年報第23号(平成28年10月)

1.挨拶 医学研究科長 浅井 清文

  実験動物研究教育センター年報第23号の発刊にあたり、この一年間、センターの円滑の運営にお骨折りいただきました、高橋 智センター長をはじめ、センターの職員の皆様、関係の委員会の皆様に心より感謝申し上げます。
 我々研究に携わる者は、自身で仮説を立て、それを立証するために研究を行うのですが、その中で、実験は、可能な限り、in vitroで行い、動物実験は、どうしても必要な場合のみとし、いわゆる、3R(Reduction;使用動物数の減少、Replacement;動物の代替、Refinement;動物実験の洗練)をできる限り求めていくよう努力すべきです。動物実験に携わる研究者は、さらに、Responsibility(研究者の責任)も加え、4Rを十分考慮し、自身の研究計画が適切に行われているか、常に自省しながら研究を進めていくことが求められていると思います。
 さて、実験動物研究教育センターが建設されてからすでに20年余を超えました。これまで、このセンターを利用して数多くの研究成果が発表され、医学の発展に寄与してきました。外観は、今も建設当時とほとんど変わりませんが、内部の施設は徐々に老朽化が進んでいます。ここ数年で、入退室システムの更新や空調設備の更新行われましたが、関係の皆様のご尽力の賜物と思います。本紙面をお借りし、心より御礼申し上げます。限りある予算の状況下で、本来なら行わなくてはならない機器更新も十分出来ていると言えませんが、今後も、研究のアクティビティを損なうことが無いよう、医学研究科としてできる限りのサポートをして参りたいと考えております。
 今後も、センターの円滑な運営にご協力のほど、宜しくお願い申し上げます。


2.年報の発刊にあたって センター長 高橋 智

 昨年3月からセンター長を務めさせて頂いておりますが、来る11月には次期病態モデル医学講座教授として筑波大学生命科学動物資源センターの大石久史先生が着任されることとなりました。振り返りますと、右も左もわからぬ状態でセンター長を引き継いだにも関わらず、現在までに大きな事故もなく順調なセンター運営ができましたのは、関係者皆様の多大な御協力を頂いた事によると思っております。ここに改めて御礼申し上げます。
 昨年度、名古屋市から予算を計上して頂いて施行しました地下スクリュー冷凍機の更新は無事終了し、順調に稼働しております。更新に関わる予算の確保をして頂きました関係の皆様には、この場を借りて厚く御礼申し上げます。オートクレーブにつきましては現在でも不具合が数回発生し、随時修理を行なって対処しておりますが、そろそろ全面的に更新する時期に来ているのではないかと思っています。また、共同設備に関わる予算の計上も引き続き行っておりますが、十分な成果が出ておらず、御迷惑をお掛けしております。
 ゲノム編集技術の進展により、CRISPR/Cas9手法によって容易に遺伝子改変動物作成が出来るようになっております。次期センター長の大石先生はCRISPR/Cas9手法に精通されており、今後当センターにおいても遺伝子改変動物の作成が増加することが見込まれます。したがって、これらの高度技術支援に対する対応を充実させるためにも、必要に応じた関連した人員および動物飼育スペースの確保が望まれます。
 来年度には動物愛護法が改正される見込みとなっており、動物実験を取り巻く環境はこれまでにも増して厳しい状況になる事は明白であります。その意味でも、各研究者は動物実験を遂行するに当たって3R (Refinement, Replacement, Reduction)の原則を強く意識して行って頂く必要があります。今年度は懸案事項でありました、文部科学省「研究機関等における動物実験等の実施に関する基本指針」に基づいた公私立大学実験動物施設協議会が実施している外部検証プログラムを11月下旬に受審することとなっています。次期センター長の大石先生には着任早々外部検証受審に従事して頂かなくてはなりませんが、受審準備をしてきました身として十分なサポートができるよう尽力する所存でございます。
 センター長として残り短い任期ではございますが、今後もセンターの健全な運営に取り組んでいく所存でございますので、センターご利用の皆様には御指導、御鞭撻を賜りますようお願い申し上げます。


3. 利用状況

(1)各分野月別登録者数
(2)年間月別搬入動物数(SPF、コンベ)
(3)各分野月別搬入動物数
●マウス
●ラット
●ウサギ
●ハムスター、モルモット
(4)各分野月別延日数飼育動物数
●マウス
●ラット
●ウサギ
●ハムスター、モルモット、マーモセット


4.沿革

昭和25年4月 名古屋市立大学設置
昭和45年3月 医学部実験動物共同飼育施設本館完成[昭和45年5月開館]
昭和54年3月 医学部実験動物共同飼育施設分室完成[昭和54年7月開館]
昭和55年3月 医学部実験動物共同飼育施設別棟完成[昭和54年7月開館]
昭和55年4月 第一病理学講座 伊東信行教授が初代施設長に就任
平成元年4月 医学部動物実験施設に名称を変更
平成3年4月 小児科学講座 和田義郎教授が第二代施設長に就任
平成3年5月 新動物実験施設改築工事起工
平成4年11月 新動物実験施設完成
平成4年12月 安居院高志助教授が施設主任に就任
平成5年3月 新動物実験施設開所式
平成5年4月 第二生理学講座 西野仁雄教授が第三代施設長に就任
平成5年5月 新動物実験施設開所
平成9年4月 第一病理学講座 白井智之教授が第四代施設長に就任
平成9年5月  医学部実験動物研究教育センターに名称を変更
平成14年4月 医学研究科実験動物研究教育センターに名称を変更
平成14年9月 安居院高志助教授が北海道大学教授として転出
平成15年4月 宿主・寄生体関係学 太田伸生教授が第五代センター長に就任
平成15年4月 三好一郎助教授がセンター主任に就任
平成17年4月 実験病態病理学 白井智之教授が第六代センター長に就任
平成19年4月 生物化学 横山信治教授が第七代センター長に就任
平成20年12月 病態モデル医学 三好一郎教授が第八代センター長に就任
平成27年3月 三好一郎教授が東北大学教授として転出
平成27年3月 実験病態病理学 高橋智教授が第九代センター長に就任


5.構成

センター長 高橋 智(併任、実験病態病理学分野 教授)
衛生技師 宮本智美
施設管理員 西尾政幸
飼育委託 株式会社ラボテック
ビル管理委託 日本空調システム株式会社


6.平成27年度 行事

平成27年4月20日  平成27年度 第1回動物実験規程講習会
平成27年4月28日  平成27年度 第2回動物実験規程講習会
平成27年5月22日  平成27年度 第3回動物実験規程講習会
平成27年6月17日  平成27年度 第1回運営委員会
平成27年6月18日  平成27年度 第4回動物実験規程講習会
平成27年7月 6日   平成27年度 第1回運営協議会
平成27年7月17日   平成27年度 第1回動物実験委員会
平成27年7月17日   平成27年度 第5回動物実験規程講習会
平成27年8月26日   平成27年度 第6回動物実験規程講習会
平成27年9月17日   平成27年度 第7回動物実験規程講習会
平成27年9月29日   実験動物感謝式
平成27年10月29日 平成27年度 第8回動物実験規程講習会 (基礎自主研修)
平成27年10月30日 平成27年度 第9回動物実験規程講習会
平成27年12月11日 平成27年度 第10回動物実験規程講習会
平成28年3月4日    平成27年度 第11回動物実験規程講習会


7.研究成果

 名古屋市立大学大学院医学研究科実験動物研究教育センターを使用し得られた研究成果のうち、2015年中に公表された論文をまとめた。ここには原著のみを掲載し、総説、症例報告、学会抄録等は割愛した。