研究・技術レポート

研究レポート:論文
[公開日:2009年12月1日]

No.1 第68回日本癌学会学術総会「吉田富三賞」 受賞報告
腫瘍・免疫内科学 教授 上田龍三

受賞報告

本年度の第68回日本癌学会学術総会(会長 広橋説雄 国立がんセンター総長)の総会にて、思いがけず本年度の吉田富三賞を受賞する栄誉に浴しました。吉田富三賞は先生の生誕の地である福島県浅川町にあります吉田富三顕彰会と日本癌学会が近代がん研究の祖と言われる偉大な吉田富三博士(1903-1973)を記念して1992年に設けられた賞です。毎年1名のがん研究者に与えられる学術賞で、今回までは当大学の伊東信行 元学長が平成8年に発がんの研究功績にて受賞されるなど、全員がんの基礎研究者に授与されております。

私の受賞理由は「ATL(成人T細胞性白血病)をはじめとしたT細胞性血液がんに対する独創的抗体療法の基礎研究成果を臨床研究で証明し、我が国における腫瘍免疫療法発展に大いに貢献した。」となっております。大学卒業後40年一貫して、がん臨床及びがん研究に没頭してきました。特に抗体に関するがん研究は1975年にモノクローナル抗体の作製法がScienceに発表された際、私はこの方法は従来のがん研究の行き詰まりをブレイクスルーするものと衝撃を受けたものでした。以来、研究する場所こそ、ニューヨークのスローン・ケタリングがん研究所、愛知がんセンター研究所、当名市大の内科と変わっても、自分の研究テーマは愚直に抗体を用いた血液がん、腎臓がん、肺がんの解析、診断、治療で継続してきました。特に、今回の受賞理由とされたATLの治療研究はすべて名市大に奉職して以後教室員と一緒に前臨床研究を積み重ね、本邦で最初のがんに対する抗体療法の臨床第I相試験に成功したものであり、これが評価されたことを本当に嬉しく思います。臨床試験では期待以上の結果が得られており、現在標準療法がないATLの患者さんに一日も早く福音がもたらされることを教室員全員で夢見ております。

今回の受賞を機に患者さんのための臨床研究を一層進展させたいと思っております。


プロフィール

上田龍三教授
上田龍三教授

1969年名古屋大学医学部卒業、合同内科に入局、大同病院、岐阜県立多治見病院にて初期研修、1972年名古屋大学第一内科に入局して、血液内科を専攻。白血病の化学療法、創生期の骨髄移植を手掛ける。1976から1980年までニューヨークのスローン・ケタリング癌研究所にてDr. Oldのもと腫瘍免疫を学ぶ。特に患者血清と患者さんの培養細胞を用いて腎臓がんの腫瘍抗原の探索、解析する傍ら、モノクローナル抗体を作成して腫瘍抗原の同定に没頭する。1980年帰国し、愛知県がんセンター研究所化学療法部に勤め、白血病・リンパ腫、肺がんの発がん機序、診断・治療研究を行う。1995年名古屋市立大学第二内科教授に就任。2003年から4年間大学病院長。2007年から腫瘍免疫内科(名称変更)教授、2010年3月には定年退職予定。2008年から名古屋市病院局長を拝命、名古屋市立5病院の改革に着手している。

主な学会関係としては、癌学会(副理事長、第67回癌学会学術総会会長) 臨床腫瘍学会理事、癌治療学会評議員、内科学会(東海支部長、評議員、元理事)血液学会(評議員、元理事)などを歴任。専門は血液学、臨床腫瘍学、特に化学療法、分子標的治療法の開発研究。

現在、日本学術会議連携会員、文部科学省がん研究特定研究のがん治療領域代表 、文部省がん特定研究総括班員。また、文部科学省の学術審議会専門員。厚生労働省の厚生科学審議会専門員を委嘱されている。