Home研究概要

研究概要

sample

本研究室では、これまで主にヒト細胞の遺伝子発現機構と細胞内シグナル伝達系 の制御機構に関する研究を一貫して続けてきました。

これらの実績をもとに、癌・白血病、エイズ、およびリウマチや膠原病などの治療困難な疾患を細胞レベルで見直し、転写およびシグナル伝達調節機構を主な研究対象として最近のヒトゲノムや蛋白質立体構造情報をもとに病態解明を試み、新しい治療法の開発を進めています。





研究課題@ : エイズに関する研究

sample

エイズウイルス感染流行はアフリカや欧米などでは近年頭打ちになってきましたが、日本近隣の東アジアをはじめ世界の各地で依然として増え続けています。ウイルスに対する治療薬の開発により一定の治療効果は得られるものの、ウイルス因子を治療標的とする限り薬剤耐性ウイルスの出現は不可避であり、長期間服薬による重篤な副作用などが重大な問題となっています。原因ウイルスであるHIVの複製の律速段階は転写の過程であり、従来の抗HIV薬は細胞内に潜伏感染しているウイルスには効きません。
私たちはウイルス複製の転写の段階を担うウイルス因子であるTat蛋白質と宿主因子であるNF-kappaBによる転写活性化の作用機構を分子レヴェルで追求し、エイズの発症予防とより有効な治療法の開発を目指しています。特にTat蛋白がHIVの転写を活性化する際に相互作用する宿主細胞の転写伸長因子P-TEFbとの分子間相互作用を分子立体構造解析の立場から電算機を使って解析し、薬剤の探索や分子設計を進めています。また、エピジェネティック制御の立場からHIVの潜伏感染の維持と破綻の分子機構の解明を進めています。

研究課題A : リウマチに関する研究

sample

RAは、慢性的な炎症・免疫応答を背景とし、関節滑膜細胞の異常増殖とそれによって引き起こされる軟骨細胞破壊を特徴とします。炎症の慢性化に伴って転写因子NF-kappaBの恒常的な活性化が起こっています。このような分子過程は多の全身性自己免疫疾患の病態とも共通するものが見つかっています。未だその詳細は未解決ですが、すでにこの活性化過程を抑制する治療戦略が功を奏しています。他方、関節滑膜細胞の遺伝子発現プロフィール解析より、これらの細胞ではある種の「先祖帰り」が起こっていることを示唆する結果を得ました。このことは関節リウマチにおける再生医学的治療の可能性を示唆しています。さらに、NF-kappaBの生物学的作用を網羅的に明らかにする目的でその主要サブユニット蛋白質p65 (RelA)との相互作用因子を同定し、これまでに7個の新しい分子を見つけ、現在もさらに別の分子群を解析中です。また、RAに類似する慢性破壊性多関節炎を起こす遺伝子改変小動物モデルを作成し、発症機構と治療法の開発を進めています。

研究課題B : がんに関する研究

sample

がん発症には炎症や感染および化学発がん物質等が重要な役割を演じています。特にがんと炎症との関係は古くて新しい問題でもあります(「業績」の中の英文および邦文のいくつかの総説を参照のこと)。我々ががんおよび白血病に関心を持つのは、これらの疾患では細胞レベルで上記した転写因子であるNF-kappaBの関与が明白であるからです。実際にNF-kappaBの主要サブユニットp65の遺伝子(RelA)は癌遺伝子c-Relのホモログです。多くの論文で私たち自身が過去に発表してきた様に、NF-kappaBの活性化は細胞の増殖とアポトーシス抑制およびがん細胞の浸潤と転移を促進 します。また、実際にNF-kappaBの活性化過程を抑制することにより、がん細胞を死に追いやることが出来ることもいくつかの論文で実証してきました。上記の項でも述べたp65蛋白の相互作用分子の更なる解明と、蛋白質立体構造解析をもとにした蛋白間相互作用(PPI)を対象とするバイオインフォマティクスなどの計算化学の手法によって分子機構を解析し、新しい治療法 とがん予防法の開発を進めています。

今後の展望

NF-kappaBとその相互作用因子の細胞及び病態における相互作用のダイナミズムの解明を更に進めると共に、これらの研究成果を更に発展させ、こ れらの難知性疾患に対する新規治療法の開発にチャレンジする。 また、構造生物学と計算機科学の手法を適用することによって、NF-kappaBとその相互作用蛋白質との結合のダイナミズムを原子レベルで解明し、将来の治療薬開発のための基礎的情報を得る。更に、公開されたヒトゲノム情報及び生体高分子の立体構造情報をもとに、計算機科学の新たな手法を取り入れて、NF-kappaB とその相互作用因子の間の反応機構を解明すると共に、その過程を阻止しうる化合物の分子設計を進め、実験的な検証を平衡して行うことにより、新しい治療法 を開発する。また、同様の方法を用いてエイズの原因ウイルスHIVの転写活性化因子Tatによる転写活性化の分 子機構を明らかにする。
*使用ツール:Open EyeのソフトウェアやAMBERなど

ページトップへ

MENU

Design by Megapx  Template by s-hoshino.com
Copyright (C) SimpleTmpl009 All Rights Reserved.