研究・技術レポート

研究レポート:論文
[公開日:2012年1月23日]

No.4 平成23年度日本医師会医学研究奨励賞 受賞報告
腎・泌尿器科学分野 講師 安井孝周

受賞報告

本年度の第64回日本医師会設立医学記念大会で、はからずも平成23年度日本医師会医学研究奨励賞を受賞する栄誉に浴しましたので、御礼旁々謹んで報告申し上げます。本賞は、日本医師会会員で、基礎医学・社会医学・臨床医学を通じて医学上将来性に富む研究を行う会員に授与される研究助成として、昭和37年に設けられた賞です。今回までは本学の水野勝義先生、水野信行先生、青木久三先生、白井正一郎先生、郡健二郎先生、村上信五先生、小椋祐一郎先生、杉浦真弓先生といった先輩方が受賞されており、過去に受賞された先生方の輝かしい業績に加え、日本医師会記念大会に参加し、日本医師会の伝統と賞の重みを改めて実感して参りました。ご推薦賜りました藤井医学研究科長、ならびにご指導いただきました瑞友会はじめ多くの先生方に、この場を借りて厚く御礼申し上げます。

受賞の対象となりました研究は、「尿路結石の形成機序における環境要因と遺伝要因からみた病態解明」です。尿路結石は、当教室が中心となり実施した全国疫学調査では、40年前から約3倍に増加していることが明らかになりました。以前は、食事、生活習慣などの環境要因、結石中、尿中の無機物質(シュウ酸、カルシウム等)を中心に研究が行われてきました。当教室では、結石内にわずか数%しか含まれない有機物質(マトリックス)が、尿路結石の形成に重要な役割を担っていると考え、オステオポンチン(OPN)など数種類の物質を同定しました。尿路結石形成の初期段階では、主成分であるシュウ酸カルシウム結晶が腎尿細管細胞と接着し、成長する現象を見いだし、その過程にはOPNが不可欠な物質であることを培養細胞への遺伝子導入と、ノックアウトマウスの作成で証明しました。さらに、OPNには腎結石形成に係わる二つの機能部位(RGD配列、カルシウム結合部位)が存在し、それぞれ結石形成で異なった作用をすることを明らかにするなど、OPNの作用機序を解明してきました。また、結石になる患者さんには遺伝的な要素があると考え、ヒトゲノム遺伝子の解析で、結石患者に特徴的なOPNの一塩基多型を発見し、ゲノムワイド解析に発展させています。将来的には、遺伝子解析で尿路結石のリスクが数値化でき、予防の取り組みに役立つものと期待しています。

現在は、尿路結石のマトリックス、細胞内情報伝達の見地から、分子生物学的手法の応用、遺伝子組み換えマウスなどを用いて、尿路結石形成機序の解明、遺伝子診断法の開発、新規責任遺伝子の同定などを、郡教授の指導のもと、研究グループ一丸となり行っています。

今回の受賞は、教室そして大学全体の将来性をご評価いただいたものと実感しております。今回の受賞を励みに、患者さんのための、いままでとは全く違う結石予防・治療法を開発できるよう、これからも精進して参ります。関係の皆様方には、引き続きのご指導賜りますようお願い申し上げます。


プロフィール

略歴

上田龍三教授
腎・泌尿器科学分野
講師 安井孝周

1994年名古屋市立大学医学部卒業、泌尿器科を専攻し、名古屋市立大学病院、名古屋市立東市民病院で初期研修を行う。1996年名古屋市立大学大学院外科系専攻博士課程に進学し、尿路結石の病態解明について研究を開始する。大学院在学中に、大阪大学医学部病理学研究員となり、尿路結石の研究の傍ら、軟骨発生に係わる転写因子の同定など骨代謝の研究にも従事し、分子生物学を学ぶ。大学院卒業後も尿路結石の研究を継続し、形成機序の解明と遺伝子診断法、予防法の開発を中心に研究を行う。診療では尿路結石の他、泌尿器癌に対する低侵襲治療の開発を中心に行っている。国家公務員共済組合連合会名城病院、愛知厚生農業協同組合連合会海南病院の勤務を経て、2010年4月より名古屋市立大学大学院医学研究科腎・泌尿器科学分野 講師。専門は尿路結石、泌尿器癌、腹腔鏡手術。

受賞履歴

日本医師会医学研究奨励賞、日本泌尿器科学会坂口賞、日本腎臓学会優秀演題賞、日本尿路結石症学会奨励賞、瑞友会(名古屋市立大学医学部同窓会)賞、名古屋桜仁会医学研究奨励賞 等。

所属学会等

日本泌尿器科学会(専門医・指導医)、日本腎臓学会(学術評議員)、日本尿路結石学会(理事)、日本泌尿器内視鏡学会(評議員・腹腔鏡技術認定医)、日本内視鏡外科学会(技術認定医)、日本内分泌外科学会(専門医)、日本骨代謝学会、日本がん認定医機構(がん治療認定医) 等。