年報第21号(平成26年10月)

1.挨拶 医学研究科長 浅井 清文

 実験動物研究教育センター年報第21号の発刊にあたり、この一年間、センターの円滑の運営にお骨折りいただきました、三好一郎センター長をはじめ、センターの職員の皆様、関係の委員会の皆様に心より感謝申し上げます。
 我々研究者は、自身の立てた仮説を立証するために研究を行う訳ですが、その中で、in vitroで可能な実験は、極力、in vitroで行い、動物実験は、どうしても必要な場合のみとし、いわゆる、3Rをできる限り求め努力すべきです。動物実験に携わる研究者は、自身の研究計画が適切に行われているか、常に自省しながら研究を進めていくことが求められていると思います。
 さて、実験動物研究教育センターが建設されてからすでに20年余を超えました。これまで、このセンターを利用して数多くの研究成果が発表され、医学の発展に寄与してきました。外観は、今も建設当時とほとんど変わりませんが、内部の施設は徐々に老朽化が進んでいます。この間、関係の皆様のご努力で、機器の更新が行われ、高い研究アクティビティが保たれてきました。限りある予算の状況で、本来なら行わなくてはならない機器更新も十分出来ていると言えませんが、今後も、研究のアクティビティを損なうことが無いよう、医学研究科としてできる限りのサポートをして参りたいと考えております。
 今後も、センターの円滑な運営にご協力のほど、宜しくお願い申し上げます。


2.年報の発刊にあたって センター長 三好一郎

 本学に着任以来約10年が経過し,私事ですが,概ね中間地点にさしかかったと認識しております。幸いにも大きな事故を起こすことなくセンターを維持できましたことは,利用者の皆さまをはじめ,医学研究科はもとより本学の関係諸氏の皆様のご協力並びにご支援の賜でございます。ここに厚く御礼申し上げます。
 着任の際,私のやるべき事としてニーズへの柔軟な対応がございました。その一つとして平成21年の春よりコモンマーモセットの繁殖を開始致しました。効率の評価は分かりませんが,5年間で42頭の出産を確認しその内28頭が離乳しました。
 また,高度技術支援として,マウス発生工学的技術支援を実施してまいりました。平成16〜7年にかけて発生したマウス肝炎ウイルス感染事故の復旧の際には大いに機能しましたが,最近は年間60件程度とほぼ定着した観があります。現在までに,系統凍結保存は384件,凍結胚移植は46件,体外受精は141件,こつこつと実績を積み重ねております。先ほどのマーモセットの繁殖事業共々,職員やラボテック・日本空調の皆様,特に手前味噌で恐縮ですが,西尾さんと宮本さんには心より感謝致します。
 当センターは,竣工後,22年目を向かえました。経年劣化により一部の設備等にほころびが見られますが,日常のメインテナンスにより機能不全に陥ることなく業務をこなしております。また,医学研究科並びに本学の皆様のご支援により,大型オートクレイブや飲水滅菌製造装置等が更新されております。しかし,いわゆる施設設備の現状維持に終始している感は否めず,これからの研究成果の発信のためには前向きなインフラ整備が不可欠です。近隣の研究機関では設置済みで本学に足りないものなど,今後克服すべき重要な課題と考えております。
 一方,来年には増税が予定されております。この10年間に既に2度飼育費を改訂し,30数%から80%の値上げを実施しました。再び飼育費の改定を検討せざるを得ないかもしれません。ご負担下さいます利用者の皆様には,ご理解とご協力をお願い申し上げます。可能な限り値上げに抵抗するつもりですが,郡理事長,浅井医学研究科長には先ほどのインフラ整備と併せ,十分にご配慮下さいますよう,強くお願い申し上げます。
 平成22年12月,センター内に新設された病態モデル医学分野は,本年4月北村准教授のご栄転という形で一定の評価を受けたと思います。これから新たな段階に向かって精進致します。適正な動物実験の実施のために,センターの健全な管理運営を目指し,私ども関係者一同は一層の努力をして参る所存です。どうぞ宜しくお願い申し上げます。


3. 利用状況

(1)各分野月別登録者数
(2)年間月別搬入動物数(SPF、コンベ)
(3)各分野月別搬入動物数
●マウス
●ラット
●ウサギ
●ハムスター、モルモット、ブタ
(4)各分野月別延日数飼育動物数
●マウス
●ラット
●ウサギ
●ハムスター、モルモット、マーモセット


4.沿革

昭和25年4月 名古屋市立大学設置
昭和45年3月 医学部実験動物共同飼育施設本館完成[昭和45年5月開館]
昭和54年3月 医学部実験動物共同飼育施設分室完成[昭和54年7月開館]
昭和55年3月 医学部実験動物共同飼育施設別棟完成[昭和54年7月開館]
昭和55年4月 第一病理学講座 伊東信行教授が初代施設長に就任
平成元年4月 医学部動物実験施設に名称を変更
平成3年4月 小児科学講座 和田義郎教授が第二代施設長に就任
平成3年5月 新動物実験施設改築工事起工
平成4年11月 新動物実験施設完成
平成4年12月 安居院高志助教授が施設主任に就任
平成5年3月 新動物実験施設開所式
平成5年4月 第二生理学講座 西野仁雄教授が第三代施設長に就任
平成5年5月 新動物実験施設開所
平成9年4月 第一病理学講座 白井智之教授が第四代施設長に就任
平成9年5月  医学部実験動物研究教育センターに名称を変更
平成14年4月 医学研究科実験動物研究教育センターに名称を変更
平成14年9月 安居院高志助教授が北海道大学教授として転出
平成15年4月 宿主・寄生体関係学 太田伸生教授が第五代センター長に就任
平成15年4月 三好一郎助教授がセンター主任に就任
平成17年4月 実験病態病理学 白井智之教授が第六代センター長に就任
平成19年4月 生物化学 横山信治教授が第七代センター長に就任
平成20年12月 病態モデル医学 三好一郎教授が第八代センター長に就任


5.構成

センター長 三好一郎(併任、病態モデル医学分野 教授)
衛生技師 宮本智美
施設管理員 西尾政幸
飼育委託 株式会社ラボテック
ビル管理委託 日本空調システム株式会社


6.平成25年 行事

平成25年4月24日 平成25年度 第1回動物実験規程講習会
平成25年5月21日 平成25年度 第2回動物実験規程講習会
平成25年6月17日 平成25年度 第1回運営委員会
平成25年7月3日   平成25年度 第1回運営協議会
平成25年7月19日 平成25年度 第3回動物実験規程講習会
平成25年8月2日   平成25年度 第1回動物実験委員会
平成25年8月21日 平成25年度 第4回動物実験規程講習会
平成25年9月24日 実験動物感謝式
平成25年10月1日 平成25年度 第5回動物実験規程講習会
平成25年10月28日 平成25年度 第6回動物実験規程講習会(基礎自主研修)
平成25年11月28日 平成25年度 第7回動物実験規程講習会
平成26年3月19日 平成25年度 第8回動物実験規程講習会


7.研究成果

 名古屋市立大学大学院医学研究科実験動物研究教育センターを使用し得られた研究成果のうち、2013年中に公表された論文をまとめた。ここには原著のみを掲載し、総説、症例報告、学会抄録等は割愛した。