オープンカレッジのご案内


健康科学講座   オープンカレッジ   2011年第2期のご案内。

No.2「名市大発の新医療へ向けて(モデルを用いた挑戦)」

[開講日程]9月9日(金)〜11月4日(金)
[コーディネーター]医学研究科 病態モデル医学 教授 三好一郎
私たちは,最先端の医療を提供する目的で,生命の仕組みを理解し病気の原因を解明する研究を行い,さらに新たな診断・治療法を開発しています。また,優れた医師を養成するために多様な教育方法を実践しています。医学はヒトを対象としますが,研究の過程や教育では,他の動物やモデルで得られた結果をヒトに外挿したり,シミュレーション可能なことが知られています。本コースでは,モデルを用いた独創的な挑戦として,癌の治療,および,脳卒中等の脳血管疾患の治療,重症心疾患の治療(心移植),ウイルス性肝炎の治療に加え,医学教育を含めて名市大から発信する新たな医療をご紹介致します。多くの皆様のご参加をお待ちいたしております。

第1回   9月9日(金)

動物実験の役割と実験動物福祉

医学研究科   病態モデル医学   教授   三好一郎
動物実験は,人類や動物の健康と幸福に欠かせないものと考えられます。しかし,生きとし生けるものすべての生命の尊厳を尊重することと相反するわけではありません。再現性の高い良質な動物実験を追究することと実験動物の福祉を求めることは,矛盾しないどころかむしろ相乗効果をもたらす関係にあります。本学では,法律や文部科学省の基本指針を遵守し,3Rの基本原則(代替および使用動物数の削減,苦痛の軽減)に則り,科学および動物愛護の双方の観点から適正な動物実験を自主・自律的に実施しています。この講義では,私共の動物実験倫理の取り組みをご紹介致します。

第2回   9月16日(金)

磁場を用いたがんに対する新しい温熱治療

医学研究科   腎・泌尿器科学   講師   河合   憲康
磁場の中で発熱する磁性微粒子を腫瘍組織に注入し,磁場照射により腫瘍組織のみ45℃以上に上昇させる新しい温熱治療を開発しました。ラットやマウスでの動物実験では悪性黒色腫,大腸癌,骨肉腫など様々な癌腫,また泌尿器系癌については前立腺癌に対する治療効果が確認されました。研究途中で,ラット神経鞘腫では同一個体で磁場組織内加温法を実施していない腫瘍まで退縮することが認められ,温熱免疫の賦活化により臨床段階では転移巣の治療への可能性も示されました。現在,前立腺がんに対する臨床試験として準備を進めています。

第3回   9月30日(金)

脳卒中治療法開発とモデル動物

医学研究科   脳神経外科学   病院教授   間瀬   光人
脳卒中(脳梗塞,脳出血,くも膜下出血)は我が国における三大死因の一つです。脳卒中において予防が大切であることは言うまでもありませんが,発症してしまった脳卒中に対しても後遺症を少なくするための治療法の開発が日々行われています。それは新薬,新しい手術法,医療機器,医療材料の開発ですが,その有効性がヒトで証明されて初めて一般的治療として導入されます。そのために必ず通らなければならないのが動物を用いた治療法の有効性に関する研究です。この講義では最新の脳卒中治療とそれを支えてきた脳卒中モデル動物について概説致します。

第4回(1)   10月7日(金)

腫瘍溶解性ウイルスによる新しい癌治療

名古屋市立大学病院   化学療法部   助教   森   義徳
癌の治療において抗癌剤などの単独での治療効果には限界があり,集学的治療の重要性が認識されてきています。正常な細胞には害を与えず,癌細胞に特異的に感染する腫瘍溶解性ウイルスによる癌治療,すなわち癌ウイルス療法は癌治療における新たな選択肢の一つと考えられています。現在,欧米ではこの一つである腫瘍溶解性レオウイルスを用いた臨床試験が進められています。今回の講義では腫瘍溶解性レオウイルスによる癌治療の概説を行い,我々が行っている実験について紹介します。

第4回(2)   10月7日(金)

がん治療を目指した細胞老化誘導の分子機構の解明

医学研究科   細胞生化学   講師   島田   緑
生物のもつ遺伝情報DNAには恒常的に放射線や紫外線,化学物質などによって傷が入っています。そのようなDNA損傷に対して生物は複数の防御機構(チェックポイント,DNA修復,アポトーシス誘導,早期細胞老化)を持っており,これらの防御機構の破綻は発癌や様々な遺伝子疾患をもたらします。我々は細胞内にある特定の酵素が,DNA損傷をいち早く察知し,がんの発生・増殖を防いでいることを見出しました。その酵素を中心に細胞増殖と細胞老化の分子機構を解明し,腫瘍化を防御する手法の確立を目標とした最近の成果を報告致します。

第5回   10月14日(金)

脳内出血および脳性小児麻痺の基礎医学研究:まずは病態モデル動物の開発から

医学研究科   脳神経生理学   教授   飛田   秀樹
脳内出血(ICH)の発症率は非常に高く,運良く生存した人でもその後遺症に悩む人が多くいらっしゃいます。保存的治療法が中心となり,より積極的な治療法はいまだ確立されていません。一方,低体重出生未熟児に好発する脳室周囲白質軟化症(PVL)の病因として,稀突起膠細胞の前駆細胞が選択的に虚血に弱いことが報告され,その病態が明らかになりつつあります。我々は,より良い医療の確立を最終目的としその基礎医学研究を進めていますが,疾患の病態を反映する動物モデルの存在が非常に重要であると実感しています。本講義では,内包部近傍の小出血で大きな運動麻痺を示す内包ICHモデル動物とPVLモデル動物の開発過程,またモデル動物を用いた基礎実験研究の成果を紹介致します。

第6回   10月21日(金)

異種心移植と人工心臓 ―重症心疾患への役割―

医学研究科   心臓血管外科学   病院教授   浅野   實樹
薬剤療法や電気的な心臓再同期療法などにより心不全に対する治療は目覚ましい進歩を遂げていますが,末期重症心不全にたいする唯一の根治術は心臓移植といえます。有効な治療であるにも関わらず多くの移植適応患者がその恩恵に与れない大きな要因は深刻なドナー(臓器提供者)不足にあります。この問題を解決する一法として異種の動物をドナーとする異種心移植が以前より考えられていますが,同種心移植以上に超えなくてはならない高いハードルがあることも事実です。今回は,これらのハードルを越えるために考案施行された実験モデルをご紹介するとともに人工心臓との対比を交えながら異種心移植の臨床的現実性を考えてみたいと思います。

第7回   10月28日(金)

ヒト肝臓を持つキメラマウス~肝炎モデル

医学研究科   ウイルス学   教授   田中靖人
肝臓は大人になっても再生能力を持つ臓器として知られ,様々な代謝を司る重要な臓器です。近年,ヒト肝細胞をもつキメラマウスが開発され,医薬品開発におけるヒトの薬物動態やヒトの肝細胞に感染して病原性を発揮するB型肝炎ウイルスやC型肝炎ウイルスの感染モデルとして利用されるようになりました。肝炎ウイルスは,ヒトに感染すると,急性肝炎を発症し,その一部は慢性肝炎から肝硬変,肝がんに至ることが知られていますが,詳細は明らかにされていません。ここでは,肝炎モデルを用いた病態進展メカニズムの解明及び肝炎に対する新たな治療薬の開発について話題提供します。

第8回   11月4日(金)

患者モデル人形を用いたシミュレーション医学教育について

名古屋市立大学病院   救命救急センター   助教   増田   和彦
近年医学部における医学教育では,様々な教育手法やカリキュラムなどが考案され,それをもとにした教育が広く行われています。とくに蘇生教育において,約10年前より患者モデル人形を用いたシミュレーション教育が行われるようになり,数年前からは蘇生教育のみならずその他の臨床分野においてもシミュレーション教育の手法が導入されてきております。そこでシミュレーション教育について,また患者モデル人形をご紹介するとともに,シミュレーション教育の臨床応用についての取組みをご紹介します。