(H18.4.27)
第94回日本泌尿器科学会総会賞を受賞して

  名古屋市立大学大学院医学研究科 病態外科学講座 腎・泌尿器科分野
  (現 海南病院泌尿器科医長)  
                           岡田淳志

 先日福岡で開催されました、第94回日本泌尿器科学会総会(2006年4月12日〜15日)におきまして、私達の演題「腎結石の消失現象の発見と機序の解明」が総会賞を受賞を致しましたので、報告致します。

 本研究の背景と内容を簡単に説明致します。尿路結石症は1990年代頃まで、腎臓にできる「石」という考え方に基づき、尿中のカルシウムを始めとした尿生化学の研究が主流でした。しかし、当教室教授 郡健二郎先生のグループが、結石の中に含まれる有機物質(結石マトリックス)に着目し、オステオポンチンがその大部分を占めることを発表されて以降、結石に他の疾患と同様に「遺伝子」の関与という概念が確立致しました。それ以降多くの結石関連遺伝子が同定され、個々の遺伝子産物が結石形成に与える影響が検討されて参りました。しかしヒトにおける尿路結石の研究は、体外衝撃波結石破砕装置(ESWL)の登場により、結石を形成した腎組織を採取できないという問題に直面しました。このため近年の尿路結石の研究は、培養細胞・実験動物を中心として進められています。
 尿路結石に関わる動物研究は、ラットにシュウ酸前駆物質を投与することで、腎尿細管腔内に組織レベルのシュウ酸カルシウム結石が生じるモデル(ラット結石形成モデル)を中心として行われています。このモデルでも、結石形成に伴い、腎尿細管発現したオステオポンチンが結石形成に重要な役割を果たしている可能性が報告されています。
 近年マウスを使った研究で、特定遺伝子を組換えたり、消失させることで、その遺伝子が特定疾患に与える作用を解明する研究が行われています。私たちは、この考え方を結石研究に導入するため、マウスで結石を作らせる方法を研究し、初めてマウス結石形成モデルを報告しました。さらに、このモデルにおいて、一度形成された微小結石が時間の経過とともに消失する現象(結石消失現象)を捉え、報告して参りました。
 今回の総会発表では、この結石消失現象に、マクロファージをはじめとした腎間質細胞が、貪食作用を通じて結石形成に関わっている可能性を報告致しました。
 本研究で重要なポイントは、ラットとマウスという同じ齧歯類であっても、同じシュウ酸前駆物質に対する反応としての尿路結石形成が大きく異なるという点です。とくに「結石消失」という全く新しい現象を認めるたことにより、こうした「種の差」というものを研究することにより、結石の「予防」だけでなく「治療」へもつながるヒントを得られる可能性が示唆されます。またこの結石消失現象が人でも確認されれば、結石のできやすい人とできにくい人の違いを検出する事も可能となるかもしれません。さらに検討を重ねて参りたいと思います。今後も諸先生方のご指導のほど、よろしくお願い申し上げます。

 最後になりましたが、郡健二郎先生・大阪大学大学院医学系研究科 野村慎太郎助教授を始め、ご指導・ご協力を頂きました結石研究グループの先生方、実験助手の皆様にこの場をお借りして感謝申し上げます。