実験委員会

5月29日 平成13年度 第2回講習会

6月14日 平成13年度 第3回講習会

7月16日 平成13年度 第4回講習会

8月23日 平成13年度 第5回講習会

9月20日 平成13年度 第6回講習会

9月25日 実験動物感謝式・センター合同歓送迎会

10月13日 センター合同キノコ狩り

11月16日 平成13年度 第7回講習会

12月 7日 センター合同忘年会


7.研究成果

 名古屋市立大医学部実験動物研究教育センターを使用し得られた研究成果のうち、2001年中に公表された論文をまとめた。ここには原著のみを掲載し、総説、症例報告、学会抄録等は割愛した。

第1解剖学講座
第2解剖学講座
第1生化学講座
第2生理学講座
第1病理学講座
細菌学講座
衛生学講座
法医学講座
生体高分子部門
第1内科学講座
小児科学講座
第2外科学講座
整形外科学講座
眼科学講座
泌尿器科学講座
実験動物研究教育センター

8.編集後記

今年も年報第9号を発刊することができました。昨年は情報公開法が施行され、特に国立大学動物実験施設協議会会員校数施設に対し動物実験計画書の開示請求があったということです。現在も再審請求がなされ対応に苦慮している大学がいくつかあると聞き及んでいます。公立大学におきましては、情報開示条例がずっと以前から制定されている自治体が多く、既に何度となく情報開示請求がなされており、今更然程驚く事柄ではないかもしれません。情報開示請求に対応するためには普段から積極的な情報開示に努め、また、開示請求されたときの対応策なども学内で話し合っておくことが肝要かと思います。この年報も情報開示の一環として必要不可欠なものと思いますし、また、当センターにおきましては、年報をホームページ上に掲載し広く市民の皆様にも情報を提供してきたところであり、昨今の情勢からみましても時宜を得た極めて適切な対応であったと自負しているところであります。今後とも学内外の皆様から 御教示を戴き、当センター年報の更なる拡充を図り情報の積極的な開示に努めていく所存であります。今後とも皆様方の御理解と御協力をお願いする次第です。

(安居院)