研究グループ
排尿研究グループ

前立腺肥大症や過活動膀胱は、中高年者の排尿障害を来しQOLを大きく低下させるため、高齢化社会を向かえる我が国において大きな問題となっている。しかしながらその発症機序についてはほとんどわかっていないのが現状である。私達は発症機序の解明とより効果的かつ効率的な治療をめざして以下の基礎的研究を行っている。

排尿研究グループ:研究テーマについて 目次
1.前立腺肥大症の薬物治療におけるオーダーメード医療の可能性
2. 前立腺肥大症の細胞増殖機構の解明
3.過活動膀胱のSCF-KITシグナル伝達系を介した膀胱興奮性発生機序の解明

1.  前立腺肥大症の薬物治療におけるオーダーメード医療の可能性

近年、患者の遺伝的特徴に合わせて最も効率的な薬物投与を行うという、ゲノム薬理学とオーダーメード医療の概念が支持されている。 一般的に、さまざまな疾患に対して薬物治療を行う上で、ひとつの薬剤が同じ疾患を有する患者すべてに効果的であるというわけではない。つまり薬剤の効果は、その患者自身が有する遺伝的背景に基づいて決まると考えられる。このことから、これまで行われてきた、個人差を無視した、集団に対する統計学的情報を元にした薬物治療ではなくて、今後は患者一人一人を薬剤に対するresponderとnon-responderとに識別し、至適個別化することによる効率的な薬物選択と投与計画が期待されている(図1)。 

私達は、α1aおよびα1d受容体の発現量や遺伝的特徴により、選択的α遮断薬の薬剤効果が異なる可能性を想定して研究を進めている。前立腺肥大症に対するα1遮断薬の効果は、患者の遺伝的特徴により左右される可能性を見いだし、将来前立腺肥大症に対してもゲノム薬理学に基づいたオーダーメード医療が期待されると考えている。

[図1] [図2]
図1
前立腺肥大症組織におけるPCNA染色

2.  前立腺肥大症の細胞増殖機構の解明

前立腺の細胞増殖メカニズムについてほとんど明らかになっていないのが現状である。私達は実験動物を用いて、これまで報告されている増殖因子や成長因子にターゲットを絞るのではなく、別の角度により前立腺肥大症の細胞増殖機構を解明したいと考えている。
その中で私達が注目しているのは、α1dアドレナリン受容体、イオンチャネル関連遺伝子、上皮―間質間の相互作用のプログラムに必須の接着因子や転写因子である。これらの遺伝子の作用を想定しつつ、前立腺肥大症の細胞増殖機構に関わる遺伝子の同定とその相互作用を明らかにすることにより増殖メカニズムを解明し、新しい創薬の可能性と将来的な前立腺肥大症の遺伝子治療を目標とした基礎的研究を行っている。

3.  過活動膀胱のSCF-KITシグナル伝達系を介した膀胱興奮性発生機序の解明

過活動膀胱(OAB)の多くは原因が特定できない特発性OABであり、さまざまな病因が複雑に関与していると考えられている。特発性OABのメカニズムを構成する因子としては神経原性因子と筋原性因子が考えられている。正常ヒト排尿筋標本からはほぼ一定の振幅、頻度で張力の変化がみられるがOAB患者の平滑筋標本は、筋原性自動運動が亢進し連合した大きな収縮が観察される。

Kit陽性間質細胞(Interstitial Cells of Cajal: ICC)は消化管の自発興奮の発生、伝達および神経筋伝達に関与していることが知られている。最近同様の形態学的特徴を持つ細胞の存在が膀胱にも確認されているが、膀胱の平滑筋層に存在する間質細胞は、ペースメーカー細胞として働いている可能性は低く、神経筋伝達の介在細胞として働いている可能性が考えられる。膀胱平滑筋の自発収縮は正常膀胱では膀胱の形状を保ち速やかな排尿収縮を起こすのに役立っている。これに対してOABでは膀胱平滑筋細胞間の電気的連絡の亢進により自発興奮がより広範囲に伝播し、膀胱内圧が上昇して尿失禁につながる。その背景に間質細胞の機能異常が存在する可能性がある。最近、膀胱粘膜下層の間質細胞のOAB発生機序への関与も推定されている。

私達はOABモデル動物を用いて、膀胱興奮性の発生機序へのKit陽性間質細胞の関与やc-Kitチロシンキナーゼ阻害薬のOAB治療薬としての可能性について研究している。

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