オープンカレッジのご案内


健康科学講座 オープンカレッジ 2008年第3期のご案内。

No.5「脳:頭の中で何が起こっている?

[開講日程]平成20年11月7日~平成21年1月9日
[コーディネーター]再生医学分野 澤本和延
皆さんの頭の中で、脳がどのような働きをしているかご存じでしょうか?
このシリーズでは、名古屋市および近隣の施設においてユニークな研究をしている先生方をお招きし、脳が持つ能力についてわかりやく解説していただきます。
イルカの知性から、ヒトの脳の機能と病気、そしてそれを応用して作成した人工の脳(ニューロコンピューター)までを取り扱います。
この講義を通して、もっと脳に興味を持って頂き、未だに謎が多い脳の研究の現状と未来について知って頂きたいと思います。

第1回   11月7日(金)

イルカの知性を探る〜名古屋港水族館の試み〜イルカは魅力的な動物です。

名古屋港水族館飼育展示部第二課 上野友香
イルカは魅力的な動物です。
私たちは様々なメディアを通じて、野生のイルカが音を使って仲間とコミュニケーションをとっている姿や、仲間と協力して狩りをする姿を眼にします。また水族館ではトレーナーの指示に従いさまざまな動きを見せてくれます。
「イルカって賢いですね。」そんなイルカの姿を見た多くの人々が抱く感想です。でも「賢い」ってどういうことなのでしょう。
名古屋港水族館では、鯨類の「知性」を正しく伝えるために、その「知性」を調べるための取り組みを始めています。一体どんなことをしているのでしょうか。バンドウイルカの実験風景を見ながら紹介します。

第2回   11月14日(金)

脳の機能を調節する神経栄養因子

岐阜薬科大学薬科学科分子生物学研究室 教授 古川昭栄
脳には多様な神経細胞が存在しシナプスという構造を通して相互に連絡し合い、複雑な神経ネットワークを形成しています。
脳の機能はこの神経ネットワークのはたらきによるところが大きく、そこには神経栄養因子と呼ばれるタンパク質が深くかかわっています。
脳由来神経栄養因子(BDNF)は代表的な因子であり、活動中の神経細胞が合成・分泌し、そのシナプス機能を高めるはたらきがあります。したがって頻繁に活動する神経ネットワークの機能が特別に強化されることになります。
BDNFはうつ病やアルツハイマー病など病気とのかかわりも注目されています。

第3回   11月21日(金)

脳内の痛覚抑制機構と鎮痛薬の作用

薬学研究科中枢神経機能薬理学 教授 小野秀樹
皮膚、筋、骨、内臓などから発した痛みシグナルは痛覚神経によって脊髄に伝えられ、脳の大脳皮質に至り、痛みとして認識される一方、脳内には痛みを抑制する下行性ノルアドレナリン神経系やセロトニン神経系が存在します。
これらの神経は脊髄へ下行し、脊髄において痛みシグナルの伝達をブロックします。鎮痛薬であるモルヒネは、これら下行性の痛覚抑制系を駆動し、急性的な痛みを緩解することが知られていたが、慢性的な痛みにおいても、ある種の鎮痛薬はこれらの痛覚抑制系を駆動することが明らかになってきました。

第4回   11月28日(金)

脳の構築とその異常~「頭の良さ」は生まれつき決まっているか?

薬学研究科病態生化学 准教授 服部光治
脳は非常に多くの細胞からできていますが、その配置・配線のほとんどは遺伝子の働きによって決められています。 つまり、脳の構造のほとんどは誰でも同じ・生まれつき決まっているものなのです。 しかし、一部の患者さんでは、この配置や配線がうまくいかず、様々な病気になります。
本講義では、脳と神経ネットワーク形成の基本的原理と、それに必要な遺伝子についてお話しします。そしてそれらの破綻による病気、「頭の良さ」や「性格」に遺伝子が関係しているかなどについてもお話します。

第5回   12月5日(金)

脳の老化とアルツハイマー病

国立長寿医療センター アルツハイマー病研究部長 道川誠
アルツハイマー病は、ドイツの精神科医アルツハイマー博士によって100年以上前に報告されましたが、未だに根本的な治療法はありません。
アルツハイマー病は高齢になると発症率が上昇します(65歳以上人口の約7〜10%程度)。高齢社会に突入した我が国では、患者数は100万人に達すると考えられ、その数は今後も増大すると予測されています。
近年の研究から、アルツハイマー病の原因分子がアミロイドベータ蛋白であることが明らかになりました。驚くべきことに、このアミロイドベータ蛋白はアルツハイマー病発症の20年以上も前(50歳くらい)から脳内沈着が始まることが明らかになってきており、予防法、早期診断・早期治療法開発が急務となっています。

第6回   12月12日(金)

こどもの脳の超適応能力

名古屋市立大学医学研究科 新生児・小児医学 教授 戸苅創
ヒトが、胎児、新生児、乳児、幼児、学童、思春期、と成長し、やがて一人前の成人日本人となる過程で、脳の中では想像を超える変化が起こっています。それはまさに環境の変化に対応する適応能力であり可塑性が発揮された結果でもあります。特に新生児のそれは顕著で、どんな環境にも適応出来る能力を持っており、これは「超適応能力」と呼ばれています。
日本のこどもを巡る環境がいかに特殊であるか、その中で彼らがどのように適応していくか、そしていつから日本人になるのか、これら驚くべき適応能力の実態に迫ります。
もしも、お子さん、お孫さんがおれるならば、明日からこどもを見る目が変わります。

第7回   12月19日(金)

なぜ麻薬依存症になるのか?~依存症の脳のメカニズム~

医学研究科 機能組織学 教授 島田昌一
角界を揺るがした大麻問題もまだ記憶に新しいところですが、麻薬、大麻、覚醒剤、違法ドラッグ(脱法ドラッグ)という言葉をニュースで耳にする機会が多くなりました。 麻薬の乱用は現代における大きな社会問題の一つです。
この社会問題について考えていくには、麻薬が法律で禁止されているからとか、恐ろしいからというという理解だけでは不十分で、麻薬依存症になる脳のしくみや危険性について我々が正しく理解する必要があります。
本講義の目的は、麻薬依存症になる脳のメカニズムやその危険性について分子レベルで科学的に理解してもらうことにあります。

第8回   平成21年1月9日(金)

「ニューロコンピュータ最前線」−音の見える化:脳神経回路網をロジック回路で実現−

名古屋工業大学工学研究科創成シミュレーション工学専攻 教授 岩田彰
人間の脳神経細胞(ニューロン)と同様な計算手順をFPGA(ロジック回路を外部から書込可能なIC)を用いてディジタルロジックとして実現し、人間の聴覚と同様に二つのマイク(耳)からの音信号からリアルタイムに音源の方向と種類を同定する装置を開発しました。
聴覚障害者や高齢者の耳の代わりとなる”サウンド・ウオッチャー(音の見張り番)”として実用化を計画中です。
今後、「音の見える化」装置として多用途への展開を計画しています。
本講演では、ニューロコンピュータの歴史と原理とともに、最前線の研究成果をご紹介し、ニューロコンピュータの今後を展望します。