研究グループ
尿路結石研究グループ

尿路結石症をコレステロール過剰摂取などによる生活習慣病(メタボリックシンドローム)の一疾患と捉え、遺伝因子と環境因子の両面から研究を推し進め尿路結石成因を明らかにしている。
これらの成果は世界的に高く評価されている。

当グループメンバーと研究テーマについて
結石グループことはじめ:当科における尿路結石研究のはじまり  戸澤啓一
結石グループの研究について  安井孝周
伊藤恭典  
広瀬真仁  
尿細管細胞に対するウシュウ酸刺激からのオステオポンチンの発現メカニズムについて  李正道
宇佐美雅之  
廣瀬泰彦  

結石グループ勉強会終了後(2005年10月)
結石グループ 勉強会終了後(2005年10月)

結石グループことはじめ:当科における尿路結石研究のはじまり  戸澤啓一

郡教授が着任される以前は、ESWLこそあるものの結石に関しては臨床研究すらなされていない状態であった。当科で最初の尿路結石の基礎研究は伊藤尊一郎先生による尿路結石でのマクロファージの関与についての研究であった。尿路結石を持った患者の腎でのマクロファージ、炎症性サイトカイン、オステオポンチンの発現を免疫組織染色、ノザンブロットなどで調べた研究であるが、伊藤尊一郎先生はこの論文で1996年の日本泌尿器科学会坂口賞を受賞した。この後、多和田俊保先生が結石を染色してオステオポンチンの発現を検討、坂倉毅先生がヌードマウスの皮下にイヌの尿細管細胞を移植し、組織学的検索を行った。いずれもUrological Researchに掲載され学位を取得している。研究内容も徐々に時代とともに変化し、最近は、分子生物学、ゲノム解析が中心となってきた。現在では、大学院生を中心として、SNP解析、プロモーター解析など多くの研究が行われているが詳細は次項にゆずる。

結石グループの研究について  安井孝周

尿路結石は、遺伝要因に食生活などの生活習慣である環境要因が重なり、発症すると考えられる。

尿路結石症の生涯罹患率は食文化の欧米化に伴い上昇し、我が国では100人中6人、欧米では20人にも達する国もみられ、生産年齢の男性に多く、その成因の究明と再発予防法の確立は急務であるが、遺伝子レベルに研究が進んでからも画期的な再発予防法は開発されていない。尿路結石は90%の無機物質と数%の有機物質から構成されている。近年、有機物質が同定され、結石形成の場である腎臓においても各種遺伝子が結石形成に伴って発現することが示されている。

1992年郡教授が尿路結石内に数%含まれる有機物質(マトリックス)成分としてオステオポンチンをクローニングした。結石形成時に発生する結石関連遺伝子が相次いで報告され、腎尿細管細胞で発現することが確認されている。その後、当研究グループでは結石形成についてのオステオポンチンの機能を中心に研究を進めてきた。

  1. 蓚酸濃度が増加するとマクロファージが遊走し、IL-1、TNFなどのサイトカインやICAM-1、その後OPNが発現し、結石の核が作られる分子機構を解明した。
  2. 腎尿細管細胞内のOPNの発現を抑制する目的で、OPNアンチセンスを遺伝子導入し、OPN蛋白発現を抑制することで、蓚酸Ca結晶と尿細管細胞との接着が抑制され、結石形成が抑制されることを示し、OPNが結石形成時に重要であることを示した。
  3. これまでは結石形成モデル動物としてラットが使用されてきたが、結石形成モデルマウスを確立した。
  4. OPNノックアウトマウスを作成し、OPNノックアウトマウスでは結晶はできるものの、結石にまで成長しないことを明らかにし、結石形成にはOPNが必須であることを明らかにした。
  5. OPNプロモーター領域をそれぞれdeletionしたベクターを遺伝子導入したトランスジェニックマウスを作成し、結石形成には-3.1Kbpの領域がOPN発現に重要であることを明らかにした。
  6. OPN全配列を決定し、結石患者に特異的な一塩基多型(SNPs)を転写部位で同定した。また、プロモーター領域でも結石患者に特異的なSNPsおよびその組み合わせ(haplotype)を同定した。
  7. 尿路結石と動脈硬化の石灰化の形成機序が似ていることに着目し、結石形成に脂質代謝異常が関与しているものと推察し、コレステロール負荷により、OPNの発現が増加し、結石が形成されることを明らかにした。
  8. 抗酸化作用を持つカテキンを含む緑茶は、腎尿細管細胞におけるapoptosisを抑制し、結石形成を抑制することを結石モデルラットと培養細胞実験系で明らかにした。
  9. 高脂血症治療であるエイコサペンタエン酸(EPA)が、尿中カルシウムの排泄を抑制し、結石形成を抑制することを明らかにした。
  10. DNAマイクロアレイ解析などにより、最近メタボリックシンドロームで注目されているアディポネクチンが結石形成時に減少していることを結石形成モデルラット、マウスを用いて明らかにした。
  11. 三次元培養を用いた尿細管細胞の結石形成モデルを確立し、骨粗鬆症治療薬であるbisphosphonate製剤が結石形成を抑制することを示した。

これらの成果を基礎に、尿路結石をコレステロール過剰摂取などによる生活習慣病(メタボリックシンドローム)としてとらえ、遺伝因子と環境因子の両面から研究を推し進めている。現在は以下の研究を行っている

  基礎研究

  1. 尿路結石形成におけるoxidative stressの関与
  2. 結石形成モデルマウスの確立とオステオポンチンの機能
  3. 蓚酸代謝および結石形成機序について
  4. 一塩基多型(SNPs)解析と臨床応用
  5. Metabolic syndromeと尿路結石、アディポサイトカインの機能

  臨床研究

  1. クエン酸製剤
  2. 排石促進剤の開発
  3. Bisphosphonate製剤の治療薬への応用

研究の最終目標は尿路結石症をなくす、あるいは治療によって罹患しないようにすることであるが、今後10年間で、結石発症リスクの診断方法の確立と結石予防薬の開発を臨床レベルで実用化することを目標としている。

伊藤恭典  

高脂肪食の代表たるフランス料理に親しんでいるフランス人の冠動脈疾患死亡率がヨーロッパ諸国の中では最低の水準である。これが有名な“フレンチパラドックス”である。このフレンチパラドックスを、フランス人のワイン好きと関連付けて考える人は早くからいたが1993年カリフォルニア大学のフランケルらがこの効能をワインでも特に赤ワインに多量に含まれる抗酸化物質フラボノイドの働きと限定しフレンチパラドックスの論理的な説明を試みた。そして実際に赤ワインの摂取によりLDLの酸化が抑制されることが証明された。

「尿路結石症は生活習慣病である」という観点から尿路結石症と酸化ストレス・抗酸化作用との関わりを検討している。

伊藤恭典

広瀬真仁  

岡田先生が立ち上げたglyoxylate(GOX)腹腔内投与による結石モデルマウスについて、もっと腎毒性の少ない蓚酸前駆物質を投与することで、結石モデルマウスを作ることはできないのであろうか?ということをテーマに、他の蓚酸前駆物質であるethylene glycol(EG)、glycolateの投与を行いました。結果としては、蓚酸排泄量は同じくらいであるにもかかわらず、GOXの投与でしか、腎結石の形成は認められませんでした。そこで、EG、glycolate、 GOX間での差を検証するために、Osteopontin(OPN)発現を定量RT-PCR、in situ hybridization、免疫染色で検討しました。また、vitroの報告でGOXはEG、glycolateに比べて尿細管細胞障害を起こしやすく、ミトコンドリアの障害を起こしやすいとされていることから、腎尿細管細胞障害を測定するための指標として腎組織中のsuperoxide dismutase(SOD)、malondialdehyde(MDA)を測定し、免疫染色を行いました。さらに電子顕微鏡で尿細管細胞を観察しました。結果として、OPNはGOX群でのみ強発現し、SODはGOX群でのみ著減し、MDAはGOX群でのみ著増しました。電子顕微鏡で尿細管細胞の微絨毛の減少をGOX投与群で認めました。このことからマウスでは高蓚酸尿のみが結石形成の促進因子ではなく、今回のSOD、MDAがGOX群でのみ大きく変化していた現象、電子顕微鏡所見から、酸化ストレスによる腎尿細管細胞の障害がGOXによる結石形成機序に関与していると考えられました。

今後は腎障害、酸化ストレス誘導物質投与下での、EG、glycolate投与実験、酸化ストレス防御物質投与下での実験を行い、結石形成機序について検討を重ねていく予定です。

尿細管細胞に対するウシュウ酸刺激からのオステオポンチンの発現メカニズムについて  李正道

オステオポンチン(OPN)は結石形成のマトリックスの一つとして良く知られている。OPNは結石形成を抑制する、促進するという二つの違う説がある。また、このオステオポンチンはNF-KB,AP-1などの転写因子の活性化によって発現するだろうと推測しているが、まだ明らかになっていない。今回、私達はこの転写メカニズムを解明する目的で実験を始めた。まず、NRK-52E(ラット近位尿細管細胞由来)にシュウ酸イオンをいろんな濃度で刺激すると3時間後からオステオポンチンの発現が強くなる。同じシュウ酸刺激でのP65サブユニットのリン酸かをウエスタンで確認したら、3時間から発現が上がり、6時間に強くなる。この結果を見ると、NF-KBの活性化がオステオポンチンの発現後に起こるように見える。つまり、オステオポンチンの発現がNF-KBの活性化を起こす原因になるのではないかと思われる。活性化されたNF-KBはポジチブ的にオステオポンチンの発現を促進するのではないかと考えられる。今後ともさらなる研究を通じて、解明を進める方針である。

宇佐美雅之  

21世紀の医学・医療には遺伝医学が重要なウェイトをもち、ヒトゲノムの全塩基配列も決定され、今後ゲノム解析はその遺伝子産物(ほとんどが未知)の相互作用を含めた機能解析、体系的多型解析へとその焦点が移行しています。尿路結石は遺伝要因に食生活などの生活習慣である環境要因が重なり、発症すると考えられているため、遺伝子の一塩基多型(SNP)は個体差を形成し、多因子疾患の原因となり得る。疾患に相関する特定遺伝子のSNPsが判別出来れば、個体レベルでの発症リスクを推測し、疾患の早期診断、予防に有用と考えられます。結石患者の全遺伝配列を解析し、診断方法を確立するため、全遺伝配列のKeyとなるSNPを結石患者と健常者で解析した後、in vitro、in vivoで特定のSNPsの意義を明らかにし、日本人における尿路結石の罹患率、再発率を個別的に算出する診断方法の確立や疾患遺伝子のハンティングツールの作成、治療薬の開発など将来につながる研究を行う予定です。

廣瀬泰彦  

平成17年7月から、結石グループにいれてもらい、勉強会に参加させてもらってます。グループの研究内容がはやくわかるようになりたいです。よろしくお願いします。
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