オープンカレッジのご案内


健康科学講座 オープンカレッジ 2010年第1期のご案内。

No.1「身近な感染症を考える

[開講日程]6月11日(金)〜7月30日(金)
[コーディネーター]医学研究科 ウイルス学 教授 田中靖人
感染症と人間との戦いはヒポクラテスの時代まで遡ります。かつて国民病といわれた結核、“第二の国民病”とまでいわれているC型肝炎、そして世界では新型インフルエンザの流行が見られました。中でも、肝炎ウイルス、パピローマウイルス、ヘリコバクタ―・ピロリ菌などは炎症やがんと関連した感染症としても注目されています。また、若者の間ではエイズに加えて、クラミジア感染症、性器ヘルペス感染症などの性感染症(STD)も増えています。今回の講義では、特に注目すべき感染症に焦点をあて、自ら感染症にかからないための方法、かかってしまった時にとるべき適切な行動について考えていきます。

第1回   6月11日(金)

人類はC型肝炎を克服できるか?

医学研究科 ウイルス学 教授 田中靖人
わが国における肝癌の年間死亡者数は約3万4千人とピークを迎えています。C型肝炎ウイルス(HCV)は肝癌の約80%に関与しておりHCV感染症に対する治療法の確立はとても重要であることが理解できます。最近では、HCV感染に対してペグインターフェロンとリバビリン併用療法によりその治療効果は約50%まで向上していますが、その一方で副作用も多く、問題視されてきました。最近、私たちは治療前に個人の体質の違いを調べることで、治療効果を事前に高い確率(80-90%)で予測できるようになりました。ここではHCVに対する個別化治療の可能性についてお話しします。

第2回   6月18日(金)

レトロウイルスの脅威と対策

医学研究科 細胞分子生物学 教授 岡本尚
エイズ(後天性免疫不全症候群)は、現時点で世界中で約4000万人に感染し毎年300万人以上の死亡者を出している、現代において最も大きな人類の脅威です。東アジアで特にその感染者数が増大を続けていますが、我が国ではマスコミを始め国民の関心が低いことがさらに感染の拡大に拍車をかけています。実はレトロウイルスの脅威はエイズだけではありません。講義では、我が国に多い成人T細胞白血病ATLの原因であるHTLV-1や最近前立腺がんより見つかり慢性疲労症候群の患者の多くに感染しているXMRVという新しいウイルスについても話題を提供します。

第3回   6月25日(金)

新型インフルエンザウイルス出現の背景と流行状況の検討

名古屋市立大学 名誉教授 中島捷久
インフルエンザウイルスは抗原変異の激しいウイルスで、これにはドリフトとシフトという機構が知られています。ドリフトは同一亜型のウイルスの抗原性が連続的に変化することで、シフトとは数十年に1回異なる亜型が出現して、既存の亜型ウイルスを駆逐して流行が開始されることです。昨年メキシコから発生した新型ウイルスはどのようなウイルスであったのか、そしてどのような性質をもっていたのか、このウイルスに対する対応は適切であったのかどうかを検討します。

第4回   7月2日(金)

最近のB型肝炎ウイルス感染症の実態

名古屋記念病院 消化器科 菅内文中
現在本邦におけるB型肝炎感染症は150万人前後存在するとされています。母子感染予防対策によりなくなると思われてきたB型肝炎感染症は、近年若年を中心とした性行為により欧米型の遺伝子型Aのキャリアが増加傾向にあります。しかもそのうちの約10%が慢性化するため、今後B型肝炎キャリアの増加が予想されます。また、高齢化社会の中で一旦、治ったB型肝炎は免疫力が落ちたときに再活性化することがわかってきました。ここでは最近のわが国のB型肝炎感染症の最近の疫学的動向をふまえ、診断や治療に関する話題を提供します。

第5回   7月9日(金)

ピロリ菌の胃潰瘍,十二指腸潰瘍への関与.日常臨床での診断法,除菌方法について

名古屋市立大学病院 内視鏡部 准教授 片岡洋望
胃は胃酸を分泌し強力な酸性状況下にあることから、長い間、胃には細菌は生息できないと信じられていました。1979年、オーストラリアの学者によりピロリ菌が発見され、今日では胃癌、胃潰瘍、十二指腸潰瘍、MALTリンパ腫など多くの病態との因果関係が明らかになりつつあります。今日の臨床の現場では抗生物質に対する耐性化も問題になっており、ピロリ菌をめぐる諸問題について解説します。

第6回   7月16日(金)

産婦人科領域の母子間(垂直感染)及びパートナー間(水平感染)の感染症について

医学研究科 産科婦人科学 病院准教授 尾崎康彦
性行為感染症(STD)は主に母体胎児間(垂直感染)及びパートナー間(水平感染)の感染経路があり、産婦人科で日常的に取り扱う一般的な疾患です。近年STDは抗生物質や抗ウイルス薬などの治療方法の発展により感染そのものは治癒することが可能になりましたが、クラミジアトリコマチスによる不妊症や子宮外妊娠、パピローマウイルス(HPV)による子宮頸癌などの重篤な後遺症が社会的に問題になってきています。自分の命のみならず次世代に負の遺産を残さないためのSTDの治療戦略についてお話しします。

第7回   7月23日(金)

小児期によく見られる感染症についての概説

医学研究科 新生児・小児医学 准教授 伊藤哲哉
小児期にはウイルス性発疹症をはじめとするそれぞれの年齢に応じた特有の感染症があり、予防接種による予防などは小児保健の重要な分野となっています。最近の感染症の流行、ワクチンの施行、開発状況などについて概説し、疾患にかかった場合の注意点や治療法などについて概説します。また、細菌感染症についても、よくある疾患、対処法、抗生剤使用に関する注意点などを解説します。

第8回   7月30日(金)

結核の感染と発病 -院内感染対策も含めて-

医学研究科 腫瘍・免疫内科学 病院教授 佐藤滋樹
結核菌とヒトの関わりは紀元前にさかのぼります。日本では第二次世界大戦後まで猖獗(しょうけつ)を極めましたが、ストレプトマイシンなど抗結核薬の登場により急速に減少しました。しかし、昭和60年ごろから減少スピードは鈍化し、2008年には全国で約25,000人の方が新たに結核と診断されました。現在結核は高齢者、都市生活者、外国人、貧困者などに偏っています。その原因は何か。結核を制御することは、WHOを中心とした世界の喫緊の課題ですが、空気感染するため撲滅は大変困難です。いかに結核症と立ち向かうか最新の診断方法、治療法を概説します。