オープンカレッジのご案内


健康科学講座   オープンカレッジ   2011年第1期のご案内。

No.1「炎症と再生」

[開講日程]6月10日(金)〜7月29日(金)
[コーディネーター]医学研究科 機能解剖学 教授 池田一雄
炎症は、古典的には、発赤、発熱、腫脹、疼痛を伴うものとして知られ、その原因は感染、外傷、毒性物質の暴露、自己免疫の破綻など様々であります。この様々な原因に対して生体の細胞、組織が応答し、組織修復、再生によって恒常性を維持するようにと反応しているのです。また、古くから炎症の遷延化により癌が引き起こされることが疫学的に知られてきましたが、最近の医学の進歩により、C型肝炎と肝臓癌、ピロリ菌感染と胃癌、慢性潰瘍性大腸炎と大腸癌など、分子レベルでそのメカニズムが明らかになってきました。このコースでは、基礎と臨床の両面から、この炎症と再生に焦点を当て、解説いたします。是非、多くの皆様のご参加をお待ちいたしております。

第1回   6月10日(金)

炎症の基礎

医学研究科   臨床病態病理学   教授   稲垣宏
炎症は日常よく遭遇する変化ですが、その仕組みはなかなか複雑です。炎症は、障害因子および障害された組織に対して起きる生体の局所的防衛反応と定義されます。この反応は単一な病態ではなく、微少循環系を中心として、ある一定の反応経路が連鎖的に展開される仕組みになっています。炎症は本来,自己防衛的なものですが,自己組織に対して障害的に働く場合もあります。本講義では、基本的な炎症過程や炎症により障害された組織の再生過程を分かりやすく解説し,炎症と関連するいろいろな臨床病態について解説いたします。

第2回   6月17日(金)

炎症応答の引き金を引く「分子スイッチ」とリウマチ・膠原病の発症機構の研究からがん・白血病治療の展望が見えてきた

医学研究科   細胞分子生物学   教授   岡本尚
炎症応答には種々のサイトカイン、細胞接着分子、細胞増殖因子など極めて多数の生体分子が参画しています。私たちはこれらの遺伝子の発現調節機構を分子レベルで追究してきました。特に、NF-κBと呼ばれる転写因子が総括的で重要な働きをしています。NF-κBは細胞の外部からのシグナルによって活性化されますが、これらの反応の制御がリウマチ及び自己免疫疾患の治療につながることがわかりました。興味深いことに、同様の分子機構が悪性腫瘍の進展と拡散にも関与していること、また同様の治療法ががんや白血病にも有効であることが明らかになっています。

第3回   6月24日(金)

Helicobacter pylori感染と胃炎,胃潰瘍,胃癌の発生

名古屋市立大学病院   内視鏡部   准教授   片岡洋望
1983年、それまで無菌とされてきた胃にヘリコバクター・ピロリ菌が発見され、発見者のWarrenとMarshallは2005年ノーベル医学生理学賞に輝きました。わが国では昨年、胃・十二指腸潰瘍に加えて、胃癌、MALTリンパ腫、特発性血小板減少性紫斑病に対するピロリ菌除菌の保険適用が厚労省により追加され、ピロリ菌は広く知られる存在となっています。本講義では、ピロリ菌による胃炎惹起のメカニズム、慢性胃炎をベースに発生する胃潰瘍、胃癌の病態、さらに最新のピロリ菌の診断法・治療法について解説します。

第4回   7月1日

関節リウマチの病態と治療

医学研究科   整形外科学   病院教授   小林正明
関節リウマチは代表的な自己免疫疾患であり、全身疾患であるが、関節滑膜に炎症の場の主体があるため関節の疼痛、腫脹、可動域制限をきたし、進行すると関節破壊、関節機能障害が著明になり、日常生活動作を初めとして多くの障害をきたします。その治療には、基礎療法、薬物療法、手術療法、理学療法などがありますが,最近の薬物療法の進歩は目覚ましいものがあります。今回は、手術療法、薬物療法を中心に関節リウマチの病態と治療について解説します。

第5回   7月8日(金)

肝臓の炎症と再生

医学研究科   消化器・代謝内科学   講師   野尻俊輔
肝臓は古代の神話に出てくるように、昔から再生能力が旺盛な臓器として知られています。急性肝炎後は、その障害の程度に応じ速やかに再生し回復します。肝移植のドナー肝や転移性肝癌の手術時にも再生が速やかです。しかし、肝硬変の場合や劇症肝炎の場合などは、肝臓の再生がスムーズに行われず、しばしば肝不全などの深刻な合併症を伴います。肝臓の再生に係わる研究の歴史は非常に古いものの、実はまだ解明されていない事も多くあります。今回の講義では、一般的な肝炎(B,C型、脂肪性肝炎など)における炎症と再生のメカニズムや肝切除後の絶妙ともいえる再生のからくりを実例を含めて紹介します。

第6回   7月15日(金)

臓器線維症

医学研究科   機能解剖学   教授   池田一雄
様々な原因により炎症が引き起こされた後には、細胞、組織が応答し、恒常性を維持するようにと反応し組織修復、再生がもたらされます。しかしながら、炎症の遷延化、過剰な組織応答により臓器線維症がもたらされます。臓器線維症とは、コラーゲンをはじめとする細胞外マトリックスが組織に過剰に沈着し、臓器の機能不全をきたす病態をいいます。今回は、肝臓での線維化に重要な役割を果たす肝星細胞の活性化と臓器線維症について分かりやすく解説します。

第7回   7月22日(金)

C型肝炎ウイルスと肝がん

医学研究科   ウイルス学   教授   田中靖人
C型肝炎ウイルス(HCV)に感染すると急性肝炎を発症し、約70%は慢性肝炎に移行します。この状態は肝臓内にHCVが持続感染している状態で、生体にとっては異物でありますから、免疫反応により持続的な炎症が見られます。肝細胞は破壊され、再生を繰り返すうちに、約20-30年の経過で肝硬変から肝癌発症に至ることが知られています。わが国における肝癌の年間死亡者数は約3万4千人とピークを迎えていますが、HCVは肝癌の約70%に関与しており、HCV感染症に対する治療法の確立はとても重要であることが理解できます。現時点でこの不可逆的な進展を阻止できる最善の手段として,インターフェロンをベースとした治療があります。ここでは最近の知見を交えて、C型肝炎に対する個別化医療の可能性についてお話します。

第8回   7月29日(金)

脳に存在する幹細胞と神経再生

医学研究科   再生医学   教授   澤本和延
近年の研究によって、成人の脳の中でも新しい神経細胞がつくられることがわかってきました。さらに、動物を使った実験によって、病気や事故で失われた脳細胞の一部が再生することもわかりました。このような脳細胞の再生の鍵を握っているのが、私たちの脳の中にある「幹細胞」と呼ばれる細胞です。幹細胞による神経細胞の再生能力と、それを活かした脳疾患の治療の可能性について解説します。