研究・技術レポート

研究レポート:論文
[公開日:2012年3月1日]

No.5 平成23年度 産科医療功労者 厚生労働大臣表彰 受賞報告
産科婦人科学分野 教授 杉浦 真弓

受賞報告

このたびは産科医療功労者として厚生労働大臣表彰をお受けすることになりました。身に余る光栄と存じます。

私は1990年の緑市民病院在職中から一貫して不育症、習慣流産の臨床研究に取り組んでまいりました。名古屋市立大学は習慣流産研究の伝統があり、その伝統を踏襲して研究を始めました。当時は3回流産すると次は100%流産すると患者さんも私たちも思っており、免疫療法や様々な薬物投与を試みてきました。診療経験を積むうちに必ずしも薬物投与をしなくていいことも判ってきました。

不育症の原因は抗リン脂質抗体、子宮奇形、夫婦染色体異常などと考えられてきましたが、2000年には世界で初めて胎児染色体異常が不育症原因の約半数を占め、過去の流産回数が増えると出産率は低下し、胎児染色体正常流産が増えることを発表しました。また、2004年には夫婦染色体異常を持つ場合、受精卵診断のような高度先進医療に頼らなくても約7割の患者さんが出産に至ることを発表しました。子宮奇形に対して従来は手術を実施すると教科書にも書かれていましたが、2010年に約8割の患者さんが手術なしでも出産できることを発表しました。子供を得るために、ともすれば自分の体を痛める治療に走りがちな不育症患さんに対し、精神的支援を行いながら、より侵襲の少ない、より経済的負担の少ない治療を提供してきました。2010年には治療をしなくても85%の患者さんが出産に至ることを発表し、厚労省の研究助成をいただいて、ポスターを作成し患者さんや医師の啓発に努めました。

また、不妊症も流産も女性の加齢が危険因子であり、20代前半では6%の不妊症が40代では64%になるという、産婦人科医にとって常識的な生殖知識を我が国の一般女性は知りません。キャリア維持のために出産を先送りにして後悔する不妊、不育患者さんが後を絶ちません。最近では、女性の健康週間での市民公開講座において「哺乳類としての妊娠適齢期」という講演を継続して、子どもを持ちたい女性が妊娠能力を失うことがないように啓発活動を行っています。

我が国の周産期医療は世界最高水準を維持し、さらに改善の努力を積み重ねています。これは全国の産婦人科医師、助産師の毎日の努力の積み重ねによるものです。

私が研究を継続できたのも同僚や研究仲間、愛知県の産婦人科医師の支援のおかげと心から感謝しております。また、大臣はじめ厚生労働省の皆様には、私たちの地道な不育症の研究に着目してくださったことに感謝するとともに、今後とも温かいご支援を願ってやみません。

我が国の合計特殊出生率は1.4前後を推移しております。産みたい人が産む。それが真の少子化対策、との信念を持って、今後も研究活動、啓発活動に尽力したいと思います。


プロフィール

産科婦人科学分野 教授 杉浦 真弓
産科婦人科学分野
教授 杉浦 真弓

専門

習慣流産、不育症

略歴

  • 1985年3月 名古屋市立大学医学部卒業
  • 1985年4月 名古屋市立大学医学部産婦人科にて研修
  • 1986年8月 国立浜松病院産婦人科勤務
  • 1987年10月 名古屋市立緑市民病院産婦人科勤務
  • 1993年7月 名古屋市立大学病院産婦人科にて研究に従事
  • 1994年7月 名古屋市立大学産婦人科助手
  • 1999年6月 名古屋市立大学産婦人科講師
  • 2000年4月 名古屋市立大学医学部助教授
  • 2006年1月 名古屋市立大学大学院医学研究科 産科婦人科教授就任

学会

日本産科婦人科学会代議員、日本生殖医学会理事、日本生殖免疫学会理事、日本産婦人科・新生児血液学会理事、日本母性衛生学会理事など

※詳しい研究者情報は本校「 研究者データベース 学内別サイト 」をご覧ください。