オープンカレッジのご案内


健康科学講座 オープンカレッジ 2009年第1期のご案内。

No.1「子育て世代のための脳知識

[開講日程]平成21年6月5日(金)~平成21年度7月24日(金)
[コーディネーター]脳神経生理学分野 教授 飛田秀樹
「次世代の育成」少子高齢化の日本のキーワードです。まず、育成する側の子育て現役世代が、正しく脳の働きを理解し、そして教育へ繋げる努力をする。とても重要なことではないでしょうか?
脳はどのように作られるの?どのように働いているの?どんな方法で研究するの?子供に多い脳の病気は?子供のこころの発育は?学習・記憶のしくみは?このような疑問を少しでも理解していただき、自己学習のきっかけとなる場を提供したいと思います。
本企画は、1)脳の発生から発育へ、2)脳研究手法を実感する、3)子供の脳の病気の理解と育成へつなげる脳の理解、の3部構成となっています。演者も子育て現役世代のメンバーばかりです。ぜひ多くの子育て現役世代の方の参加をお待ちしております。

第1回   6月5日(金)

おなかの中の脳:受精卵から生まれるまで

医学研究科 分子神経生物学 助教 青山峰芳
受精卵から出生するまでの間にみられる神経発生を知ることは、脳を知る上で重要です。発生初期にみられる神経発生は、緻密なプログラムにもとづいて進んでいます。まず、神経管という円筒状の構造物が形成され、神経の元となる幹の細胞(神経幹細胞)が増え、さらに神経やグリア細胞へと分化しています。本講義では、受精後の脳の発生過程の概略を解説し、母体内でおきている複雑な神経発生について学びます。また、近年注目されている神経幹細胞による再生医療の可能性についてもふれます。

第2回   6月12日(金)

周産期と発育期の脳:大きな変化に適応する脳力

医学研究科 産科婦人科学 病院准教授 尾崎康彦  静岡済生会病院 小児科 科長 水野恵介
本講義は、1)おなかの中の胎児の発達と正常分娩の概略、2)生後の子供の発育パターンの概略を学びます。まず、胎児にとって最も大きな環境変化である分娩期の正常分娩の流れ、分娩期の低酸素虚血のリスクの高い異常分娩について理解を深めます。次に、泣いてミルクを飲むことしかできない新生児が、手を使い、つかまり立ちをし、歩き、物事に関心を示し、考え、話すようになる、という一連の脳の発達について、脳のしくみとかたちの変化という視点、つまり子供の発育パターンを科学的視点から考えます。

第3回   6月19日(金)

子育て世代の脳:老化する脳の活性化法

医学研究科 脳神経生理学 教授 飛田秀樹
子育て世代の大人の脳も、大きな変化に適応する能力をもっているのでしょうか?本講義は、前半に運動系を中心に脳のしくみを概説し、どのように脳が運動・行動を制御しているのかについて理解を深めます。後半には成人脳においても外部環境の変化に適応する能力をもっていることを示す実験結果を示します。例えば、外部刺激の多い環境(運動など)では、空間記憶が亢進し、脳障害が軽減されるなど、いろんな事実が動物レベルで明らかになってきました。脳の老化予防のヒントとなるかもしれません。

第4回   6月26日(金)

目でみる脳研究1:講義&研究室見学

医学研究科 機能解剖学 教授 池田一雄  医学研究科 分子神経生物学 助教 青山峰芳
電子顕微鏡と免疫染色法の基本原理について各10分程度の講義から学んだ後、脳研究で用いる実験装置と研究室の様子を実際に見学し、どのように研究が実施されているのか?を体感します。
研究室では、1)電子顕微鏡による形態観察(共同研究室)、2)蛍光顕微鏡を用いた免疫染色法(浅井研究室)、3)動物の運動機能評価(飛田研究室)、4)蛍光によるmRNA定量のためのreal-time PCR(共同研究室)、の実験手法を目でみていただけます(各15分、60分の予定。終了予定時間延長の可能性あり)。

第5回   7月3日(金)

目でみる脳研究2:講義&研究室見学

医学研究科 機能組織学 講師 植田高史  国立長寿医療センター アルツハイマー病研究部 室長 鄭 且均
生体の動的変化を視覚的にとらえるイメージング法とDNA塩基配列を調べるDNAシークエンスの基本原理を各10分程度の講義から学びます。その後、脳研究で用いる実験装置や研究室を見学します。
研究室では、1)イメージング法による細胞内カルシウム動態(植田研究室)、2)DNAシークエンサーによる塩基配列解析(共同研究室)、3)電気生理的なイオンチャネル解析(飛田研究室)、4)成体脳の神経幹細胞の遊走実験(澤本研究室)、を見学します(各15分、60分の予定。終了予定時間延長の可能性あり)。

第6回   7月10日(金)

子供の脳の病気 —脳性小児麻痺、小児に多い脳腫瘍—

愛知県心身障害者コロニー中央病院 新生児科 医長 山田恭聖  医学研究科 脳神経外科学 病院准教授 相原徳孝
子供の脳の病気の中でも、脳性小児麻痺と脳腫瘍について学びます。脳性小児麻痺は周産期の低酸素虚血により脳に大きなダメージが加わり運動麻痺症状がみられます。子供の発育を考慮しより良いケアを考えることに繋がるヒントを、豊富な臨床症例の経験から考えます。また、子供に多い脳腫瘍にはどんな疾患があるのか?どんな症状やしぐさに気づくことが脳腫瘍の早期発見に繋がるのか?というポイントを、科学的および豊富な臨床経験から伝えたいと思います。

第7回   7月17日(金)

こころを育む —こころの発達とその障害—

浜松医科大学 子供のこころの発達研究センター 特任助教 宮地泰士
子どもの心の問題に対する関心が高まりつつあるのと同時に、科学の進歩と様々な研究によりヒトの脳や心の発達の仕組みが少しずつ紐解かれるようになっています。
この講義では、子どもの定型発達と、いわゆる“発達障害”と呼ばれる非定型な発達特性について、最近の知見と仮説を交えながら理解を深め、子どもの発達の成り立ち、さらにはその支援について考えていきたいと思います。
そして現在子どもの心の発達はどのように研究されているのか、今後の課題と展望について論じます。

第8回   7月24日(金)

教育される脳 —記憶とモチベーションの理解からー

医学研究科 神経内科学 准教授 松川則之  医学研究科 脳神経生理学 教授 飛田秀樹
学習・記憶のしくみはどうなっているのでしょうか?記憶形成には、大脳皮質および海馬に至る神経回路が重要です。一方古くから、前脳基底野コリン作動性神経も記憶形成に重要であると知られ、アルツハイマー病ではこの神経の活動を活性化する薬剤を用いています。本講義では、研究データも踏まえて記憶形成メカニズムを概要します。また、やる気のある時には“記憶力が高まる”ことは、だれもが実感していることでしょう。脳内ドパミン神経系とやる気(モチベーション)の関係についても概説します。