年報第15号(平成20年10月)

1.挨拶 医学研究科長 郡健二郎


実験動物研究教育センター2007年度年報の発刊にあたり、1年間円滑に運営してくださったことに対しまして、センター長の横山信治教授およびセンター主任の三好一郎実験動物研究教育センター特任教授をはじめとする教職員・スタッフの方々のご努力に感謝申し上げます。
最近は改正動物愛護管理法の施行、遺伝子組換え生物等の使用等の規制による生物の多様性の確保に関する法律の一部改正、さらにはケタミンが麻薬指定になったことによる免許取得の必要性など、動物実験を取りまく周辺の環境変化が大きく変化しています。これらに対応すべく、学内規定の整備等を進めてもらっています。
このように動物実験を取りまく社会環境は大きく変化しています。日進月歩の医学研究や生命科学研究の半分以上は動物実験を用いた研究といっても過言ではなく、動物実験の重要性はいまさら言うまでもありませんが、一般社会の共感を得られなければ医学の発展を阻害することになりかねません。動物実験の必要性を理解してもらうためには、科学性・安全性・倫理性に立脚して行うという理念のもとにセンターを運営していかねばなりません。新たな科学技術ならびに実験動物の福祉に対応した施設を実現することが名古屋市立大学大学院医学研究科の発展につながるものと考えております。そのためには、センターのスタッフのみならず、広く医学研究科の皆様方のご協力をお願いする次第です。

ところで実験動物で最も使われるのはネズミで、今年はその子年です。ネズミを使った諺は多く、その中にRats leave a sinking ship(鼠は沈む船を去る)というものがあります。医学研究科も同じで、実験室のネズミが減っていっては業績も上がりません。センターを益々活用して、さらに医学研究を発展されていくよう期待します。

2.年報の発刊にあたって センター長 横山信治


年報発刊に当たり、日頃から実験動物研究教育センターをご利用頂く皆様、また管理運営に携わる全ての方々に、センター長として厚く御礼申し上げます。これを機会に、医学研究科の実験動物研究教育センターに関するいくつかの課題をご報告いたします。

医学・生命科学に関わる動物実験は、生命の尊厳を尊重する国際的な世論の高まりに圧される形で、人体実験に関するヘルシンキ宣言の考え方の普及とそれに沿った制度的整備に匹敵する、いわゆる 3R(refinement, replacement、reduction)(苦痛緩和・代替方法・減数)の考え方が厳しく要求され、それに沿う法的整備が進んでいます。我が国でも動物愛護法の整備以来、動物実験施設を持つ組織はそれに見合う制度的対応の整備が要求されています。名古屋市立大学では、いくつかの研究科に複数の動物実験施設が存在し、これまでは各研究科・学部毎に運営されていました。しかし、こうした法的整備に対応するには全学的な運営形態が要求されており、これに向けて学内の体制整備が進んでいます。従って、2009年度以降は、現在の運営体制(実験計画の申請・審査・検証や、予算の考え方など)に変化が起こる可能性があります。

これと機を一にして、医学研究科では、新しい研究分野として「病態モデル医学分野」開設して、その教授が実験動物研究教育センター長としてその管理運営の責任を負う体制とすることとなりました。そして、このたび、センターの運営主任の三好一郎特任教授がその初代教授として選出されました。これを受けて、医学研究科内のセンター運営に関する組織も改編されることになります。これによりセンターの運営組織が単純化効率化され、研究科の医学生命科学研究の発展にさらに貢献できるようなものとなると思います。

センター利用者の皆様には、こうした施設の現状と意義を深くご理解いただき、当施設が皆様の研究教育にさらにお役に立ちますように、その利用・運営に当たってのさらなるご協力・ご助力を御願い申し上げます。


3. 利用状況

(1)各分野月別登録者数
(2)年間月別搬入動物数(SPF、コンベ)
(3)各分野月別搬入動物数
●マウス
●ラット
●ウサギ
●ハムスター、スナネズミ、イヌ、ブタ、モルモット
(4)各分野月別延日数飼育動物数
●マウス
●ラット
●ウサギ
●イヌ、スナネズミ、モルモット


4.沿革

昭和25年4月 名古屋市立大学設置
昭和45年3月 医学部実験動物共同飼育施設本館完成[昭和45年5月開館]
昭和54年3月 医学部実験動物共同飼育施設分室完成[昭和54年7月開館]
昭和55年3月 医学部実験動物共同飼育施設別棟完成[昭和54年7月開館]
昭和55年4月 第一病理学講座 伊東信行教授が初代施設長に就任
平成元年4月 医学部動物実験施設に名称を変更
平成3年4月 小児科学講座 和田義郎教授が第二代施設長に就任
平成3年5月 新動物実験施設改築工事起工
平成4年11月 新動物実験施設完成
平成4年12月 安居院高志助教授が施設主任に就任
平成5年3月 新動物実験施設開所式
平成5年4月 第二生理学講座 西野仁雄教授が第三代施設長に就任
平成5年5月 新動物実験施設開所
平成9年4月 第一病理学講座 白井智之教授が第四代施設長に就任
平成9年5月  医学部実験動物研究教育センターに名称を変更
平成14年4月 医学研究科実験動物研究教育センターに名称を変更
平成14年9月 安居院高志助教授が北海道大学教授として転出
平成15年4月 宿主・寄生体関係学 太田伸生教授が第五代センター長に就任
平成15年4月 三好一郎助教授がセンター主任に就任
平成17年4月 実験病態病理学 白井智之教授が第六代センター長に就任
平成19年4月 生物化学 横山信治教授が第七代センター長に就任


5.構成

センター長 横山信治(併任、生物化学教授)
センター主任(特任教授) 三好一郎
衛生技師 宮本智美
業務士 西尾政幸
飼育委託 株式会社ラボテック
ビル管理委託 日本空調システム株式会社


6.平成19年 行事

1月11日 センター主催新年会
1月17日 平成18年度 第7回講習会
3月16日 平成18年度 第8回講習会
4月12日 平成19年度 動物実験委員会
4月18日 平成19年度 第1回講習会
5月18日 平成19年度 第2回講習会
6月 1日  平成19年度 第1回運営委員会
6月19日 平成19年度 第1回運営協議会
6月20日 平成19年度 第3回講習会
7月25日 平成19年度 第4回講習会
9月14日 平成19年度 第5回講習会
9月25日 実験動物感謝式
10月30日 平成19年度 第6回講習会
11月 5日 平成19年度 第7回講習会


7.研究成果

 名古屋市立大学大学院医学研究科実験動物研究教育センターを使用し得られた研究成果のうち、2007年中に公表された論文をまとめた。ここには原著のみを掲載し、総説、症例報告、学会抄録等は割愛した。


8.編集後記

今年度も研究科から,マウス飼育棚の更新をはじめ,SPF及びコンベンショナル両実験区域で遠心機及び吸入麻酔装置を設置していただきました。当センターの機能維持・拡充のために絶え間ないご支援を頂き心より感謝申し上げます。
平成18年6月に施行された「改正動物愛護管理法」では,その5年後を目途として,必要に応じて所要の措置を講ずる旨の検討条項が附則となっております。この見直しまでに,実施された動物実験が基本指針に適合しているか否かについて自己点検評価をおこない,更に学外の者等による外部検証を実現するように努めなくてはなりません。また,その延長線上として,透明性を確保する目的で,動物実験に関する規程や自己点検評価,外部検証の結果をホームページ等で公開したいと考えております。
遺伝子組換え動物の利用などにより,飼育動物(ケージ)数はこの10年間で1.6倍以上も増加しました。それに伴い飼育管理業務も増えているにもかかわらず,逆に飼育担当職員の外注経費は削減の一途です。諸物価の上昇も考慮すると,飼育管理に関しては現状を維持するだけでも予算不足に陥ることから,来年度からの飼育経費の値上げは回避できないと予想されます。
私たちセンタースタッフは,本学の研究教育の活性化に貢献するべく,適正な動物の飼育管理および研究環境の整備に努力して参ります。ご理解とご協力のほど,今後とも宜しくお願い申し上げます。

(三好一郎)