(H15.11.19)

腎・泌尿器科教室「あさひView」にて紹介される

 平成15年11月1に日発行の「あさひView」(旭化成ファーマ株式会社発行)にて、当教室が紹介されましたのでご紹介します。

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●大学病院研究室めぐり
名古屋市立大学大学院医学研究科
腎・泌尿器科学分野

郡 健二郎教授
林 祐太郎助教授
佐々木昌一講師
戸澤啓一講師

高い志と自由な発想力で、
泌尿器診療の未来を担う教室をめざす

医師としての真摯な姿勢を忘れず、
10年にわたり活動を展開してきた郡教授の泌尿器科学教室。
より良い医療と魅力ある医師の育成を追求し、若手医師は2年連続で
優秀な論文に与えられる坂口賞と総会賞のダブル受賞を果たした。
病態メカニズムの解明、そこからさらに発展して治療法と予防の確立という夢に向かって、
泌尿器科医療をリードすべく教室一体となって取り組んでいる。


名古屋市立大学大学院医学研究科
腎・泌尿器科学分野
■外来患者数 約2,400名/年
■ベッド数 成人42床、小児5床
■関連病院
 厚生連 安城更生病院
 厚生連 加茂病院
 厚生連 愛北病院
 名古屋市立東市民病院
 名古屋市立城西病院
 名古屋市立城北病院
 豊川市民病院
 国立豊橋病院
 国家公務員共済名城病院
 大同病院 その他


遺伝子を調べるため、腎細胞から取り出したエキスを試験管に分割する丸山先生。小児泌尿器を専門とする

地域に根づいた患者中心の医療と
研究面での独創性を追求

 名古屋市の中心部にほど近い瑞穂区。博物館や教育施設が立ち並ぶ地区に名古屋市立大学病院はある。昭和6年に市民病院として始まり、以来70年以上にわたり、地域に根づいた大学病院として歩んできた。
 来年1月に開設される新病棟は臓器ごとのフロアが設けられ、内科、外科の垣根を越えた治療体制が敷かれる。患者は一つのフロアで診療を受けることができ、医師同士の連携もとりやすい。患者中心の医療をさらに徹底できる体制が整うことになる。
 昭和28年にスタートした泌尿器科学教室は、郡健二郎教授で3代目。教室の臨床実績には目を見張るものがある。最近、病院が集計したデータによると、手術件数、入院患者数、在院日数などの診療実績と、臨床治験やリスクマネジメントなど大学病院に特化した事項の総合点で、病院内トップの診療科であった。
 同教室には、多彩な能力をもった若い医師が多く、研究面でも独創性を追求し、活気に満ちている。中でも特徴的な研究は、林祐太郎助教授が中心となって進める小児の先天異常への取り組みである。小児の治療実績数は、他の大学病院に比べ群を抜いている。その豊富な臨床データを利用しての尿道下裂の手術法や、性の分化を遺伝子レベルで調べた研究は、国際的にも評価が高い。
 また、外部の研究機関や組織との交流も活発である。佐々木昌一講師は2年半、厚生労働省において、保険医療や医療制度の改革に取り組むなど、行政にも携わった経験をもつ。現在、佐々木先生は、NASAと「宇宙でも子どもはできるのか」という夢のある共同研究を行っている。

腹腔鏡手術による前立腺全摘手術。中央が戸澤先生、安井先生(右)、小林先生(左)
先天異常による陰核肥大の外陰形成術。右が林先生、小島先生(左)、早瀬先生(中央)


固定観念にとらわれない
発想力がもたらした歴史的発見


 郡教授自身は、尿路結石症を研究テーマとして結石形成のメカニズムを解明した。尿路結石症は中高年男性の10人に1人の割合で発症し、再発率も5年で4割と非常に高い。
 従来、尿路結石は腎盂、尿管などの尿路で結石ができると考えられてきたが、郡教授はかねてから、尿が流れている尿路で結石ができるという説に疑問をもっていた。研究に取り組んだ結果、郡教授は、尿路結石にわずかに含まれる有機物質の主成分がオステオポンチンと呼ばれる糖タンパクであることを見つけ、尿路結石の原因の一つが腎臓の細胞内でのオステオポンチンの過剰生産であることを発見した。
 さらに、オステオポンチンは動脈硬化や骨粗鬆症、歯石などの原因ともなる有機物質であり、血管や骨・歯で起きている現象と同じことが、腎臓でも起きることを突きとめた。泌尿器科学のみならず、医療全体の発展に寄与する可能性が高い発見である。
 これらの研究に対し、郡教授は、国内外の学会からいくつもの受賞をしている。最近では、ノーベル化学賞を受賞した野依良治博士など、地元の高名な研究者が受けている中日文化賞を授与された。
「僕は子どもの頃から人と違うことをやりたがるところがあり、両親を心配させました」と笑う郡教授。歯石に着眼し、歯垢のとれる歯磨きに関心を抱いたりと、固定観念にとらわれない自由な発想が成功をもたらしている。
「無機物質の存在は18世紀の終わりに発見され、19世紀のはじめに結石を溶かす治療法が発見されている。だから、20世紀末に有機物質のオステオポンチンを発見した僕としては、この21世紀に新しい治療法を見い出したいと思っている」。結石メカニズムの解明は郡教授に言わせれば研究途中の成果。最終的な目標は尿路結石症治療法の開発だ。

MESSAGE FROM PROFESSOR

郡 健二郎 教授

昭和24年 大阪府生まれ
昭和48年 大阪大学医学部卒業
昭和49年 東大阪市立中央病院医員
昭和52年 近畿大学医学部助手
昭和58年 同大学講師
昭和60年 日本学術振興会特定国派遣研究員として英国南マンチェスター大学留学
平成5年 名古屋市立大学医学部教授
平成13年 同大学病院長(2ヵ年)
現在、日本泌尿器科学会評議員、日本尿路結石症学会理事長、日本腎臓学会理事、文部科学省学術審議会専門委員等

泌尿器科は外科系の中では規模が小さい。でもそれだけ若手の医師でも活躍できる良さがあるのが魅力でした。大学生の頃は学生紛争で、学校で勉強できる環境になく、自分たちでカリキュラムを作って、自主研修をしようという動きがありました。そのときの魅力ある先輩たちに導かれて泌尿器科を選んだというのもあるかもしれません。めざすのは「医者らしからぬ医者」。幅広い視野をもって研究にあたっていきたいと思っています。

郡教授の手による2つのモットーの扁額

「和以貴為」「凌雲之志」を
モットーに

 大学病院の講堂には、郡教授が病院長時代に自ら揮毫した”和以貴為“の扁額が掲げられている。職場の基本は「職員の和」にあり、この「和」は患者さんとの関係にも通じると考えるからだ。教室に掲げるもう一つのモットーは”凌雲之志“だ。
「とかく医師は医師になったことで満足し、その後の努力を怠りがちです。常に謙虚であり、努力すべきとの気持ちで書きました」と郡教授。大学病院として、能力と志を兼ね備えた医師の育成にも力を尽くしたいと熱っぽく語る。
 名古屋市立大学は2年前から、授業評価制度を導入しており、郡教授の、ユーモアをまじえながら、ゆっくりとわかりやすい語り口で興味をかきたてる授業は、学生にいつも好評だ。かたや郡教授の指導はきめ細かく厳しいことでも知られる。しかし、それは一方的な指導ではない。学生や教室のメンバーと同じ目線に立ち、積極的に意見を交わす。教授室には入れ替わり立ち替わりメンバーが訪れ、研究について討論を交わしたり、相談をしたりとにぎやかだ。

週2回のケースカンファレンス。症例発表をおこなっているのは、泌尿器悪性腫瘍の腹腔鏡手術を数多く担当してきた永田先生

「僕の教室は一つのチームです。じつは教授と呼ばれることは今でも慣れないんですよ。僕もメンバーの一人。一体になって研究を推し進めたいと思っているんです」。
 郡教授の熱意は、日本泌尿器科学会から優秀論文に授与される坂口賞と総会賞を、若手医師が2年連続ダブル受賞するというかたちで一つの実を結んだ。
 郡教授が泌尿器科学教授に就任して10年。教授の薫陶を受けた若いメンバーは、これからの10年に向け、遺伝子学、再生医学など新たなテーマで、根本的な疾病の治療法確立をめざし、大きく歩み出している。