第8号(平成13年5月)

1.挨拶 医学部長 西野仁雄

 実験動物研究教育センターの2000年度の活動を総括する年報を発刊する運びとなりました。
 この一年間の、皆様のセンターに対するご理解とご支援、また直接業務に携わっておられる教職員の方々のご努力に、心からお礼を申し上げます。
 デカルトの「方法序説」、さらにはベルナールの「実験医学序説」に端を発した近代医学は、21世紀の今日、ヒトゲノムの全構造がほぼ解明され、生命現象が遺伝子のレベルで説明できるまでに発展しました。この間、医学がもたらした成果には計り知れないものがあります。
 しかし今日ほど、確固たる生命倫理、生命哲学の確立が求められる時代はないと言えます。たとえば、現在さかんに用いられている遺伝子改変技術やクローン技術は、有用であるという観点だけでなく、善か悪かという観点から厳しく点検されなければなりません。それは、生命に傷害を加えるという倫理的側面は勿論のこと、ひとたび適応を誤れば、自然界に取り返しのつかない結果をもたらすことになるからです。
 動物実験は如何にあるべきか、実験動物研究教育センターは如何にあるべきか、という原点に常に立ち帰り、我々の行動を律して行かなければならないと考えます。


2.年報の発刊にあたって センター長 白井智之

 本年報は2000年度の当センターの利用状況、実験動物に関わる諸活動及び研究業績をまとめたものです。センターを活用した多くの研究の成果が論文として発表されました。このような研究成果に対して当センターが貢献できたことがセンター長として大変うれしく思うところです。センター関係各位の日夜たゆまぬ運営と管理のうえに研究者一人一人の規約に則った利用と協力の成果とお礼を申し上げます。年報の作成は、施設の利用状況、諸活動、研究成果を整理し、評価と反省の材料とするとともに、次なる新しい目標を検討する上で大変励みになっています。年報の作成には研究者各位に業績の提出等ご負担を強いている部分があることは十分に承知しておりますが、いずれの研究成果も実験動物の尊い命の犠牲の上に立って得られたものであるという認識と、それに対する感謝の念があれば、何ら苦にならないことと思っています。開所8年を経過しようとしていますが、4年前から名称が動物実験施設から実験動物研究教育センターに改められ、研究と教育に充実した施設としてより一層気の活動をしております。3名の大学院生が安居院助教授のもとで研究をすすめており、医学部学生の基礎配属も定着した感があります。遺伝子改変動物の利用が急速に広がる中で、飼育施設の構造そのものに、時代の流れに対応しきれない面も散見されるようになり、この点には利用者のご不満もあろうかと思いますが、ソフト面での対応に止めざるを得ない現状であります。もちろん動物飼育施設としての運営と環境の維持・改善に関しましてもより一層の努力をおしまない所存です。本センターの健全な運営と発展は必至であります。今後とも運営協議会の各位をはじめとする皆さまのご協力を戴きますようお願い申し上げます。


3. 利用状況

(1)各講座月別登録者数
(2)年間月別搬入動物数(SPF、コンベ)
(3)各講座月別搬入動物数
●マウス
●ラット
●ウサギ
ハムスター、モルモット、イヌ、ブタ、スナネズミ、ネコ
(4)各講座月別延日数飼育動物数
●マウス
●ラット
●ウサギ
ハムスター、モルモット、イヌ、ネコ、サル、スナネズミ


4.沿革

昭和25年4月 名古屋市立大学設置
昭和45年3月 医学部実験動物共同飼育施設本館完成[昭和45年5月開館]
昭和54年3月 医学部実験動物共同飼育施設分室完成[昭和54年7月開館]
昭和55年3月 医学部実験動物共同飼育施設別棟完成[昭和54年7月開館]
昭和55年4月 第一病理学講座 伊東信行教授が初代施設長に就任
平成元年4月 医学部動物実験施設に名称を変更
平成3年4月 小児科学講座 和田義郎教授が第二代施設長に就任
平成3年5月 新動物実験施設改築工事起工
平成4年11月 新動物実験施設完成
平成4年12月 安居院高志助教授が施設主任に就任
平成5年3月 新動物実験施設開所式
平成5年4月 第二生理学講座 西野仁雄教授が第三代施設長に就任
平成5年5月 新動物実験施設開所
平成9年4月 第一病理学講座 白井智之教授が第四代施設長に就任
平成9年5月  医学部実験動物研究教育センターに名称を変更


5.構成

センター長        白井智之(併任、第一病理学講座教授)

センター主任(助教授)  安居院高志

衛生技師         宮本智美

業務士          西尾政幸

大学院生         成 際明、丁 銘

研究員          鄭 且均、趙 ari

飼育委託     株式会社ケー・エー・シー

ビル管理委託   日本空調システム株式会社


6.平成12年 行事

1月25日  平成11年度 第7回講習会

2月8日  平成11年度 第8回講習会

2月15日  センター主催講演会

       名古屋大学医学部附属動物実験施設 教授、西村正彦 先生

         リコンビナント近交系の開発と利用

4月17日  平成12年度 第1回動物実験委員会

4月19日  平成12年度 第1回講習会

4月27日  平成12年度 第1回運営委員会

5月2日  平成12年度 第1回運営協議会

5月25日  平成12年度 第2回講習会

6月22日  平成12年度 第3回講習会

7月26日  平成12年度 第4回講習会

8月2日 センター合同歓送迎会

9月12日  平成12年度 第5回講習会

9月26日  実験動物感謝式

10月24日  平成12年度 第6回講習会

11月27日  平成12年度 第7回講習会

12月20日  センター合同忘年会


7.研究成果

 名古屋市立大医学部実験動物研究教育センターを使用し得られた研究成果のうち、2000年中に公表された論文をまとめた。ここには原著のみを掲載し、総説、症例報告、学会抄録等は割愛した。

第1解剖学講座
第2解剖学講座
第1生化学講座
第2生化学講座
第2生理学講座
第1病理学講座
細菌学講座
法医学講座
分子遺伝部門
生体高分子部門
第1内科学講座
眼科学講座
泌尿器科学講座
実験動物研究教育センター

8.編集後記

今年も第8号(平成13年度版)の年報を発行することができました。当センターでは昨年度から年報は冊子形式とせずホームページ上での掲載のみとしております。年報をホームページ上のみでの掲載とすることは、印刷費の節減、地球環境への配慮(少しオーバーか)などの利点が考えられます。年報がこれまでのように冊子形式ですと、学内の講座、関係諸機関(他大学の動物施設など)に配付されるだけで、広く情報を公開するという目的は達せられておりませんでした。しかし年報をホームページ上に公開することにより、当センターの運営状況・研究成果などが広く市民の方々の目に触れられるようになり、本当の意味での情報の公開がなされたのではないかと思います。研究者の方々のみならず一般市民の方々からも貴重な御意見を賜ることができれば幸いに存じます。

(安居院)