年報第16号(平成21年10月)

1.挨拶 医学研究科長 白井智之

 実験動物研究教育センター2008年度年報の発刊にあたり、2008年度の一年間 センターの円滑な運営に対して、関係各位に感謝申し上げます。とくにセンタ ー主任であった三好一郎実験動物研究教育センター特任教授が疾患モデル学病態モデル医学分野の教授として引き続いてセンターの管理・運営にご尽力いた だけることになりました。大変喜ばしいことです。改正動物愛護管理法の施行、遺伝子組換え生物等の使用等の規制による生物の多様性の確保に関する法律の一部改正、さらにはケタミンが麻薬指定になったことによる免許取得の必要性など、動物実験を取りまく環境が大きく変化しました。またこうした法改正に対する全学的な対応の中で、学内規定の整備等が進んでいます。このような状況の変化において医学研究科の当センターの役割は大きく、加えて当研究科の研究者が他学研究科の動物実験の模範となるべく動物を用いた研究を行っていく必要があり、その意味からも皆様のご協力が欠かせません。昨今細胞から生体への研究が益々重要になり、実験動物を用いた研究の必要性が日に日に増している中で、当センターの諸施設の老朽化が大きくクローズアップしてき ました。関係各位の気の休めない管理でしのいでいるのが現状ですが、もはや限界に達しています。使用期限が大きく超えた高額機器にはすでに補修部品もなく、一触即発的な危険水位に達しているといっても過言ではありません。大学当局もこの点についてはご理解を示して頂いていますが、なにぶんにも高額な設備であることから、機器の交換や新規購入は容易ではありませんが、研究科長として、研究に障害が起きないように、また今までの研究財産が失われないように大学当局に働きかけていく決意です。


2.年報の発刊にあたって センター長 三好一郎

 平成20年12月1日付で実験動物研究教育センター長を拝命することになりました。平成15年4月に実験動物研究教育センター(以下,センター)助教授として着任以来,関係の皆様には多大なご支援を賜り,厚く御礼申し上げます。また,併せて病態モデル医学分野がセンター内に新設され,私がその主任を担当することになりました。医学研究教育の推進および動物実験倫理教育のために,センターは病態モデル医学分野と共に,胚操作技術等による研究支援を行うことによって,新に策定された本学動物実験規程や関連法規を遵守し,適正な動物実験を推進したいと考えております。
 動物実験を適正に推進する中心的組織・施設であるセンターでは,現在,主に医学研究科に属する300余名により約250件の動物実験計画が遂行されております。飼育経費の値上げ,あるいは法人化に伴う経理システムの変更など,時間の流れに起因する変革もありますが,私は,センターが機能をより発揮するために運営形態を変えつつあると意識しています。
 一方,竣工以来18年経過したことから,センターの経年劣化は時として顕著に表れ,機能不全に陥る様々な危険性を見過ごせなくなって参りました。幸い,研究科および全学のご理解とご支援の元,微生物統御には必要不可欠の大型オートクレイブは更新される見通しです。改めて,関係者の皆様に,心より御礼申し上げます。しかしながら,それでもなお漏水事故の原因は根絶できておりませんし,何よりも切実な緊急克服課題の一つとして,マウスの飼育スペースの慢性的不足が深刻です。
 センターでは,動物実験の再現性を担保するために,365日24時間,微生物統御や環境統御に腐心しています。さらに実験動物を適正に飼育するために,動物にとっても常に住みやすく不安のない飼育環境を提供するなどの福祉面の向上も命題の一つです。ハード面とソフト面の双方で然るべき飼育環境を備えるべく,努力するつもりですので,更なるご理解とご支援をお願い申し上げます。人類・動物の生命と健康を守るために,基本の3Rは当然のこと,愛護や福祉を考慮した科学的かつ倫理的な動物実験を通して教育研究を実践するために,機能的で相応しい環境を提供したいと考えております。


3. 利用状況

(1)各分野月別登録者数
(2)年間月別搬入動物数(SPF、コンベ)
(3)各分野月別搬入動物数
●マウス
●ラット
●ウサギ
●ハムスター、イヌ、ブタ、モルモット
(4)各分野月別延日数飼育動物数
●マウス
●ラット
●ウサギ
●イヌ、スナネズミ、モルモット


4.沿革

昭和25年4月 名古屋市立大学設置
昭和45年3月 医学部実験動物共同飼育施設本館完成[昭和45年5月開館]
昭和54年3月 医学部実験動物共同飼育施設分室完成[昭和54年7月開館]
昭和55年3月 医学部実験動物共同飼育施設別棟完成[昭和54年7月開館]
昭和55年4月 第一病理学講座 伊東信行教授が初代施設長に就任
平成元年4月 医学部動物実験施設に名称を変更
平成3年4月 小児科学講座 和田義郎教授が第二代施設長に就任
平成3年5月 新動物実験施設改築工事起工
平成4年11月 新動物実験施設完成
平成4年12月 安居院高志助教授が施設主任に就任
平成5年3月 新動物実験施設開所式
平成5年4月 第二生理学講座 西野仁雄教授が第三代施設長に就任
平成5年5月 新動物実験施設開所
平成9年4月 第一病理学講座 白井智之教授が第四代施設長に就任
平成9年5月  医学部実験動物研究教育センターに名称を変更
平成14年4月 医学研究科実験動物研究教育センターに名称を変更
平成14年9月 安居院高志助教授が北海道大学教授として転出
平成15年4月 宿主・寄生体関係学 太田伸生教授が第五代センター長に就任
平成15年4月 三好一郎助教授がセンター主任に就任
平成17年4月 実験病態病理学 白井智之教授が第六代センター長に就任
平成19年4月 生物化学 横山信治教授が第七代センター長に就任
平成20年12月 病態モデル医学 三好一郎教授が第八代センター長に就任


5.構成

センター長 三好一郎(併任、病態モデル医学分野 教授)
衛生技師 宮本智美
業務士 西尾政幸
飼育委託 株式会社ラボテック
ビル管理委託 日本空調システム株式会社


6.平成20年 行事

1月31日 平成19年度 第8回講習会
3月19日 平成19年度 第9回講習会
4月23日 平成20年度 動物実験委員会
4月24日 平成20年度 第1回講習会
5月30日 平成20年度 第2回講習会
6月24日 平成20年度 第1回運営委員会
6月23日 平成20年度 第3回講習会
7月7日 平成20年度 第1回運営協議会
9月16日 平成20年度 第4回講習会
9月24日 実験動物感謝式
9月29日 平成20年度 動物実験委員会
11月4日 平成20年度 第5回講習会
11月14日 実験動物セミナー 「国内外における遺伝子改変マウスバンクの動向とこれらマウスへの生殖工学の応用」
12月18日 平成20年度 第6回講習会


7.研究成果

 名古屋市立大学大学院医学研究科実験動物研究教育センターを使用し得られた研究成果のうち、2008年中に公表された論文をまとめた。ここには原著のみを掲載し、総説、症例報告、学会抄録等は割愛した。