研究・技術レポート

研究レポート:論文
[公開日:2012年11月26日]

No. 18 Hepatitis C virus kinetics by administration of pegylated interferon-α in human and chimeric mice carrying human hepatocytes with variants of the IL28B genebr
IL28B遺伝子多型を有するヒトならびにヒト肝置換キメラマウスにおけるペグインターフェロンα投与によるC型肝炎ウイルス減衰効果
Gut. 2012 Nov 7. PMID: 23135762 病態医科学 ウイルス学分野 講師 渡邊 綱正

背景・目的

C型慢性肝炎の治療は、個別化医療(テーラーメイド医療)に突入している。2009年に同定した※C型肝炎のペグインターフェロン・リバビリン(PEG-IFN/RBV)併用療法による治療効果予測因子であるIL28B(2003年に同定されたIFNλ(ラムダ))の遺伝子多型(SNPs)は、新たな治療薬が開発されている現在においても治療効果予測因子である。しかしながら、IFNλがC型肝炎に及ぼす影響やそのSNPsによる作用の違いなど不明な点は多い。C型肝炎治療効果は、生体の自然免疫応答と獲得免疫応答の協調作業と考えられ、本研究では生体応答を明らかとするために獲得免疫応答を除去したSCIDマウスを背景とするヒト肝細胞置換キメラマウスのHCV感染モデルを用いて、自然免疫応答に焦点をあてIL28B SNPsによる治療効果への影響を検討した。

方法

国立病院機構長崎医療センターと名古屋市立大学におけるHCV感染患者(IL28B SNPのMA(n=34)、HE(n=20))のPEG-IFNα治療中HCV-RNA推移を検討した(ヒトゲノム倫理委員承認、書面上での同意)。また、キメラマウスに移植するヒト肝細胞のIL28B SNPをメジャーtype (MA)とヘテロtype (HE)の2系統作成し、HCV持続感染成立後PEG-IFNα投与による血中HCV-RNA 推移を比較した。さらに、ヒトではIFN治療中に採取困難な肝組織をキメラマウスから採取し、インターフェロン誘導遺伝子(Interferon Stimulated Genes:ISGs)及びIFNλs (IL28A, 28B, 29)発現レベルを解析した。

結果

T, B細胞機能不全であるキメラマウスHCV持続感染モデルにPEG-IFNαを投与すると、感染させた3種類のHCV血清によるHCV-RNA titerは異なるものの、いずれの感染源においても移植した肝細胞IL28B SNPによる抗HCV効果に差は認めなかった(図1)。さらに、PEG-IFNα初回投与後の肝内ISGs定量の結果、抗ウイルス作用を示すMxA, OAS1, PKR、さらに病原体関連分子パターン(PAMP)であるTLR-3, RIG-I発現量は、IL28B SNPによる差を認めなかった。しかしながら、肝内IFNλs発現量はMAの方が有意に高かった(P<0.05)(図2)。一方、HCV感染患者のPEG-IFNα投与によるHCV-RNA変動は、IFN投与24時間後までの第1相とIFN投与1週目以降の第2相ともにMAとHEで異なっており、キメラマウスの結果と合わせると、肝内IFNλを介する免疫反応がIL28B SNPのMAとHEで異なる可能性が示唆された。

図1
※拡大図をご覧になるには画像をクリックしてください。

考察

今回のキメラマウスを用いた検討からIL28B SNPによるIFNλを介した肝内免疫細胞、特に樹状細胞(DC)の機能がC型肝炎治療効果に大きく影響する可能性が類推される。今後は、さらなる動物モデルによる解析を含め、獲得免疫の影響を明らかとする予定である。

※IL28Bに関連する報告(Tanaka Y, et al., Nat Genet 2009)
http://www.med.nagoya-cu.ac.jp/w3med/research/reports/results/004.html

研究者 プロフィール

病態医科学 ウイルス学分野 講師 渡邊 綱正
病態医科学 ウイルス学分野
講師 渡邊 綱正

略歴とコメント

1995年 昭和大学医学部卒業、昭和大学藤が丘病院にて研修医・大学院を過ごした後、東京都臨床医学総合研究所で3年間勤務し、C型肝炎を中心としたウイルス学の研究を行う。その後、昭和大学藤が丘病院救命救急センター助教・消化器内科助教として劇症肝炎を含めた肝疾患の臨床に打ち込む。2009年からシンガポール科学技術省ASTARでclinical science、特にB型肝炎に対するヒト免疫応答解析に着手。帰国後、2011年よりウイルス学の田中教授の下、肝炎ウイルスに関するウイルス学ならびに宿主応答に関する研究に着手。今後の目標としては臨床からの視点を生かし、病態解析から新規治療法の確立につながるような研究を行っていきたい。