第10号(平成15年5月)

1.挨拶 医学研究科長 横山信治

 実験動物研究教育センター 2002 年度年報の発刊にあたり、一年間のセンターに対する諸兄のご理解とご支援に感謝し、またその管理運営業務に携わってこられた教職員の方々のご努力に、お礼申し上げます。
 名古屋市立大学医学研究科・医学部の実験動物センターは、その開設以来歴史を重ね、現在では文字通り医学研究科の研究活動の中心的施設として、一年 365 日、日夜その活動を続けています。動物実験モデルはこれまでもこれからも、医学生命科学の研究にとって、なくてはならない研究手段であり、遺伝子改変動物などの技術が進歩した現在、その重要性はますます増しております。そして、それとともに、その管理が難しいモデル動物が必然的に増加していることから、また、実験の精度管理の面から、実験動物を行き届いた環境による安定した飼育を維持することは、研究機関として備えねばならない最低条件であります。それとともに、一方では、動物愛護団体による「実験動物の権利擁護」の潮流も無視できないものになっています。こうした意味で、よく管理された実験動物センターは、生命科学の研究機関にとって、欠くことにできないものとなっています。
 名古屋市立大学医学研究科・医学部の実験動物センターは、困難な条件の中で、その任務を十分以上に果たしてきたと言えます。しかしながら、現在の名古屋市の財政事情や、近くに控える大学の「法人化」などの情勢は、当センターにとっても決して安心できる状況とは言えません。しかし、ここが機能不全に陥っては、医学研究科の研究活動に致命的打撃を与えることになります。その意味で、医学研究科の総力を挙げて、このセンターの活動を守る努力が必要だと考えております。
 日常のお忙しいなかで、こうした年報を発行されるスタッフの方々に敬服いたしますと共に、これが継続して発行されることが、その活動の維持に対し、大きな力になるものと確信いたします。
 最後に、長年にわたって当センターの運営に尽力され、平成 14 年度途中から北海道大学に転任されました後も、当センターの維持管理に絶大なご協力を続けて頂けました安居院高志助教授・初代センター主任に、心より感謝いたします。また、センター長として長年責任を果たしてこられた白井智之教授に、感謝いたします。また、安居院助教授の後任として東北大学より着任されました三好一郎助教授・センター主任と新センター長太田伸生教授ののご活躍を期待します。


2.年報の発刊にあたって センター長 太田伸生


 年報第10号の発刊にあたってご挨拶申し上げます。この年報は名古屋市立大学実験動物研究教育センターの平成14年度の利用状況ならびに研究その他の活動実績をまとめてご報告するものです。平成14年度も利用者各位にはルールを遵守したセンターの利用を徹底していただき、多くの研究及び教育の実績を残していただいたことをセンター長として感謝いたします。またセンターの円滑かつ効率的運営には安居院助教授はじめセンター所属の教職員の真摯な努力がありましたことを紙面をお借りして皆様にご報告申し上げます。
 さて、本学医学部の大学院化を受けて研究面での一層の活性化が要求される中、動物実験の重要性は今後益々大きくなるものです。本センターとしてはその支援のために最大限の努力を払って日常業務に当たってきました。しかし一方で、私たちの医学研究の進歩がこれら実験動物の尊い犠牲にたって初めて成ることを常に認識すべきであり、センター利用の方々と共に動物福祉の面で今後とも改善を図っていきたいと思います。幸いに本センターでは明確な基準の下に動物実験が実施され、この年報所載の多くの業績が上がっています。今後もセンター利用者各位のご協力をお願い致します。
 なお、私は平成15年4月より本センター長を命ぜられました。前任の白井教授が本学の動物実験のあり方について一定のルールを確立されたのを受けて、これからも学内の動物実験の適正な実施に努力してまいりたいと思います。また、センター主任として動物実験の指導助言にあたってきました安居院助教授が平成14年度に北海道大学教授に転任しました。安居院先生なしには本センター運営は立ち行かなかったのであり、永年のご苦労にセンター長として感謝する次第です。後任として三好助教授の着任を受け、新体制でのスタートをきることができましたことをご報告致します。
 大学を取り囲む環境の変化が慌ただしく、大学運営も大きな困難に直面する昨今ですが、本センターの運営も今後益々難しい局面を迎えることになります。大学の使命が良質の教育・研究にあるという原点を見失うことなく、医学研究科の共同利用施設としてさらなる活性化を図っていきたいと思います。関係の皆様には変わらずご指導、ご助言を賜りますようにお願い致します。


3. 利用状況

(1)各講座月別登録者数
(2)年間月別搬入動物数(SPF、コンベ)
(3)各講座月別搬入動物数
●マウス
●ラット
●ウサギ
イヌ、ブタ
(4)各講座月別延日数飼育動物数
●マウス
●ラット
●ウサギ
モルモット、イヌ、ネコ、スナネズミ、サル


4.沿革

昭和25年4月 名古屋市立大学設置
昭和45年3月 医学部実験動物共同飼育施設本館完成[昭和45年5月開館]
昭和54年3月 医学部実験動物共同飼育施設分室完成[昭和54年7月開館]
昭和55年3月 医学部実験動物共同飼育施設別棟完成[昭和54年7月開館]
昭和55年4月 第一病理学講座 伊東信行教授が初代施設長に就任
平成元年4月 医学部動物実験施設に名称を変更
平成3年4月 小児科学講座 和田義郎教授が第二代施設長に就任
平成3年5月 新動物実験施設改築工事起工
平成4年11月 新動物実験施設完成
平成4年12月 安居院高志助教授が施設主任に就任
平成5年3月 新動物実験施設開所式
平成5年4月 第二生理学講座 西野仁雄教授が第三代施設長に就任
平成5年5月 新動物実験施設開所
平成9年4月 第一病理学講座 白井智之教授が第四代施設長に就任
平成9年5月  医学部実験動物研究教育センターに名称を変更
平成14年4月 医学研究科実験動物研究教育センターに名称を変更
平成14年9月 安居院高志助教授が北海道大学教授として転出
平成15年4月 宿主・寄生体関係学 太田伸生教授が第五代センター長に就任
平成15年4月 三好一郎助教授がセンター主任に就任


5.構成

センター長        太田伸生(併任、宿主・寄生体関係学教授)

センター主任(助教授)  三好一郎

衛生技師         宮本智美

業務士          西尾政幸

研究員          安居院高志

飼育委託     株式会社ラボス

ビル管理委託   日本空調システム株式会社


6.平成14年 行事

2月 6日 平成13年度 第7回講習会

2月12日 センター主催講演会

信州大学医学部附属加齢適応研究センター・脈管病態分野 助教授 森政之 先生

「Chediak-Higashi症モデルであるベージュラットの原因遺伝子の解析」

4月24日 平成14年度 第1回講習会

4月30日 平成14年度 第1回運営委員会

5月 7日 平成14年度 第1回運営協議会

5月31日 平成14年度 第2回講習会

7月22日 平成14年度 第3回講習会

8月 5日 平成14年度 第1回動物実験委員会

8月20日 平成14年度 第2回運営協議会

8月21日  祝賀送別会

8月28日  センター主催合同祝賀送別会

8月29日 平成14年度 第4回講習会

9月21〜22日センター合同キノコ狩り

9月24日  実験動物感謝式

9月24日  センター主催講演会

パスツール研究所・哺乳動物遺伝学 研究員 真下 知士 先生

  「マウスモデルを用いたフラビウイルス感染に対する宿主側免疫防御機構の解明」

9月24日 平成14年度 第5回講習会

11月8日 平成14年度 第6回講習会

12月2日 平成14年度 第7回講習会

12月 2日 センター合同忘年


7.研究成果

 名古屋市立大医学部実験動物研究教育センターを使用し得られた研究成果のうち、2002年中に公表された論文をまとめた。ここには原著のみを掲載し、総説、症例報告、学会抄録等は割愛した。


8.編集後記

 名古屋市立大学大学院医学研究科実験動物研究教育センターの年報も節目の第10号となりました。今年度よりセンター長は白井智之教授から太田伸生教授に引き継がれ、また、これまで当センター主任であった安居院高志助教授が北海道大学へご栄転された後に私(三好)が着任いたしました。従いまして、今回の年報はほとんどの部分が前任者からのご報告と言って差し支えないように思います。太田センター長のお言葉にもありますように、センターの運営や動物実験のあり方などに方向性を示して頂き、様々な形の実績として残された前任者の皆様に感謝と敬意を表したいと思います。さて,新体制となったセンターではありますが,一方では大学運営自身の変革が求められ将来の見えにくい現状があります。センターの運営も例外ではなく、着任早々それを実感させられることが少なくありません。しかし、センターの職員及び外注業者などのスタッフは日々まじめに業務を遂行しております。厳しい状況下にあっても彼らの日常業務なくして動物実験はあり得ません。我々センターのスタッフ一同は、時代や必要性に応じた研究支援を継続し、福祉面など社会に対応した動物実験を展開するために、共同利用施設としてさらなる活性化を図っていきたいと思います。宜しくお願い申し上げます。

(三好)