年報第17号(平成22年10月)

1.挨拶 医学研究科長 白井智之

 実験動物研究教育センター2009年度年報の発刊にあたり、2009年度の一年間センターの円滑な運営をサポートしていただいた関係各位に感謝申し上げます。このセンターを活用した研究成果が毎年多く世界に発信されています。細胞を用いた研究も大切ですが、in vitroで観察された現象が必ずしも実験動物を用いたin vivoで観察されるとは限りません。むしろ逆の作用が発現されることもあります。ヒト疾患の予防、治療、診断などに大きな貢献を示すためにも、個体を用いた研究は欠かせません。その意味からも当センターの役割は計り知れないものあります。三好一郎センター長のもと山積する各種問題にも取り組んでいただいておりますし、定期的な講習会の開催にもご尽力いただいています。前年まで事務的な仕事に積極的に取り組んでくれていた方が退職されたことから、三好センター長はじめ職員の方にはさらに雑務を含めた事務処理にご苦労頂いています。この件については研究科として早期に解決していかなければならない課題と認識しています。嬉しいことに本年度北村浩准教授が病態モデル医学分野に就任され、センターの運営にも大きな貢献をしていただいています。センター共々病態モデル医学分野の発展を祈ってやみません。改正動物愛護管理法の施行によって全学的に取り組みが必要とされている中、当センターと医学研究科実験動物委員会の果たす役割が非常に重要になっております。本年度は老朽化する各機器の中で、三台の大型オートクレーブを最新のものに入れ替えました。私たちの粘り強い要望を大学本部がご理解いただいた結果です。工事期間には皆様のご理解とご協力さらに三好センター長の細心の計画によって各階の衛生状態も保たれながら3日間におよぶ工事が無事に終了しました。一安心といったところですが、他にも重要な機器の整備や買い換えの必要が迫っています。緊縮財政の中、研究科として精一杯研究に支障が起きないよう努力していく所存です。


2.年報の発刊にあたって センター長 三好一郎

 この1年間, 動物実験規程の施行に伴う動物実験計画書等の諸手続のみならず, センターの経理システムが変更され, センターを利用する皆さまには, ご理解とご協力頂き厚く御礼申し上げます。法令遵守に加えて, 様々な手続きが必要になる例が多く, 今後もHP等によりご案内して行く所存ですので宜しくお願い申し上げます。
 一方, 竣工以来19年目を迎えるセンターは, 経年劣化により, 機能不全に陥る様々な危険性が顕在しております。 幸い, 研究科および全学のご理解とご支援の元, 微生物統御には必要不可欠の大型オートクレイブは3台すべてが更新されました。 また, 飼育室棟の温湿度制御に関する中央監視装置も更新されております。 関係者の皆様に, 心より御礼申し上げます。 しかしながら, 相変わらず漏水事故の原因は根絶できておりませんし, マウスの飼育スペースの慢性的不足は何よりも切実な緊急克服課題です。
 病態モデル医学分野がセンター内に新設されて以来, 約1年半が経過致しました。 本年4月, 理化学研究所より北村浩准教授を迎え, 病態モデル医学分野は新たな展開を始める体制を整えるために努力しております。 センターは病態モデル医学分野と共に, 医学研究教育の推進および動物実験倫理教育のために, コンプライアンスや研究支援により, 適正な動物実験を推進したいと考えております。
 動物愛護法の見直し作業が始まり, 環境省は去る8月10日に「第1回動物愛護管理のあり方検討小委員会」を開催しました。 「平成 18 年6月の改正法施行5年後に当たる平成 23 年度を目途として施行状況の検討を行い, 必要があれば平成 24 年の通常国会において法改正を行う」予定のようです。 環境省が列挙した「制度の見直しにおける主要課題」の中で実験動物に関係が深いものは, 「実験動物の福祉;届出制等の検討(届出制又は登録制等の規制導入の検討)および3Rの推進(代替法,使用数の削減,苦痛の軽減の実効性確保の検討)」です。 現在の動物実験関連法令が緩やかになることは無く, また, 国際的な潮流から鑑みて程度の相違はあるものの現状よりも厳格になることが予想されます。 多様な考えがあるでしょうが, 個人的には, 大きな潮流の中で溺れることなく, 目指す上陸地点を見極めて粛々と準備を進めることが出来ればと願っております。
 センターでは, 教職員の他, 飼育管理会社やビルメインテナンス会社の社員が一丸となって, 人類・動物の生命と健康を守るために, 基本の3Rは当然のこと, 愛護や福祉を考慮した科学的かつ倫理的な動物実験を通して教育研究を実践するために, 機能的で相応しい環境を提供したいと考えております。 また, mailやHPを主要媒体として情報提供を行っております。 地味な体裁ですが, 時宜にかなった情報を発信していきたいと考えておりますので, ご意見やご助言等宜しくお願い申し上げます。


3. 利用状況

(1)各分野月別登録者数
(2)年間月別搬入動物数(SPF、コンベ)
(3)各分野月別搬入動物数
●マウス
●ラット
●ウサギ
●ハムスター、モルモット、ブタ、イヌ、マーモセット
(4)各分野月別延日数飼育動物数
●マウス
●ラット
●ウサギ
●スナネズミ、モルモット、イヌ、マーモセット


4.沿革

昭和25年4月 名古屋市立大学設置
昭和45年3月 医学部実験動物共同飼育施設本館完成[昭和45年5月開館]
昭和54年3月 医学部実験動物共同飼育施設分室完成[昭和54年7月開館]
昭和55年3月 医学部実験動物共同飼育施設別棟完成[昭和54年7月開館]
昭和55年4月 第一病理学講座 伊東信行教授が初代施設長に就任
平成元年4月 医学部動物実験施設に名称を変更
平成3年4月 小児科学講座 和田義郎教授が第二代施設長に就任
平成3年5月 新動物実験施設改築工事起工
平成4年11月 新動物実験施設完成
平成4年12月 安居院高志助教授が施設主任に就任
平成5年3月 新動物実験施設開所式
平成5年4月 第二生理学講座 西野仁雄教授が第三代施設長に就任
平成5年5月 新動物実験施設開所
平成9年4月 第一病理学講座 白井智之教授が第四代施設長に就任
平成9年5月  医学部実験動物研究教育センターに名称を変更
平成14年4月 医学研究科実験動物研究教育センターに名称を変更
平成14年9月 安居院高志助教授が北海道大学教授として転出
平成15年4月 宿主・寄生体関係学 太田伸生教授が第五代センター長に就任
平成15年4月 三好一郎助教授がセンター主任に就任
平成17年4月 実験病態病理学 白井智之教授が第六代センター長に就任
平成19年4月 生物化学 横山信治教授が第七代センター長に就任
平成20年12月 病態モデル医学 三好一郎教授が第八代センター長に就任


5.構成

センター長 三好一郎(併任、病態モデル医学分野 教授)
衛生技師 宮本智美
業務士 西尾政幸
飼育委託 株式会社ラボテック
ビル管理委託 日本空調システム株式会社


6.平成21年 行事

3月16日 平成20年度 第2回動物実験委員会
3月19日 平成20年度 第2回運営委員会
3月26日 平成20年度 第2回運営協議会
4月15日 平成21年度 第1回動物実験規程講習会
4月24日 平成21年度 第1回動物実験委員会
5月28日 平成21年度 第2回動物実験規程講習会
5月29日 平成21年度 第3回動物実験規程講習会
6月26日 平成21年度 第1回運営委員会
7月  7日 平成21年度 第1回運営協議会
7月23日 平成21年度 第4回動物実験規程講習会
9月  9日 平成21年度 第5回動物実験規程講習会
9月12日 東海実験動物研究会2009年9月例会
9月29日 実験動物感謝式
10月21日 平成21年度 第6回動物実験規程講習会
10月31日 市民講座 プリオンから見た食と医療の安全:プリオンはもう怖くないの?-BSEとヤコブ病-
11月  4日 平成21年度 第7回動物実験規程講習会 (基礎自主研修)
11月26日 平成21年度 第8回動物実験規程講習会
12月18日 平成21年度 第9回動物実験規程講習会


7.研究成果

 名古屋市立大学大学院医学研究科実験動物研究教育センターを使用し得られた研究成果のうち、2009年中に公表された論文をまとめた。ここには原著のみを掲載し、総説、症例報告、学会抄録等は割愛した。