第4号(平成9年5月)

1.年報発刊に寄せて 医学部長 和田義郎

 長い間“動物実験施設”として親しまれてきた施設が平成9年4月から“実験動物研究教育センター”と改称されたことは既に皆さまよく御存知のことと思います。毎日の業務内容がただ単に動物実験に明け暮れているわけではなく、医学部学生の卆前(例えば小児科学講義の中で疾患モデル動物について講義していただいています)および卆後にわたっての教育や研究の場として比重が大きくなった現在、いたずらに旧来の名称に制約されずに、実態に即した研究教育センターに変更したいとの主旨で医学部教授会に提案され可決の上、全学の評議会でも承認されたわけです。
 昭和45年に初めて“実験動物共同飼育施設”として誕生し、平成元年に“動物実験施設”となり、そしてこの度“実験動物研究教育センター”と改称されるに至った経過をみれば、それだけでも動物実験が医学研究や医学教育の上でどれ程重要なことになってきているかがよく判ります。と同時に周囲からの期待もまた急速に増大していることもよく判ります。
 各講座や部門の“動物を用いた医学教育・研究”が円滑に行われるような動物の管理・飼育だけを行うのではなく(勿論、上記のことは現在でも重要な機能の1つであることには違いないのですが、これだけでは無く)、それに加えて研究教育センター自身として独自の研究や教育が展開出来るように、そしてそのことがセンターの実績として蓄積し評価されるような整備・運営をはかる必要があります。
 今日の時点では、まだ限られたスペース・設備・マンパワーですから、決して御満足いただけるものとは思っていません。御要望を承りながら逐次改善整備を進めて行きたいと考えます。
この方面の研究では令名高い白井教授・安居院助教授をリーダーとして職員各位の一層の御奮闘をお願いする次第です。


2.年報の発刊にあたって センター長 白井智之

 名古屋市立大学医学部動物実験施設年報第4号を発刊するにあたり一言ご挨拶申し上げます。
新動物実験施設が開所し4年を経過しようとしています。平成9年度から過去4年間活躍されてきました西野仁雄教授に代わって私が施設長を担当することになりました。これまでは利用する立場でしたが、これからはこの施設の管理運営に携わることになり、責任を痛感しています。当施設を活用することによって社会に貢献しうる幾多の研究成果が生まれてきたことは過去の3編の年報から明らかです。これもひとえに過去4年間にわたる西野教授および施設主任の安居院高志助教授らをはじめとする関係各位の努力のたまものと言えます。さて4月からは伊東信行学長、佐々木實医学部長はじめ事務局の関係各位のご努力により業務士に代わって衛生技師のポジションが得られ、すでにそれにふさわしい方が着任しております。施設の運営並びに研究面で今までになかった技術支援も可能になっていくと思います。この動物実験施設は旧動物施設の運営や使用状況をもとに設計され、管理運営されてきました。従って日々刻々と変化する研究内容や方法に対応していく必要も生じています。過去4年間の運営状況を十分に考慮し、改良すべき点を改めながら研究者のニーズに対応できるよう努力しなければなりません。ここで行われる研究が実験に供される動物たちの尊い命のうえに築かれていることを思うとき本施設の健全な運営と発展は必至であります。運営協議会の各位をはじめとする皆さまのご協力を今後とも戴きますようお願い申し上げます。


3.特別寄稿 動物実験施設 森 正直

名古屋市立大学医学部に勤務して27年

 当センターに27年間の長きにわたり勤務してこられた森 正直さんが平成9年3月をもって定年退職することとなりました。そこで森さんに特別寄稿として27年間の思い出を記していただきました。

 私の勤務場所、名称実験動物共同飼育施設。当時新聞に動物マンションと報じられました。当時の動物実験とは日常動物の世話をしながら行うものでした。私の仕事は施設の管理運営等のみと思っていました。ある日一枚のハガキにより上司の先生と勉強会に参加して実験動物、動物実験とは何かを学び内容不明のまま帰りました。
 その後通信教育等により動物実験に関することを学び皆々様の御指導にもかかわらず失策多く、長いようで短い27年間がすぎ、今日に至る事が出来ました。
思い浮かべると動物実験の社会にも色々な事が有りました。政治、経済に多少左右された時もありました。
動物実験から得られる情報は人類の福祉のために重要であり、今後も倫理性を守った形で続けられていく必要があると思っています。


4. 利用状況

(1)各講座月別登録者数
(2)年間月別搬入動物数(SPF、コンベ)
(3)各講座月別搬入動物数
(4)各講座月別延日数飼育動物数
(5) 月別各種動物ケージ占有率


5.沿革

昭和25年4月 名古屋市立大学設置
昭和45年3月 医学部実験動物共同飼育施設本館完成[昭和45年5月開館]
昭和54年3月 医学部実験動物共同飼育施設分室完成[昭和54年7月開館]
昭和55年3月 医学部実験動物共同飼育施設別棟完成[昭和54年7月開館]
昭和55年4月 第一病理学講座 伊東信行教授が初代施設長に就任
平成元年4月 医学部動物実験施設に名称を変更
平成3年4月 小児科学講座 和田義郎教授が第二代施設長に就任
平成3年5月 新動物実験施設改築工事起工
平成4年11月 新動物実験施設完成
平成4年12月 安居院高志助教授が施設主任に就任
平成5年3月 新動物実験施設開所式
平成5年4月 第二生理学講座 西野仁雄教授が第三代施設長に就任
平成5年5月 新動物実験施設開所
平成9年4月 第一病理学講座 白井智之教授が第四代施設長に就任
平成9年5月  医学部実験動物研究教育センターに名称を変更


6.構成

センター長 白井智之(併任、第一病理学講座教授)

センター主任(助教授) 安居院高志

衛生技師 宮本智美

業務士 西尾政幸

大学院生 沈 吉燼

研究員 鄭 且均、杢野容子、成 際明

飼育委託 株式会社ケー・エー・シー

ビル管理委託 日本空調システム


7.平成8年 行事

1月10日 平成7年度第9回講習会

1月31日 平成7年度歓迎会

2月21日 平成7年度第10回講習会

3月 1日 施設主催講演会

 国立感染症研究所 獣医科学部
       主任研究官 松田潤一郎 先生    

「遺伝子ターゲティングによるGM1ガングリオシドーシスマウスの作製と解析−スフィンゴリピドーシスの動物モデル」

3月22日 平成7年度第10回講習会

3月29-31日  施設合同スキー旅行(長野県蓼科高原)

4月 8日 施設合同花見会

4月25日 平成8年度第1回講習会

4月26日 施設合同歓送迎会

4月26日 平成8年度第1回運営委員会

5月13日 平成8年度第1回運営協議会

5月21日 平成8年度第2回講習会

5月28日 平成8年度第3回講習会

6月 3日 平成8年度公私立実験動物施設協議会総会(新潟市、安居院出席)

6月17日 平成8年度第4回講習会

7月17日 平成8年度第5回講習会

7月23-25日 施設合同キャンプ(三重県志摩町)

8月20日 平成8年度第6回講習会

9月24日 実験動物感謝式

9月26日 平成8年度第7回講習会

10月 5日 施設合同登山(三重県御在所岳)

10月24日 平成8年度第8回講習会

11月 1日 平成8年度第2回運営委員会

11月18日 平成8年度第9回講習会

12月11日 平成8年度第3回運営委員会

12月12日 平成8年度第10回講習会

12月17日 施設合同忘年会


8.研究成果

  名古屋市立大医学部動物実験施設を使用し得られた研究成果のうち、1996年中に公表された論文をまとめた。ここには原著のみを掲載し、総説、症例報告、学会抄録等は割愛した。


9.編集後記

 平成9年3月をもって、当センターに27年間の長きにわたり勤務をしてこられた森 正直さんが定年退職されました。当センターがまだ動物舎と呼ばれ、堀建て小屋同然の頃から勤務されいろいろとご苦労が多かったことと思います。現在では当センターは立派な建物となり、近代的な飼育環境となっておりますが、このような発展の陰には恵まれない飼育環境の中でも努力されてこられた森さんのような方々の頑張りがあったからこそと感謝いたしております。有意義な第二の人生を送っていただきたいと祈願しております。伊東学長を始めとする関係方々の御努力により、当センターには替わって衛生技師のポストが付くこととなり、宮本智美が過日着任しました。また、平成9年5月より当センターの名称が動物実験施設より実験動物研究教育センターへと変更になり、文字通り実験動物に関する研究・教育にもセンタースタッフ一同力を入れていく所存であります。共用施設としてのセンターの管理・運営、医学部における実験動物学の研究・教育と、これまで以上の責務が当センターには課せられて参りました。関係方々の御協力を得てこの重大な責務をこなして参る所存であります。

(安居院)