このページは一般の方むけに、食道癌へどのように対処したらよいかを具体的に解説したものです(2003.8.29更新)
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この癌は日本人など東洋人に多く、アメリカ人などには少ないです。おそらく(アルコール、熱いものや刺激物など)食事が関係していると思われます。たばこも関係があると言われています。
たいていは扁平上皮癌というタイプで、食道の粘膜から発生するものです。
ほとんどが50歳以上の高齢者に発生し、男性に4−5倍多く見られます。
なかなか治りにくい癌として知られており、全体での5年生存率は15-30%です。
しかし、早期の癌は治癒率はよく、70-80%の5年生存率があります。
手術により腫瘍が切除可能で、患者さんが手術に耐えれる場合は手術がよいでしょう
しかし、手術は大きく、最低でも7−8時間かかり、術後もなかなか大変です
入院は最低でも約1-2ヶ月必要です
したがって確実に腫瘍が取りきれる場合、また食事が全くできなくなっていて、そのためのバイパス手術に限るべきでしょう
食道癌の患者さんは、食事がしにくい人が多く、栄養が不良となっていることが多いので、手術前に高カロリーの点滴をして栄養を改善する必要がある場合があります
放射線療法は食道癌には比較的効果があり、切除不能の癌あるいは食事の通過をよくするため、あるいは痛みを取るためなどにつかわれます
化学療法は最近新しい薬も多く出現し、これからも進歩が期待できます
最近の米国の研究では化学療法と放射線療法で5年生存率が26%であったという報告があります(Jama 281:1623,1999)
しかし現在はまだ化学療法だけでは腫瘍の完全な治癒は望めません
手術による切除が不可能で、しかし食事ができない、という場合は食道にチューブ(ステント)をいれて
食事が通るようにすることがあります
食道をとるには普通は肋骨の間から胸を開き、切除します
右側の胸を開けることがほとんどです
食道癌が周りにあまりひろがっていなければ、胸をあけずに(乱暴に聞こえますが)食道をひっこぬくという方法も使われます―あまり太い血管がないので可能です
いずれにしろ食道がなくなると、なにかで食べ物の通路をつくる必要があります
そのためには
以上の手術方法は患者さんの状況、手術をする人のなれ、好みにより異なりますので、患者さんが自分で選択することはできないことが多いです
食道をとったあと、リンパ節を切除します。このやりかたも施設により異なりますが、最も大きい手術の場合は、頚部、胸部、腹部の3つの領域のリンパ節をとります。
したがって患者さんには胸、お腹、首、と3カ所に傷が入ることになります
胸を開けたけれども、腫瘍が切除できず、しかし食事だけはできるように胃を食道の代わりにしてバイパスを造るような手術も行われることがあります。
いずれにしろ術直後は人工呼吸器が使われることが大多数です。また自分で呼吸できるようになっても、痰をとるための細い管を気管に入れたり、気管切開が必要になる患者さんもあります。このようなことを術前によく説明しておいてもらうことが大事です。
術後数日で食道の代わりのものと食道の残りや、咽頭をつないだ場所がほころびることがあり、つばや食事がもれるのでこれが最もやっかいな合併症です。たいていは管をいれたり、傷をすこし開いたりして対処可能ですが、重症となることもあります。
食事ができるようになるまでは2週間ほどかかります。
食事は一度にたくさん食べれないので、自分の食事の仕方を修得する必要があります
退院は術後の治療がなければ術後3週間ー1ヶ月ぐらいから可能となります
術後の発熱が続き、本人の状態もよくない場合は、術後の肺炎または縫い目のほころびによる感染が疑われ、多くは集中治療室での管理が必要です。人工呼吸、気管切開、気管支鏡による痰の吸引がされることが多いです。敗血症や、ARDS(呼吸状態が悪いこと)の状態であると、生命の危険があり、強心剤を始めとする多くの薬が投与されることが多いです。このような状態ですと、家族も大変心配ですが、本人の状況について毎日詳しく説明を求めて、状況をよく把握するべきでしょう。このような状態にならないため、またなっても対処が迅速に行われるということで、ある程度症例の多い病院を選ぶべき疾患だといえます。
1.化学療法あるいは放射線療法をするか、
2.癌に対する治療はせず、痛みなど症状をとる治療のみ行うかです。
一般的にいって、手術ができないような食道癌のばあいは、化学療法によって腫瘍が治癒したり、大きく寿命が延びることはまれだと考えられます。ただし、食事がまったく通らないばあいは、何らかの処置(バイパス手術
やステントチューブの挿入等)をする方が、余命を楽にすごせますし、骨の痛みなどは放射線療法で一時的に症状が軽くなることがあり、個々の場合に応じて判断が必要です。
手術も含めて治療は必ず何らかのマイナス面をもっています。手術では痛みがありますし、化学療法では、(一時的ですが)吐気、おう吐、脱毛、白血球減少などがあり、いずれも生命の危険性も数%あります。根治の可能性がない場合、その治療でもし半年寿命が延びるとしても、そのため1ヶ月入院し、ある程度の痛み、苦しみを伴う治療をうける価値があるかどうか、自らの価値観にてらして考えるべきでしょう。
手術が適していない食道癌の場合は、多くは診断後の余命は半年から1年ぐらいで、場合により2年以上にわたることもあります。一般的には現在症状がなくても半年ぐらいの間には何らかの症状の出現があり、1年後には状態が悪化する可能性が高いので、良好な社会生活ができるのは普通は半年から一年ぐらいでしょう。
なおらないだろう、と判断されれば、気持ちを切り替えて、残された社会生活を有意義に過ごすことに方向転換をすることが、この腫瘍に対するよりよい対処方法だと思います。
なぜ自分がこのような目に、と反問することもあるでしょう。家族に、自分につらくあたってしまうこともあるでしょう。しかしこの問いに対する答えはないのです。自分と家族がこれからいっしょに過ごせる時間が有意義なものになるように努力しましょう。自分が苦しいのだからと、家族に苦しみを転嫁しても楽になるものではありません。今の自分があるのは家族のおかげです。これまで自分をささえてくれた家族に対する感謝の気持ちが大切です。
痛み等が出現すると冷静ではいられませんが、モルヒネなどの麻薬を用い、痛みのない状態で最後を迎えることができるように医学も進歩してきています。またそのための専門病院もありますので手術が適さないと判断された時点で将来のことを考えて判断してください。
漢方や民間療法、温熱療法、遺伝子療法、免疫療法では現在のところ癌を治癒させることは難しいです。新しい治療法の中では血管新生抑制療法が癌をコントロールする(治癒はしないが―これを tumor dormancyとよんでいます)可能性があり、私は個人的には期待しています。免疫療法の一部にはこのような血管新生抑制を介しての効果を持っているものがあると考えられます。これら新しい治療法が確立するにはまだ時間が必要です。
病名を告げないのは、患者さん本人が病名を知りたくないという希望をもっているときなどに限った方がよいでしょう。家族の方の判断で、この人は癌だとわかると落ち込むに違いないからというので病名に関してうそを言うのは本人の希望を無視することにもなりますし、その後の家族関係を悪化させる原因にもなりえます。診断がつく前に、癌だったら知らせて欲しいかどうか、それとなく聞いておくのもよいでしょう。自分で判断のできる人であれば、自分の病気を知りたいと思うのが普通です。自分の場合を考えるとそうでしょう。自分は知りたいけど、家族の癌は本人に知らせたくないという人が多いのです。基本的には本人の意思を尊重することです。
患者さんの希望を無視して病名を告げないことに明らかな利益があるのは限られていますが、次のような場合が考えられます。
逆に、手術等の治療をしてもまず効果が期待できないほど進んでいる場合。この場合は多くは症状がありますし、残りの寿命があまり長くないと考えられるので、ショックを与えないことに意義があるとも考えられます。ただし、どうしてこんな症状がでるのだ、と悩んで疑心暗鬼になっていた人が、告知されてすっきりするということも経験されます。