オープンカレッジのご案内


健康科学講座 オープンカレッジ 2008年第2期のご案内。

No.4 がん治療戦略の新たな局面

[開講日程][9月17日~11月5日]
[コーディネーター]細胞生化学 教授 中西真
がんは日本人の死因の第一位を占め、生涯罹患率は男性では二人に一人、女性では三人に一人と我々にとり最も重大かつ克服すべき疾患であります。以前にはがんは苦痛を伴う不治の病ととらえられ、恐怖と絶望の対象でありましたが、21世紀に入り目覚ましい科学技術の進歩により、早期診断、新たな外科的治療法の開発、分子標的を利用した抗がん剤、放射線治療革新等により多くのがんが治療可能になりつつあります。またがん患者さんの「痛みの問題」「心の問題」についても精力的に取り組み、苦痛を感じない治療も進められております。このオープンカレッジでは、「がんとは何か?」という疑問に対する最先端の知見から、がん治療法の現状と新たな局面、さらには「心の問題」に対する取り組みまで、がん治療の最前線を幅広くかつ分かりやすく解説いたします。

第1回   9月17日(水)

がんとは何か?-がん細胞の特異な性質-

医学研究科 医学研究科 細胞生化学 教授 中西 真
我々の細胞がなぜがんになるのか?またそれを防ぐ方法はあるのか?20世紀後半からこれらの疑問に対する膨大な研究成果が積み上げられ、現在ではこれらの疑問に対するある程度の解答が得られてきています。本講座ではまずがん治療の最前線を理解するために「がんとは何か」について、生物学的側面から概説し、元々我々の細胞に備わっているがんを防ぐ機構と、なぜその機構が破綻してがんになるのかについて紹介します。とりわけ、新たながん治療の標的となりうる分子、あるいは機構について、現行の分子-薬物との比較しながら議論したいと考えています。

第2回   9月24日(水)

がんの病理診断と遺伝子診断

医学研究科 臨床病態病理学 准教授 稲垣 宏
多くの“診断”の中でも、病理診断は“最終診断”として腫瘍の治療方針や患者の予後推定に決定的な役割を果たしています。通常の病理診断は、病理スライドを顕微鏡で観察することにより行われますが、診断に難渋する例では正確な病理診断を行うために病理特殊技法が用いられます。これらの技法は先端的治療の治療効果予測のためにも用いられています。本講義では、遺伝子診断を含むがんの病理診断の現状についてわかりやすくお話したいと思います。

第3回   10月1日(水)

抗がん剤開発と臨床試験

医学研究科 腫瘍・免疫内科学分野 飯田真介
治療法のない「がん」患者さんは、少しでも効果のあることが期待される新薬の登場を心待ちにしています。疾患の性質上、抗がん剤の副作用はある程度許容されますが、毒性が強すぎたり期待した効果が得られない場合は早期に開発を中止する必要があります。実際には臨床第I/II相治験という段階で、最小限の患者さんの協力で新薬のスクリーニングが行われます。この過程を経た新薬は承認されて、まず再発患者さんに使用されますが、がんの治療は一般に多剤併用療法が基本です。標準治療は大規模臨床研究グループによって実施されている承認後医師主導臨床試験によって確立されます。最近では、がん細胞を特異的に攻撃する薬「分子標的薬」の開発が進み、副作用が少なくて高い効果の得られる薬の開発が進んでいます。将来のオーダーメイド医療に向けた試みとして、治療予測因子となる分子マーカーの研究も積極的に行われています。

第4回   10月8日(水)

がんの画像診断と放射線治療の進歩

医学研究科 放射線医学 病院准教授 荻野浩幸
がん診療における放射線治療の役割は年々重要性をまし、治療患者数も増加の一途をたどっている。特にコンピュータ技術を駆使した定位放射線治療や強度変調放射線治療(IMRT)は、外来での治療が可能でありながら手術と同等以上の治療成績を出している。これらの治療技術は画像診断技術とあいまって今後もさらに発展が期待される。さらに近々名古屋市に建設が予定されている粒子線治療は従来治療が困難であったがんに対しても良好な成績が報告されてきており、今後さらに放射線治療が第一選択となる疾患は増えてゆくと思われる

第5回   10月15日(水)

分子標的療法とは

医学研究科 腫瘍・免疫内科学 講師 小栗鉄也
癌の標的治療は、癌の発癌(正常細胞ががん細胞になる過程)、増殖、転移の様々な段階において、ある特定の分子に介入し効果を示します。これらの分子を「標的分子」と呼ぶため、これらの治療法は分子標的治療とよばれます。癌特有の分子、および細胞変異に焦点を絞るため、癌の標的治療は現行の治療法に比べより効果的で、正常細胞に与える害も少ない可能性があります。今回は癌の分子標的療法の現状についてお話しします。

第6回   10月22日(水)

がんの外科治療・肝胆膵癌の手術治療~抗癌剤治療

医学研究科 消化器外科学 准教授 沢井 博純
日本人の死亡原因のトップであるがん、中でも全体の60%を占めるのは胃や大腸に発生する消化器がんであり、これが原因で毎年10万人以上が亡くなっています。手術治療により早期の胃がんや大腸がんは根治を得ることができますが、膵がんや胆道がんなどは早期発見が困難な場合が多く、手術治療だけでは根治を得ることが困難な場合があり、抗がん剤や放射線療法を組み合わせた集学的治療が重要です。今回は私たちが肝胆膵がんに行っているQuality of Lifeを重視した手術術式・集学的治療と、研究室で行っている臨床応用を目指した基礎的実験の成果・今後の展望を紹介します。

第7回   10月29日(水)

緩和ケア~がんのつらさを緩和する医療

医学研究科 消化器外科 坂本雅樹
がんの経過中には様々な苦痛を伴うことがあります。そのような苦痛に苦しむ患者様の症状を和らげ、患者様を支える医療が「緩和ケア」です。以前の緩和ケアは進行したがんの症状を和らげる医療でした。しかし現在の緩和ケアは、がんと診断された時から始まる身体的、精神的苦痛を早期から緩和し、患者様の闘病を支えようと努力しています。がん対策基本法によって緩和ケアがかつてなく注目されており、その一端をご紹介いたします。

第8回   11月5日(水)

がん治療におけるEBM

医学研究科 腫瘍・免疫外科学 准教授 山下啓子
EBM (Evidence Based-Medicine) は「根拠に基づく医療」と訳される。“がん”の領域では「根拠に基づく医療」が行われている。“根拠”とはどのようにして確立されるのか。また、新しい治療法(抗癌剤、手術など)が見出されたら、それがどのように日常臨床に取り入れられるようになるのか。現在行われている標準治療は臨床試験により確立されたものであり、新たな治療法が見出された場合には、それが現在の標準治療より優れた効果があり、かつ安全であることを臨床試験により確認して初めて、新たなエビデンス(標準治療)が確立される。講義では乳がんの治療の進歩を例にとり解説する。