細胞生化学 名古屋市立大学大学院医学研究科・医学部

研究内容

  1. 繊毛の形成機序の解明
  2. 一次繊毛または運動性繊毛のいずれかがほぼ全ての細胞に存在しています。これらの繊毛は細胞外部からの刺激を受信したり、 体内の粘液の流れを作ったりする働きがあります。繊毛の形成には様々なシグナルや転写因子が関わっていて、 非常に複雑なシグナルカスケードによって制御されています。我々は、以前にTGF-βシグナルやLARP6などの複数の因子が 繊毛の形成過程を制御していることを発見し報告しました。

    Fig1

    現在は以下のテーマで研究を進めています。

    1. 繊毛の形成過程におけるTGF-βシグナルの役割を突き止める

    2. RNA結合分子のLARP6が繊毛の形成過程で標的にしているRNAの単離

  3. 繊毛によって制御される分化の機序の解明
  4. 一次繊毛は幹細胞の表面にも認められ、外部からのシグナルを幹細胞内に伝達するために、重要な働きをしています。 外部からのシグナルを受け取った幹細胞はシグナルの刺激に依存した細胞に分化し、様々な組織を形成していきます。 そこで、我々は繊毛によって制御される細胞分化、組織形成の解析を行っています。

    1. 気管支上皮、上衣細胞、卵管などに存在する多繊毛細胞の分化機序

    2. 神経幹細胞の繊毛の役割の解明

    Fig1

  5. 繊毛の異常によって引き起こされる先天性疾患の病態機序の解明
  6. 一次繊毛、運動性繊毛の機能の異常はそれぞれ異なった症状を呈する先天性異常を引き起こします。 これらを総称して繊毛病と呼びます。一次繊毛の異常では、小脳虫部欠損、下部脳幹形成異常、重度精神運動発達遅滞、 網膜変性症、脈絡膜欠損、眼瞼下垂、口腔異常、顔面と指(趾)奇形、肝線維症、嚢胞腎、ネフロン癆など合併し、 運動性繊毛の異常では、慢性副鼻腔炎、気管支拡張症、内臓逆位、男性不妊症、女性不妊症、角膜異常、 網膜色素変性症などを認めます。繊毛病の症例数の報告はまだまだ多くないですが、症状は全身に及び重篤になる ケースが多いです。我々は、繊毛病の病態を解明し、繊毛病患者のQOLの向上を目指した治療の開発の礎になる研究を目指しています。

    1. ジュベール症候群関連疾患の病態解析

    2. 原発性繊毛機能不全症候群の病態解析

    Fig1