オープンカレッジのご案内


健康科学講座 オープンカレッジ 2008年第3期のご案内。

No.6「知っておきたい感染症~ウイルス?細菌感染は今?

[開講日程]平成20年11月19日~平成21年度1月14日
[コーディネーター] 医学研究科 肝炎・免疫分野 客員教授 溝上雅史、 臨床分子情報医学 准教授 田中靖人
感染症と人間との戦いはヒポクラテスの時代まで遡ります。人間のライフサイクルのどの段階においても、さまざまな感染症が、いま私たちに襲いかかろうとしています。
かつて国民病といわれた結核、“第二の国民病”とまでいわれているC型肝炎、そして世界では鳥及び新型インフルエンザの流行のさらなる拡大の危険が高まっています。また、若者の間ではエイズに加えて、クラミジア感染症、性器ヘルペス感染症など、その他の性感染症(STD)も増えています。
その中で、特に注目すべき感染症に焦点をあて、自ら感染症にかからないための方法、かかってしまった時にとるべき適切な行動について考えていきます。

第1回   11月19日(水)

急展開するB型肝炎

医学研究科 肝炎・免疫分野 客員教授 溝上雅史
母子感染予防対策によりなくなると思われてきたB型肝炎は、近年若年男性を中心とした性行為により欧米型のgenotype Aが増加傾向です。しかも約10%が慢性化し、今後B型肝炎キャリアが増加する事態が予測されています。
また、高齢化社会の中で、一旦治ったB型肝炎は免疫力が落ちたときに再活性化することがわかっています。こうした変わりゆくウイルス性肝炎の概念に対応するためには、社会啓蒙とそれに続く肝炎ウイルスの診断及び治療法の確立が最も重要な課題です。
ここでは最近のB型肝炎に関する話題を提供します。

第2回   11月26日(水)

ウイルス性肝炎は国民病?

医学研究科 臨床分子情報医学学研究科 准教授 田中 靖人
肝炎ウイルスには主に口から食べ物などで感染するA型肝炎ウイルス、E型肝炎ウイルスと主に血液を介して感染するB型肝炎ウイルス、C型肝炎ウイルスがあります。A型肝炎は全世界に分布し、経口水系感染であることから衛生環境の指標とされています。
近年、海外渡航歴のない土着の急性E型肝炎の報告が相次いでいます。その原因は、豚肉?イノシシ?鹿?と人畜共通感染症として注目されているのです。一方、B型肝炎やC型肝炎は今や‘国民病’と言われ、慢性肝炎、肝硬変をへて肝がんに至るので、世界中で大きな問題となっています。
ここでは、最近のウイルス性肝炎全般の話題を提供します。

第3回   12月3日(水)

インターフェロンって何?肝炎の治療はどこまで進んだか?

肝・膵臓内科医学研究科 腫瘍・免疫内科学 病院講師 菅内 文中
わが国における肝癌の年間死亡者数は約3万4千人とされ年々増加傾向です。C型肝炎ウイルス(HCV)は肝癌の約80%に関与しておりHCV感染症に対する予防対策および治療の確立はとても重要であることが理解できます。
唯一の薬がインターフェロンです。ウイルスに感染したとき、生体を守るために体内でつくられる「たんぱく質」の一種です。最近では、HCV感染に対してペグインターフェロンとリバビリン併用療法によりその治療効果は飛躍的に向上しています。
本療法抵抗例への対策,高齢者への安全かつ効果的治療法,副作用対策などが現在の課題です。

第4回   12月10日(水)

鳥インフルエンザはスペイン風邪の再来?

医学研究科 ウイルス学 准教授 信澤 枝里
現在、東南アジアを中心に、H5N1高病原性トリインフルエンザ(HPAI)ウイルスのヒトへの感染が問題になっています。また、近い将来、このHPAIウイルスが大流行を引き起こし、日本だけでも約60万人が死亡するとも言われています。この大流行を想定し、国は世界に先駆け医療関係者を中心に、プレパンデミックワクチンの試験的接種を始めました。
今回の講義では、H5N1 HPAIウイルスとは、どのようなウイルスなのか?なぜ、高い病原性を示すのか?プレパンデミックワクチンは、有効なのか?抗ウイルス薬は、効果があるのか?等々の疑問が解決するように、わかりやすく解説を行います。

第5回   12月17日(水)

新しいヒト・ウイルス感染症の脅威:特にエイズウイルスと白血病ウイルスについて

医学研究科 細胞分子生物学 教授 岡本 尚
レトロウイルスはRNAの形の遺伝子を持つが、宿主細胞に感染するとその遺伝情報をDNAに変換しヒト細胞ゲノムの中に組み換える、という特異な性質を持っています。このため、その排除は困難です。
1980年前後に我が国に多い成人T細胞白血病(ATL)から初めてヒトのレトロウイルスHTLV-1が見つかり、次いで後天性免疫不全症候群(エイズ)から別の種類のレトロウイルスHIV-1が発見されました。現在、世界中にHTLV-1感染者はおよそ2000万人、HIV-1感染者は約4000万人いると推定され、大きな脅威となっています。
本講義では、これらのウイルス感染症の実態と増殖の分子機構について説明し、その治療法の現在と未来について分かり易く説明します。それとともに、新しい医学研究がこれらの難治性感染症に対してどのようにチャレンジしているのかを最前線の現場からレポートします。

第6回   12月24日(水)

最近の性感染症の実態

医学研究科 腎・泌尿器科学 講師 橋本 良博
性感染症(STD: Sexually Transmitted Desease)とは、性行為により感染する病気の総称です。以前は「性病」と呼ばれていましたが、1999年施行の感染症法で「性行為感染症(性感染症)」と呼ぶようになりました。
性感染症全体の国内感染者数は約600万人とも言われ、日本は先進国の中で感染者数が増えている国です。クラジミア感染症、淋病、性器ヘルペス、エイズ、梅毒などがあり、日本で多い性行為感染症はクラミジア感染症、淋病です。抗生剤などの恩恵で治療も容易なった反面、最近では薬剤耐性の淋菌も増えており、性感染症は時とともに変化しています。
本講座では、身近な性感染症についての症状や治療法等について論じます。予防のための知識となれば幸いです。

第7回   1月7日(水)

最近注目の消化管感染症
その現状と対策-Clostridium difficile関連下痢症を中心に-

医学研究科 法医学 講師 加藤 秀章
Clostridium difficileは、グラム陽性偏性嫌気性菌で、抗菌薬の投与後に生ずる下痢の主要な起因菌です。 従来よりC. difficileは偽膜性腸炎を生ずることはよく知られていますが、それ以外にもMRSAや多剤耐性緑膿菌などと同様に院内感染によるアウトブレークを生ずることがあり、時として問題となることがあります。
さらに、最近欧米において、強毒性のC. difficileであるNAP1/B-I/027株の流行による死亡率の上昇が社会問題となり、C. difficileは、にわかに注目を浴びるようになりました。幸いわが国においては、強毒株は検出されるもののアウトブレークは発生していませんが今後の発生が危惧されます。
C. difficile関連下痢症の現状と、その対策について講義します。

第8回   1月14日(水)

日本が抱える結核の問題と新しい対策-高齢化社会のなかで-

医学研究科 腫瘍・免疫外科学 准教授 佐藤 滋樹
2006年(平成18年)日本において新たに結核を発病した人は26,000人以上にものぼりました。
第二次世界大戦終戦後まで日本には結核がまん延しており、現在の高齢者のかたがたの多くが当時感染を受けました。 長い間体内に休眠していた結核菌が活動化し、今高齢者の結核が問題となっています。一方、大都会に患者が集中することや、若い世代の中で外国人の患者が増えていることも注目すべき点です。
結核の対策は、2007年に従来の結核予防法が廃止され感染症法のもと行われることになりました。また、早期に患者を発見するために、新しい検査法が次々と導入されてきています。
社会の公衆衛生上の問題と、結核医療の進歩についてお話します。