オープンカレッジのご案内


健康科学講座   オープンカレッジ   2011年第3期のご案内。

No.3「DNA多型-個人識別から臨床応用まで」

[開講日程]平成23年11月18日(金)〜平成24年1月20日(金)
[コーディネーター]医学研究科 法医学 教授 青木康博
遺伝子の本体であるDNAはヒトを始めとする生物が生きていくため、子孫を残すために重要な物質ですが、ヒトそれぞれのDNAには差異があって、それを用いて個人を厳密に識別することが可能であり、犯罪捜査や身元の確認等に利用されています。またその差異によりヒトをグループ分けすることを通じ、ヒトの起源に関する論争に大きな影響を与える一方で、薬剤感受性や疾患感受性の違いを見出し、治療や予防に利用するという試みも盛んになされるようになりました。本コースでは、DNA多型およびその検出法の原理を学び、その応用としてのDNA鑑定、ヒトの系統解析および臨床応用の実際を知り、さらにその能力や限界について考察します。

第1回   11月18日(金)

DNA多型概論

医学研究科 法医学 教授 青木康博
DNAは我々の身体を形作り、機能を発現させるタンパクの設計図ですが、突然変異などによりその塩基配列にはさまざまな差異が生じます。突然変異はDNAをコードする領域にもそうでない領域にも生ずるため、それが疾患感受性や薬剤感受性に関わるだけでなく、信頼度の高い個人識別の指標となったり、ヒトの系統を解析する手段として利用されます。ここでは導入として、多型現象の成因などについて概説するとともに、その研究・実務への利用法を紹介致します。

第2回   11月25日(金)

法医学におけるDNA鑑定の歴史

三重大学大学院医学系研究科 法医法科学 教授 那谷雅之
1985年に英国レスター大学の遺伝学者ジェフリーズがDNAフィンガープリント法を用いた個人識別、親子鑑定を報告したのがDNA鑑定の始まりです。その驚異的な能力は注目を浴びましたが、DNA鑑定が現在のように普及したのは遺伝子の特定領域を特異的に増幅させるPCR法の登場以来です。そのPCR法を用いたDNA鑑定方法も次々と新しいものが開発され、現在ではSTRと呼ばれる短い反復配列を検出する方法が主流となっています。DNA鑑定登場から現在までの鑑定の歴史をお話します。

第3回   12月2日(金)

DNA鑑定による個人識別

医学研究科 法医学 教授 青木康博
DNA型は現在、指紋・歯科所見と並んで特定個人を識別法として医学的・科学的に認められています。一方で、DNA鑑定結果の評価について紛糾する事態などが生じていることも事実であり、その背景には、DNA鑑定の社会的利用や、確率・統計的意味についての合意の形成の問題があると言えます。DNA型は身体のどの細胞からも同一の情報が得られることや、本人だけではなく、血縁者の識別も可能であるという特徴を有するため、犯罪鑑識や身元確認作業において広く利用されていますので、それらの例を紹介するとともに、その評価法や問題点について概説します。

第4回   12月9日(金)

ミトコンドリアからみた日本人

医学研究科 法医学 講師 加藤秀章
ヒトが持っている遺伝子(DNA)には、自分自身の遺伝情報が記されているだけでなく、そのヒトの祖先の情報をも記されています。すなわち、あるヒトのDNAを調べることで、そのヒトの祖先を辿ることができます。ヒトの細胞の中にはミトコンドリアという小器官があります。ミトコンドリアDNAは母親のみからその子供に受け継がれていきます(母系遺伝)。ミトコンドリアDNAの遺伝子配列を調べることで、ヒトの母系の先祖を遡ることができます。また、最近ミトコンドリアのグループと疾患との関連が次々と明らかとなってきました。ミトコンドリアの解析から日本人のルーツを考えてみます。

第5回   12月16日(金)

日本人は2つにわかれる

名古屋市立大学病院 臨床試験管理センター 助教 西山 毅
人類学の研究結果より、日本人は縄文系と弥生系の2つの集団からなることが従来より提唱されてきました。近年、膨大な数の遺伝子型を測ることが可能になったため、こうして測った遺伝子型データをもとに、日本人集団がいくつの分集団から構成されるかを調べることが可能になり、沖縄および奄美諸島の住民は、本土住民と遺伝的に分化していることが示されました。こうした研究の結果から、日本人集団の成り立ちについて明らかになった点を説明します。

第6回   1月6日(金)

ウイルス性肝炎と遺伝子多型

医学研究科 ウイルス学 教授 田中靖人
近年、ゲノムワイドに均一に配置された約90万箇所の一塩基多型(SNPs)を一括タイピングする技術が開発され、病態進展に多因子が関与すると想定されてきたⅡ型糖尿病、クローン病、B型慢性肝炎などにおいて疾患感受性遺伝子が同定されました。このゲノムワイド関連解析により、C型慢性肝炎に対するペグインターフェロン+リバビリン併用療法の有効性に関連するIL28B遺伝子多型、さらにはリバビリンに起因する貧血に関連するITPA遺伝子多型が相次いで発見されました。特に、IL28B遺伝子検査は先進医療にも認可され、テーラーメイド医療として期待されています。

第7回   1月13日(金)

小児疾患と遺伝子変異・遺伝子多型

医学研究科 新生児 小児医学 教授 齋藤伸治
先天性疾患や知的障害、自閉症などの小児疾患では遺伝要因が大きな役割を果たしています。遺伝学の観点から考えると、遺伝子の変異や多型は多様性の基盤であり、進化や種の存続のために必須の分子機構です。ヒトも例外ではありません。ひとりひとりの顔や性格が異なっているという多様性も同様の原理に従っていますが、一定の範囲を逸脱した場合に疾患として認識されることになります。今回の講義では実際の小児での疾患を例にして、遺伝子変異や多型と疾患との関係を考えたいと思います。

第8回   1月20日(金)

マイクロサテライトからみた東・東南アジアの人々の遺伝的関係

名古屋大学大学院医学系研究科 法医・生命倫理学 准教授 山本敏充
法医学分野で個人識別や血縁関係を調べる際に、常染色体上の4塩基リピートのマイクロサテライト(STR: short tandem repeat)を遺伝マーカーとした、蛍光標識プライマーによる市販のマルチプレックスキットが利用され、世界中で汎用されています。私たちは市販のキットに含まれる座位とは連鎖しない6個のSTRを一度に型判定でき、低分子化したDNA試料にも応用可能なマルチプレックスを2002年に開発しました。これを応用した鑑定例を含め、様々な鑑定例を紹介します。また、常染色体上にほぼ均等に分布する4塩基リピートの105座位のSTRを用いて、日本国内や、東・東南アジアの地域ヒト集団について解析した結果なども紹介します。