年報第19号(平成24年10月)

1.挨拶 医学研究科長 藤井 義敬

 実験動物研究教育センター年報第19号の発刊にあたり、まずこの一年間三好センター長のもと、センターの円滑な運営にご尽力いただいたセンター職員の皆様に感謝申し上げます。
医学、医療の発展に動物実験はたいへん重要な役割を果たしています。新薬の最初の試験は動物実験による毒性試験です。それから人(患者さん)での試験に入るわけですが、最近の話題としては、従来抗がん剤投与にあたって癌をわずらった人で行われてきた分子標的薬などの抗腫瘍効果を明らかにする試験に、遺伝子変異を導入した動物が用いられています。まだまだ人の癌は多様性があって遺伝子改変動物だけで抗がん剤の治療効果を予測することは完全にはできません。また薬の効果は最終的に患者さんを対象とした無作為比較の第3相試験において有効性が証明されないと承認されません。しかし薬の臨床応用までの長いみちのりが変わろうとしている流れを感じます。
科学、特に生物学、生化学の進歩も動物実験にその多くを依存しています。我々は3Rをできる限り求めて、in vitroでの実験などで可能な限り動物実験を少なくするよう努力すべきです。また動物実験が必須な場合でも実験計画を十分に練り、必要最小限の動物の犠牲にとどめるよう努力が必要です。また実験計画書などを見ていると、時にこの実験で果たして意味のある結論が導き出せるのか、不安に思うような計画もあります。そんな実験に多くの動物を使っても、その結果は論文として生かされることがなく、したがって貴い動物の犠牲も報われません。十分に検討された必要十分な実験計画が3Rを実現するためにも大変重要です。
動物実験施設の運営、保全にあたられる皆様、今年もよろしくお願い申し上げます。医学研究科もできるだけのサポートをしてまいります。名古屋市立大学から多くの、有意義な研究が発信され、犠牲となった多くの動物の命が有効に生かされるよう望んでやみません。


2.年報の発刊にあたって センター長 三好一郎

 毎年,年報のご挨拶に臨む際,1年間,無事にセンターを維持できたことに安堵致します。当センターでは,現在,主に医学研究科等に属する3百数十名により約180数件の動物実験計画が遂行されております。センターの設備・備品は,老朽化による様々なほころびが顕在化しておりますが,幸いにも大きな事故あるいは事件を起こすことなく御利用頂きました。特に,昨年度は懸案であった飲水滅菌製造装置を更新致しました。ま た,しばしば漏水事故を起こしご迷惑をおかけしておりました4階冷水・温水管も改修致しました。関係者の皆様のご協力並びにご支援に心より感謝申し上げます。一方,平成21年度に飼育経費を値上げ致しましたが,外注経費や床敷および飼料の価格が約4〜15%値上げされたことから,僅か4年しか経過しておりませんが再び飼育費を値上げ致しました。非常に心苦しいことですが,ご負担下さいます利用者の皆様には,ご理解とご協力をお願い申し上げます。
平成24年9月5日,動物の愛護及び管理に関する法律の一部を改正する法律が議員立法として成立致しました。今回の改正では,一部の団体から,動物実験施設の登録制や届出制による動物実験の実態把握や,動物実験の基本原則である3R(削減・苦情の軽減・ 代替)原則の推進などによって,実験動物に関する規制を強化することが求められておりました。しかし,結果的には,実験動物に関する規定を盛り込むこと自体が見送られました。遅くとも5年後には再び見直しが予定されており,同様な要求が高まることは容易に予想されます。基本指針に基づいて自主管理ができているか,自己評価は出来ているかなどを含め,動物実験に関して社会的な理解を確かなものとするために,基本指針・動物実験規定の遵守がますます重要になります。
私どもは,3Rは当然のこと,愛護や福祉を考慮した科学的かつ倫理的な動物実験を通して教育研究を実践するに相応しい環境を提供するために努力を継続してまいる所存です。利用者をはじめ関係諸氏の皆様には,ご指導・ご鞭撻,ご叱責を頂戴し,センターの発展をご支援下さいますようお願い申し上げます。


3. 利用状況

(1)各分野月別登録者数
(2)年間月別搬入動物数(SPF、コンベ)
(3)各分野月別搬入動物数
●マウス
●ラット
●ウサギ
●ハムスター、モルモット
(4)各分野月別延日数飼育動物数
●マウス
●ラット
●ウサギ
●ハムスター、モルモット、マーモセット


4.沿革

昭和25年4月 名古屋市立大学設置
昭和45年3月 医学部実験動物共同飼育施設本館完成[昭和45年5月開館]
昭和54年3月 医学部実験動物共同飼育施設分室完成[昭和54年7月開館]
昭和55年3月 医学部実験動物共同飼育施設別棟完成[昭和54年7月開館]
昭和55年4月 第一病理学講座 伊東信行教授が初代施設長に就任
平成元年4月 医学部動物実験施設に名称を変更
平成3年4月 小児科学講座 和田義郎教授が第二代施設長に就任
平成3年5月 新動物実験施設改築工事起工
平成4年11月 新動物実験施設完成
平成4年12月 安居院高志助教授が施設主任に就任
平成5年3月 新動物実験施設開所式
平成5年4月 第二生理学講座 西野仁雄教授が第三代施設長に就任
平成5年5月 新動物実験施設開所
平成9年4月 第一病理学講座 白井智之教授が第四代施設長に就任
平成9年5月  医学部実験動物研究教育センターに名称を変更
平成14年4月 医学研究科実験動物研究教育センターに名称を変更
平成14年9月 安居院高志助教授が北海道大学教授として転出
平成15年4月 宿主・寄生体関係学 太田伸生教授が第五代センター長に就任
平成15年4月 三好一郎助教授がセンター主任に就任
平成17年4月 実験病態病理学 白井智之教授が第六代センター長に就任
平成19年4月 生物化学 横山信治教授が第七代センター長に就任
平成20年12月 病態モデル医学 三好一郎教授が第八代センター長に就任


5.構成

センター長 三好一郎(併任、病態モデル医学分野 教授)
衛生技師 宮本智美
施設管理員 西尾政幸
飼育委託 株式会社ラボテック
ビル管理委託 日本空調システム株式会社


6.平成23年 行事

1月20日 平成22年度 第9回動物実験規程講習会
2月16日 平成22年度 第10回動物実験規程講習会
4月13日 平成23年度 第1回動物実験規程講習会
5月11日 平成23年度 第2回動物実験規程講習会
5月12日 平成23年度 第1回動物実験委員会
6月15日 平成23年度 第3回動物実験規程講習会
6月21日 平成23年度 第1回運営委員会
6月30日 平成23年度 第1回運営協議会
7月  8日 平成23年度 第4回動物実験規程講習会
7月23日 東海動物実験研究会2011年7月例会
9月14日 平成23年度 第5回動物実験規程講習会
9月27日 実験動物感謝式
10月11日 平成23年度 第6回動物実験規程講習会
10月31日 平成23年度 第7回動物実験規程講習会 (基礎自主研修)
12月12日 平成23年度 第8回動物実験規程講習会


7.研究成果

 名古屋市立大学大学院医学研究科実験動物研究教育センターを使用し得られた研究成果のうち、2011年中に公表された論文をまとめた。ここには原著のみを掲載し、総説、症例報告、学会抄録等は割愛した。